『ビックリマン大事界』のCDROMに34年前のソースが残っていた

夏コミにうかったら新刊を『ハドソン伝説4』+『イース通史4プレビュー版』にしようと決めた。

なお『イース通史4プレビュー』はペラい会場限定本のつもりです。

理由は簡単に書けば『ハドソン伝説4』でCDROMが登場するので、自分的にはもちろん書きたいこと。
そして『イース通史4』はどうしても何人かインタビューしたい人間がいるのだけど、その人たちとの飲み会を夏前には設定出来そうにない事が大きい。
ただまあプレビューみたいな形で骨子は書きたいなあと思って、プレビュー版って形で出してみようと思ったわけだ。

はっきり書くなら、このプレビュー版はインタビューしていくためのモトネタにもなったりするのだけどw

この2冊の新刊の準備をちょっと始めようということで、CD-ROMが登場することもあり『ビックリマン大事界』の中身のチェックをしようと調べ始めた。

どうして『ビックリマン』? というのには理由がある。
88年12月にリリースされたCD-ROMのゲーム『No・Ri・Ko』・『ファイティングストリート』・『ビックリマン大事界』の3本は全て外注が作っている。

本当は『天外魔境1』があって4本の予定だったが出なかった。
そしてアクションRPGだった『天外魔境1』を、この当時の鉄板RPG、対面バトル・ランダムエンカウンター形式にするために桝田さんが投入されることになるのだけど、それはまた別の物語だ。

で、『No・Ri・Ko』・『ファイティングストリート』はアルファシステムが北海道で作っているのを目の前で見ていたし、ソースも読んでいたから、全然話は難しくない。だいたいは覚えている(だいたいspecial thanksに自分の名前が入っているソフトだw)。

問題は『ビックリマン大事界』だった。
と言っても、作った会社がわからないとか、スタッフがわからないではない。
まずサウンドとグラフィック周りはほぼ全部ハドソンでやっていて、当時、ビックリマンシールをスキャニングして、アーティスト総出で直していたのをよく覚えている。
そしてプログラムはというと、ミューテック
これまた実は知っている会社。
タイトーで『ダライアス』を作った長谷川ケンさんは、そのあとタイトーを辞めて、僕はケンさんと仕事をしていたという話を書いたことがあるけれど、そのケンさんが友達と作った会社がミューテック。
つまりミューテックがハドソンと契約して最初にやった仕事が『ビックリマン大事界』なのだ。

ところが残念ながらケンさんとは連絡は取れないし、仮に連絡を取れても開発を覚えているかどうかはわからない。だからその手掛かりが何か残っているかもしれないと、直接CDROMの中身をダンプして眺めていたところ、なんとソースファイルとmakeファイルの一部がディスクに書き込まれて残っていたのだ!

CDROMに残っていたPSGデータ生成用のmakefile

これが当時使われていたmakefile。これはPSGの音源のバイナリ “psgdata.bin”を作るための設定部分。
“.s.o:”はアセンブラから中間オブジェクトファイルを生成するためのコマンド部分。
でOBJSがファイル名の並び。
lk が飛田さんが作ったリンカ。 .bx は当時のハドソンのPCエンジン用のバイナリファイル。で、lkでbxファイルを作ってから 変換ツールでバイナリにして、最後にhdwriteという、当時使われていたCDエミュレーション用のHDDに書き込んでいる。

で、もう1つがケンさんが書いたPCエンジン用のヘッダのソースの頭の部分。これは2つの部分を紹介したい。

システム用のヘッダファイル

1988年6月4日に最初に書かれたのだろうとわかる。確かケンさんとの北海道での再会が88年の4月か5月だったと覚えているので、そのあと東京で開発機が来た時に書いたコードなのだろう。
c6270、通称7upがビデオチップだという話は今まで何度か書いてきたけれど、これがこういう形で当時のソースとして見られるとは、想像もしていなかった。

さらにもうちょっとソースは残っている。それが以下。

CPU周りと鉄観音のヘッダー部

これはちょっと面白いことがわかる。
c6280がCPU。これはDr.Pepperと呼ばれていたけれど、多分サンプルソース(『The功夫』)には書かれていなかったので、名前が書かれていないのだろう。
そして”Tekkannon”は本当はサウンドチップだったので「音」が入っているってことで決まった名前、鉄観音。
なんとビデオチップが1チップに納まらず、カラーエンコーダーになってしまった代物だ。

多分、hdwriteがコマンドを実行したとき、メモリの中に残っていたゴミが一緒に書き込まれたのだと思うが、全くこんなものが偶然書き込まれるなんて、ちょっと信じられない幸運だなあと思ったのだった。

というわけで、ここらへんの話まで含めて、コミケ100は『ハドソン伝説4』になる予定です!

なお、ここで書いたPCエンジンのハードの開発の話は『ハドソン伝説3』に含まれています。

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5件のコメント

  • イース通史2巻から気になってたんですけど
    当時のメモリがいかにお高かったかの話が無いと
    なんで約85000円のゲームマシンのメモリが少なすぎるか分かりづらいと思うのですが。
    8bitPCガチ勢とか開発者の皆さんには常識なんでしょうけど
    「95年あたりの98用メモリ8Mが3万が相場」から「スーファミの原価やべぇ」に最近気づいたペーペーなもんでして。

    • 確かハドソン伝説1では書いていた記憶がありますが…ちょっと自信はないなあ…

  • 20ページに思い切りありましたね、なんで覚えてないんだろうorz
    ハドソン伝説の話が83年頃でCDROM^2で揉めたのが88年(イース通史2巻7ページ)とあったので4,5年の差がありますけど
    X68000用メモリが1MB約4万が(雑に)時期的に丁度いいと考えると
    (前田さんのパーフェクトカタログシリーズに周辺機器が載ってるのに今気づきました)
    メモリ128KBがざっと5000円くらい、パソコンだと誤差に見えますけどゲーム機だと軽視できない金額ですね。

    • X68K用のメモリはDRAMでしてPCエンジン用のメモリはSRAMで、しかも当時としてはとんでもなく高速な55nsとかじゃないと動かないのです。
      だから1988年当時では5000円では済まなかったですね。91年になってようやく1万円のシステムカードでなんとかなるという世界だったのです。

  • 5年経ってるものの8KB1万円から安くなりすぎかなとは思ってたんですけど甘く見すぎてましたかorz

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