どうして天外Ⅱのバトルで敵のHPを表示したか?

天外Ⅱのバトルで「HPを表示しよう」と提案したのは僕だ。
採用したのは桝田さんだ。

なぜHPを表示しようと言ったのか?
いくつかの理由があって、HPを表示したかった

第一の理由

ゲームデザイン的な思想だった。
相手とバトルをしていて相手がどれぐらい弱っているか、全くわからず五里霧中で戦うなんてことはあり得ない。
そういう意味でリアリティがないと思っていた。

でも『凄ノ王伝説』の失敗とどんちゃんのプレイを見た経験の2つが組み合わさって誰でも思いつきそうなダメージを受けると攻撃力が下がるといった処理ではダメだとわかっていた。

『凄ノ王伝説』では、自分も相手もHPで攻撃力が下がるって仕様を入れた。
敵も味方も同じなので「これで敵が弱ってるのがわかる」とかやってたのだけど、若いゲームデザイナーの愚か極まりない判断で、ゲームデザイナーとしてバカだったとしか言えない。

HPが下がって攻撃力が落ちるのは、ユーザーにHPを100%に維持しろという、強い縛りを与えるだけで、ゲームにはほとんど何も面白さを追加しない。
はっきり書くなら計算を面倒にするだけだ。
HPが50%になったら攻撃力は75%だから、ここは2撃で死ななくなる…なんて計算は、もちろんどんちゃんには出来ないし、それを目の前で見た。
問題外のメカニクスだ。

ところで、1980年代後半~1990年代前半に流行したアイテムに重さがあって一定以上重くなると移動速度が落ちるとかもそのたぐいだ。
一定以上重くしないようにプレイヤーが行動するインセンティブが働くだけで、それがゲームに何かを与えているのかというと、メカニクスとしてプレイヤーを縛ることにしか役に立っていないのだから、ほぼ意味はない。
カバンの広さがあってそこに箱詰めパズルする方がそれよりはマシだけど、じゃあそれが「面白いんですか?」と言われたら実装コストとの兼ね合いを考えると微妙だと思う。
そういうところを抽象化してわかりやすく楽しくするのがゲームデザイナーの仕事であり、どうだとばかりに複雑にしたがったり、それともリアルと称して面倒くさいことをやらせるのは間違っていると個人的には思っている。
でも複雑で面倒なのを作りたくなるのはわかるんだけどね…

だったらHPを表示してしまえば、わかりやすいし、変なことをしないので計算が立ちやすく、ゲームとして楽しい。
そう考えたわけだ。

第二の理由

僕は当時のドラクエが隠し回復をしているのを知っていて、それが好きでなかった。
隠し回復は、簡単に書けば毎ターンオートで+50とか+100とかHPを増やすという仕様で、これを僕らは「隠し回復」と表現していた。
これだと、例えば毎ターン50の隠し回復をしたとして、ボスのHPは52だとする。
すると1ターンのダメージが50以下では絶対に殺せない。100ターンやろうが死なない。
ところがレベルが1上がって、1ターンで51ダメージ与えると、なんと2ターンで死ぬことになる(仕様によっては52ターン)。

  1. (HP)52-(ダメージ)51=1
  2. 1+(隠し回復)50=51
  3. (HP)51-(ダメージ)51=0

だから2ターンだ。

死ぬ判定をする前に50足す構造になっていると、ずっと1ずつHPが減るのに等しいので52ターンで死ぬことになる。

僕はボスのHPの計算が全然合わないので、それに気が付いたわけだけど、正直、理不尽すぎると思った。
要はインチキ臭くてイヤだったのだ。
それに『イースⅠ・Ⅱ』などのアクションRPGは敵のHPを表示してゲームが成り立っているし、ゲームブックの敵だってそうだ。
だからHPを隠さなくたってゲームは絶対に成り立つに決まっていると思っていた。
インチキしてないのがわかるからHPは表示した方がいいと思ったわけだ。

最後の理由

そうはいってもアクションRPGとターン制は違うだろ? と言いたくなるだろうけれど、実際にそれを証明したゲームがあった。
それがファルコムの『ドラゴンスレイヤー英雄伝説』。

モロにHPを表示して、もちろんゲームは成り立っている。

だからHPを見せてしまえばいい。
それにHPを表示すれば逆に敵の強さがわかってビックリさせられるし、その逆でHPが小さいのに異常に硬いとかそういう特徴を作ることだってできる。
さらに言えばフリーザみたいに「私のHPは53万です」と言わせることだってできる(やらなかったけど)。

ゲームとして情報がオープンなので戦略を立てやすく、演出に使える、インチキしてないのがわかると、いいことしかないよ。

こんな感じで桝田さんを説得してHPを表示したのである。

LinkedIn にシェア
Pocket

3件のコメント

  • PCエンジン版のドラゴンスレイヤー英雄伝説1・2の通史は予定にはないでしょうか?
    さらに、サターン版白き魔女はなぜあのようになってしまったのかも気になります・・・・

  • ファミコン桃太郎伝説も凄ノ王同様 HP増減でステータスに補正かかる仕様だったけど 両方とも 当時全然気付きませんでしたね小学生だし(尚且つ説明書読まないし)
    RTAやTAS動画の解説で知りました

    HP少なくなると回復はどのゲームでも基本 差が目に見えて分かるくらいになるHPだと回復優先しちゃうから尚更気付かないっていう 乱数とかもあるんで

  • 第一理由の「リアルと称して面倒くさいことをやらせる」を読んで、一昔前の洋ゲーに多くみられた「暗闇の再現」を思い出しました。

    リアルに考えれば光が届かない屋内や洞窟は暗くて見えないでしょうけど、それを再現して一定時間しか効果のないトーチやライトで照らさせるのは、進路は分かりづらいわ 敵も見づらくて倒す快感よりもストレスが増すわで、結局そのゲームをプレイする時だけテレビの映像調整で黒レベル下げるので、グラフィックの色彩も台無しになってました。

    これって青い瞳の人は眩しさに弱く暗部に強いことが関係しているんですかねぇ?
    最近のゲームで初起動時にマークがギリギリ見えるようにソフト側の明るさレベルを調整させるのは、受像機環境の不一致への対処かと思っていましたが、もしかして瞳の色等による視覚特性の差異への対応でもあったりするんでしょうか。

コメントは受け付けていません。