ファミコンの音を誰が作ったか聞いてわかる話

『ハドソン伝説・ファミコン編』ではスタッフロールがなかったり、それともスタッフロールにいい加減な名前が書かれているゲームも、インタビューしてほぼ掘り起こしたのだけど、それでもいくつかスタッフがわからない作品や曖昧な作品が残ってしまった。

そしてたいてい曖昧なのがアートとサウンドだ。

アートは当時のドット屋さんがだいたい複数の作品に関わっていたのもあって曖昧で、サウンドは作曲者はたいていわかるのだけど、演奏担当とも言っていい、それを実際のゲームの音にしたプログラマがわからない。
プログラム技術が進歩して、音楽プログラムがパッケージ化される86年の後半ぐらいから、データを指定したとおりに設定するだけで音が鳴るサウンドドライバと呼ばれる形になっていく。
そうなるとデータをもらうだけで、音が鳴るようになるからやっぱりよく覚えていない。
またサウンドをプログラムした側も複数作品に関わっていたせいで、忘れていたりする。
で、どうしても確認が取れずに「不明」がいくつか残ってしまうことになった。

そして話は『新人類』になる。

これも検索すると、どっから出てきたと聞きたくなるような真偽不明の話が出てくるゲームだけど、まあともかくハドソンが制作した作品だ。
どうして『新人類』なのかとか、開発がどうして始まったのかのあたりは三上君の証言でわかった。

■三上君
私は参加していないですが、私たちの同期と、その面倒を見ていた川口(弟)さんだったかな? のメンバーに、(中本さんの?)「長州力を使ったソフトを作ることになった。MSXの魔城伝説が面白いからそんな感じがいんじゃない?」の指示で作った。新人プログラマー中心で作り始めたから「新人類」と。

MSXの『魔城伝説』がわからない人が多いと思うので、参考の画面を出しておく。

プレイした人なら「ああ、なるほど! 新人類は魔城伝説だったのね!」と間違いなく納得できる。

そして『新人類』もスタッフロールがないゲームなのだけど、三上君・奥野さん・他何人かの協力でどのようにできて、誰が最終的にプログラムを書いたのかはわかった。
というか、実は最初にやってたプログラマは誰かわからず、入稿後にわかったのだけど…ともかく完成させたのは中本さんだった。そして手伝ったのが奥野さん。
ところが、さっぱりわからなかったのがアートとサウンド。奥野さんも三上君も覚えてない。
困って、星君に「聞いたことない?」と質問をしたら、その時、途方もないコトを喋り出したのである。

■星君
いま動画で曲聞いたけど、曲は井上大介さんぽいですね。そして打ち込みは滝本さんの癖が…
■僕
曲は国本さんと井上さんが別々なのよ。滝本さんの癖がある!? わかる!?w
■星君
癖というか、サウンドで群を抜いて保守的な打ち込みをするので、直観ですね。
イワブチさんは繊細、高橋はアバウト。笹川さんにしては音楽的な調整がされていない。
消去法でもあります。
保守的な中にYMO好きからくるテクニカルな所もあるんですけど、滋味なんですよねw
なんていうか、音色に一番凝るのが滝本さんかなw
時代的にも滝本さんぽいんだけどなーwww

このあとサウンドは(残念ながら)板垣さんだとわかったのだけど、星君は板垣さんがサウンドをやっていたことそれ自体を知らなかったので、消去法のところで間違ったわけだ。
しかも板垣さんは滝本さんと同じくサウンドが専門の人ではなく、そもそもはツールプログラマと言っていいので、星君の言う保守的な打ち込みというのは理解できるし、そうだろうなと思う。
つまり、星君はほぼ当てていたわけである。

いやはや、驚くようなコトがあるものだ。

この話は昭和コソコソ話に収録予定だが、ページが絶賛パンクしているので入らないかもしれなく、そしてBEEPさんのペーパーでも長さ的に厳しいということで、ブログ公開になったのであった。

こんな調査をしながら『ハドソン伝説・ファミコン編』は書かれていたのである。

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