大魔界村の思い出

実はブログに一度似た内容を書いたのだけど、今回PCエンジンミニが発売されたのに合わせて、再度大幅に書き直したバージョン。
なお、合わせて昔の記事は消そうかと思ったけれど、かなり内容が変わったので、そのまま置いておくことにした。

スーパーグラフィックスの『大魔界村』は、発売はNECアベニューだったが、移植はハドソン札幌で行われていた。

ちょっと書いておくと、この当時、他の会社から発売されたがハドソンで制作されていたり、それとも管理されていた作品は実はたくさんあり、記憶しているのをぱっと並べるだけでも『ブレイクイン』(ナグザット)、『エイリアンクラッシュ』(ナグザット)、『大魔界村』(NECアベニュー)、『魔境伝説』(ビクター音産)、『鏡の国のレジェンド』(ビクター音産)などなど出てきてしまう。他にもアートやってた作品(『ラストハルマゲドン』など)もある。

実際に移植したのはコードがアルファシステムのメンバーで、アートと音がハドソンって、この当時のハドソンの移植にわりとあったパターンで作られている。

プログラマは二人。
一応Y君とS君と呼んでおく。名前を出していいかは判断しかねるので。
ちなみにアートは、あにやんと呼ばれていたヤツが頭でやっているのだけど、彼とは『凄ノ王伝説』で仕事してたりする。あと松田泰一君もたしかやってたはず。
記憶ではY君は『NO・RI・KO』を佐々木社長とやっていた(『ファイティングストリート』もやってたかは覚えてない)。よしのずい君と二人でテスト用の超ひどいイラストを描きまくって、デバッグ途中でハドソンの全メンバーの腹筋を破壊していた。
そのあと『イースⅠ・Ⅱ』を僕が作ってる時、横でずっと『大魔界村』の移植をしてて、さらに『天外Ⅱ』でも一緒に仕事した。コードの最初から『天外Ⅱ』にいて、最後までいた。

S君は『大魔界村』のあと、アルファシステムに帰って何作かシューティングゲームを作ったはず。
そのあとアルファを辞めたと聞いたのだけど、どうしたのかは知らない。
で、実は、S君とは一度一緒にアルファシステムで仕事をしている。
もう30年以上前の話だけど、タイトルは『バイオレント・ソルジャー(IGS)』。

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いろいろな都合で夏にアルファシステムに召喚され、ゲームをまとめるお手伝いをさせてもらった。
僕の経歴の中で、アマチュアでなく一度だけ作れた横スクロールのシューティングゲームの仕事で、スタッフロールにもペンネームの”TEKITO”の名前で載っている。
世の中、ペンネームで名前を出せない仕事もあると書いたことがあるけれど、これはその一例だ。

短い期間ながら、リードゲームデザイナー兼レベルデザイナーをやらせてもらったことになる。
シューティングが大好きなので、バランス&レベルデザインをワクワクしながらやらせてもらったのだけど、このゲームのとんでもない構成、1~3面はメッチャ簡単で4~6面が狂気のように難易度が上がることと、徹底的な覚えゲーになったのは、スタッフの希望を聞いて決めたことではあるけれど、ひとえに僕の責任である。
まあ30年前の話だけど、こうして書いておく。

あとスタッフロールの最後の方にある”come back summer vacation”は、このプロジェクトの進行が遅れていたもので、スタッフは夏休みを返上して必死で作っていたからだ。

“TEKITO”ってひどいペンネームは、実は僕が一番最初にウィザードリィをプレイしたときに、よくわからないまま作った最初のFIGHTERのキャラクタである。んで、以降、あらゆるゲームですぐに使われる伝統の名前になった。

そんな余談はともかく『大魔界村』はY君がメインプログラマで移植が行われているのだけど、Y君もS君も凝り性な上に徹底的に大魔界村を解析しているので、その移植度はハンパではない。

その例を挙げよう。

4面の後半、斜めに降りていく面で登場する敵に、スタッフの間では「手」だの「マドハンド」だの呼ばれていた、デビルハンドって名前の手の形をした敵がいる。

真ん中下、ゲージに重なって見える手のようなものが「デスハンド」
当時の通称「手」OR「マドハンド」

この手は、アーサーの向きを検知して弾を投げてくるのだけど、一匹だけ特定条件で、おかしな方向に向いたままになる手がいるのを、S君はある日見つけた。
そして、どうしてこんな奇妙なことが起こるのかをソースで追いかけ、理由を突き止めた。

ここで書いておくが、このソース基板から引っこ抜いたROMの中身を吸い上げてディスアセンブルしたものである。
当時はアーケードメーカーから実際のソースファイルが来ることはまずなかったと考えていい。なぜなら当時はインハウスツール(社内で作られた社内の専用ツール)が多く、外に出しても意味がなかったり、それともいろんな都合で出せないこともよくあったからだ。
ソースコードが丸ごと(その代わり、ソースコードしかなかったけど)やってきた『イースⅠ・Ⅱ』の方が当時は珍しいと思う。

デビルハンドの変な動きはバグだった
どうしてこんなバグが発生するのかというと、そのデビルハンドのデータだけ、プレイヤーとの位置関係で方向を決めるテーブルの指定を間違っていて、あさっての方向を向いたままになってしまうってことだった。

この手のザコの設定をするときは、ザコのデータを並べる表(テーブル)を作っておいて、その表からデータをとってきてゲーム内に現れるザコの設定をする。だから表のデータに間違いがあると、おかしなことが起こる。そして表のデータが間違っていたわけである。

では、これはバグだのだから取るべきなのかというと、当時の完全移植を意識していた人間なら「絶対に取らない」が普通の判断になる。
なんせオリジナルにある(ハングアップしない)バグなのだから、当然それはゲーム内で再現されるべき、ということだ。

だから、この手の当時の完全移植の代表例の一つ『R-TYPE』の移植をした和泉さんが「本当は暴走するバグまで再現したかった。製品でハングアップはまずいだろうってことで諦めた」「処理落ちを再現するかどうか迷った。だが処理落ちはプログラマとして許せなかったから再現しなかった」なんて僕に言っちゃうわけだ。

つまり、アーケードはいわば聖書のようなもので、一字一句誤植(バグ)まで含めて再現されてしかるべき…という、いわばアーケード原理主義とでもいえばいいのか、まあそういう考え方が当たり前だったのだ。

また現実的な話として、この手のバグが攻略のカギになっている場合すらあり得るので、出来るだけ再現する方が望ましい(この話を例に挙げると、デビルハンドがあっちゃ向いてて攻撃してこないのを利用しているパターンはもちろんあり得るだろう)。

というわけで、S君はこれを再現するためにわざわざ68000(モトローラのCPU。当時、アーケードでは扱いやすさから主力といっていいほど使われていた)のコードを確認して、その一匹だけに特別なテーブルを置いて、PCエンジンSG版でも全く同じバグが再現されるようにした。

こんな風に、バグまで再現できるようにわざわざバグを移植したので、『大魔界村』のPCエンジンSGは。開発をしていた二人がコードを見ていて「?」となったり、プレイをしていて「?」となった、見つけたあらゆるバグは再現するように移植されている、お病気移植なのわけだ。

と、ここまでは、同人誌やブログで書いてきた話だけど…この話をたまたまPCエンジンミニの絡みでツイートし、デスハンドバグを「これはカプコンの開発メンバーすら気が付いてなかったバグなのは間違いなく、1000人に1人どころか、下手をすると、世界中でそれを見ていたS君とY君、説明を受けた僕の3人以外は知らない可能性すらあるが、まあこのようなこだわりをもって『大魔界村SG』は作られていたのである。病気でしょw(終」と書いたところで、ARIKAの三原先生がビックリするようなツイートをつけてきた。

すんません、山本さんから聞きました(大魔界の企画マン)

どっひゃーん! 知っていたいのかい、みたいな返事を返したところ、以下が三原先生が話してくれた顛末。

カプコンスタッフがこれに気が付いたのは、超魔界の開発中でしたわ。
記憶違いじゃなれけばいいんですけど、ね。
俺の記憶が確かなら、気が付いたのは小田さん(ロックマン11のディレクタ)だったと思います。
超魔界のデバックしてる時に、確かマッドハンドの挙動で彼が大魔界で云々って言い出したのが始まりで山本さんに調べてくれ、と言われた様な。。。

というわけで、カプコンの開発スタッフのみなさんが気が付いたのは、三原先生の記憶が間違っていなければ『超魔界村』の開発をしていたときだったらしい。そして『超魔界村』(スーパーファミコン)の発売は1991年10月。

Y君とS君はカプコンスタッフに先んじること約1年早く『大魔界村』のバグを見つけていたのであったw
そんなY君とS君の渾身のバグまで移植した『大魔界村』がプレイ可能なPCエンジンミニはアマゾン専売で発売中である。

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ところでいろんな人に「どうしてPCエンジンSG版の『大魔界村』のパッケージは安彦良和さんなんですか?と質問されてきたのだけど…
僕は知りません!w

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3件のコメント

  • 安彦先生、PCE版『マイト&マジック』や『ニュートピアII』のパケ絵も描かれてましたね。

    そう言えばPCエンジンminiのゲーム選択画面はパッケージを再現してますけど、ギーガーの『邪聖剣ネクロマンサー』と、松下進先生の『NEW ADVENTURE ISLAND(TG16版 高橋名人の新冒険島)』だけ差し替えられていたのは、やはり権利関係や契約の問題なのでしょうね。

    あとminiはゲーム選択時のHuカードの挿入音・CDの起動音は話題になってますけど、SG専用ソフトの「紙スリーブケースを外す音」が再現されてるのがマニアックすぎて好きです(あれは実際にSG持ってた人じゃないと気付けない)w

  • 自分の記憶違いでなければですが、Y氏は大魔界村開発終了の後に「ストライダー飛竜と天外2どっちやりたい?」と訊かれて、「ストピーだけは勘弁してください」と言って天外2に行ったらしいです。
    大魔界村の移植を経験したからこそ、同レベルの再現度でストライダー飛竜を移植するのが困難であることを、肌感覚で理解していたんでしょうね。

    • 僕も全く同じ話を覚えているので間違いないかとw

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