シナリオの書き方

一度、このブログで「シナリオの教科書」というタイトルで、シド・フィールドの古典的とされる教科書について取り上げたのだけど、今回は同じ著者シド・フィールドの『素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2』を取り上げたい。
日本語のタイトルでは正直分かりにくいのだけど、原題は“Screen Writer’s Workbook”、訳すると脚本家になりたい人のための問題集、とでもいうところだろう。
前作を結構理論的な本とすると、今度の本は「ワークアウトブック」、すなわち徹底的な実践書として書かれているのが大きな違い。

とはいっても、前作も抽象的なシナリオ本と比較すると、圧倒的に具体性があるわけだけど、今回取り上げるワークブックと比較すると、それでも抽象的と思うぐらいだ。

この本は最初から最後まで一貫して、1本のシナリオを書きあげるプロセスを、シド・フィールドが実質的に作り出した3幕メソッドに従って、組み立てていく内容で、他の事は何も書いていない。
そして、これを読みながら演習問題を言われたとおりにするだけで(出来の良し悪しはともかくとして)シナリオが書けてしまうのは間違いない。

少し、飛ばし気味に、実際にシナリオを作るプロセス、つまりこの本の中身を解説すると、以下のとおり。

  1. 書きたい話のあらすじを作る。あらすじは、ともかく最初から最後までなければならない。
  2. あらすじを分割して(3幕の)構造を作る。
  3. 幕の終わりに次に進むためのポイントを設定する。
  4. それぞれの幕について事細かに、書いていく。

具体的なやり方のもう少し詳しい説明は、前回のポスト、「シナリオの教科書」で、一度書いているので、読んでもらうとありがたいのだけど、前の本とは、大きな違いが一つある。

今度の本はまさに実際に書くための本なので、例えば第一幕の最初の10ページで「これだけのことを説明しろ」とか、次の10ページで何をやれ、といった極めて具体的な指示が徹底して書かれている

これをさらっと読んでしまわず、例えばゲームに応用して考えると「チュートリアルは最長でも10分であるべきだ」とか「NPCはこう解説していこう」なんて、ものすごく示唆的な事をたくさん読み取れる。
加えて書くと、登場人物をどのようにして作り、どのようにして煮詰めていくのか、どんなトラウマを作れば登場人物が浮き立つのかとか、シナリオを書くために現場にリサーチするとき、どういう言い方をすれば取材できるか、さらには映像の流れ(場面転換)についても気を配れ、フラッシュバックはすぐ使いたくなるがといった、細かな、だけど実践的な注意が大量に書かれている。

良くも悪くも徹底的な実践の本で、しかもシンプルで非常に論理的なメソッドなので、シド・フィールドは、映画のシナリオを書くためと書いているけれど、ゲームのシナリオ・映画のシナリオ・小説、およそストーリーが関係するものなら、なんにでも応用可能な、非常に幅の広いメソッドだ。

だからシナリオの実践的な勉強がしたいというなら、このワークブックが間違いなく、基礎を全て教えてくれるナンバーワンの一冊と断言できるほど素晴らしい本だと僕は思っているのだった。

素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2
素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2

僕にとっては、神様の一冊なのは間違いない。

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1件のコメント

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; rv:11.0) Gecko/20100101 Firefox/11.0
    この本は良著ですね
    個人的には、岩崎さんのゲームレビューやエッセイなどすべて網羅した「岩崎啓眞全集」が読みたいです
    思想がいかに成長し変化したかわかるよう、書かれた順に読めるという

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