THE功夫についてのメモの続きの続き

なーんと『THE功夫』についての3本目の記事。
この功夫というゲーム、ほぼローンチなこともあり、想像以上にイロイロあったということがわかってきた。

実は『THE功夫』は、発売前に回収されていた、という驚きの事実。

当時のハードではよくある話なのだけど、電源投入時の初期値が一定していないのがわかっておらず、初期化し忘れで動かないハードがある事実が判明して、発売前に一度回収していたということらしい。
飛田さんの記憶では以下。

■飛田さん
功夫の回収の原因は確かMPR0の初期化し忘れだったと思う。MPR7はリセット時に設定されないと全く動かないから初期化の必要は無いけど他は不定値だったと思う。

組み込み系のハードに直接アクセスするようなルーチンを書く人でもない限り、いまの普通の人には想像がつかないことだろうけれど、昔のゲームマシンはOSもBIOSもなかったので、電源投入時のハードウェアの初期化ルーチンを書くのが当たり前だった。
いわゆるゲームも遊べるパソコンはBIOSやBASICが普通に搭載されていたが、ゲームマシンはBIOSも一切搭載されていない剥き出しのハードウェアでなのが当たり前で、BIOSが搭載され始めたのはCDROMが供給媒体のゲームマシンになってから。
さらに、なんとかOSまがいと言えるようになったのはPS1世代から。

しかしPS1のROMに焼かれたライブラリには致命的なバグがいくつもあり、しかも当時はファームの書き換えができなかったので、電撃プレイステーションDを制作する上で非常に困らされた。

だからいきなり最初の1行で割り込み禁止の命令を書いて、それからポートを設定して…なんて具合に、ハードウェアの初期化ルーチンを書くのが当たり前だったわけだ。

そして、ともかくハードを直接操作するルーチンには思いもかけないワナが潜んでいることが多い。
実際、功夫の話を考えてもそうだ。「電源投入時、たいてい問題ないけど個体によって問題が起こる可能性がある」から回収されたのだけど、当たり前だけどデバッグされているわけで、デバッグ段階で出ていないバグなのだから(多分出なかったのだろう)、確率的には低い問題だったのだろうと想像がつく。
こんな風によくよく確認すると「実はまずかった」コトが後からわかるなんてコトがあったりする世界なのだ。

もちろん『THE功夫』は0デイパッチで書き換えなど出来ない、マスターを出したが最後の世界だったので、回収交換となったわけだ。では、交換された、たいていは動くROMはどうなったのか?

■荒井君
同時営業たった私の記憶。
回収したのは功夫。
発売前に回収回収したものは、印(カードに穴を開けて)をつけて、店舗にデモ用にお配りした。

ま、マジか!
こういうものは中古に流れていないかとツイッターで聞いてみると…

うおおおお、なんと穴の開いた『THE功夫』の実物が確認できた!
で、ゲームレジェンドで撮影させてもらった穴空き『THE功夫』が下。

かくして…

『THE功夫』はローンチであったゆえに、1/300秒で回るサウンドルーチンを持ち、ハードウェア初期化で問題があったので、発売前に交換されるという、大変面白い来歴のあるソフトだった。

ということがわかったのであった。

あと『THE功夫』に絡んで、笹川さんからPCエンジンのハードの開発についてさらに面白い話も聞けたので、近いうちに公開予定。

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