バイトサイズゲームの理屈

最初は、ツイッターで書こうかと思ったけれど、内容が複雑で長いのでメモ書き的にブログ記事にした。
タイトルのバイトサイズゲームってのはなんなのか?
英語表記は、bitesize と一単語。
「一口サイズ」とか「スゴく小さい」とかって意味で、まあこの単語は”bite-size”でふたつの単語がひっついた言葉。
具体的にはスマートフォンで海外のパブリッシャー、有名なあたりはvoodooとかketchappとかが出しているミニゲームみたいなゲーム群のことを指している。
対象となっているユーザーは、たいていスーパーカジュアル層。


バイトサイズゲームは単純でコアゲームサイクルが短く、実質的に広告だけでビジネスが成り立つのが特徴だ。
一応課金のメカクニスも入れてはあるが、機能しているのはremove ad、つまり広告除去ぐらいのものだと思っておいた方がいい。
作り手からするとマネタイズに頭を悩ませなくてよさげに見える夢の広告のみモデルだが、どうしてこれが成り立つのか?
「小さいゲームは開発費が安いから」
…こう答えたくなるだろうが、実はこれでは半分以下で落第点になる。
なぜなら、広告からコンバージョン(ユーザーが広告に対して目標となる行動を行ってくれること)しなければマネタイズ出来ない。
違う書き方をすると、仮に100円でゲームが作れても、広告を誰もクリックしてくれなければ、収入はゼロ赤字だ。
つまり、広告課金モデルの本当の論点は開発費の多寡ではなく、いかにして沢山広告をタップしてもらうか? という話になる。
では広告のタップ率を上げよう! と言いたくなるが、悲しいことにコンバージョン率は広告の形でだいたい決まり、ほとんどタップ率を上げることは出来ない。
こういうことを書くと「ボタンの近くに広告を置いて誤タップさせればいいんじゃね?」って素人考えをやる人が世の中にはいるのだけど、イマドキの広告は成約率ベースであることが多く、誤タップをさせてもたいていは金にならない。
またペイパービューの場合でも、ビューだけ上がって成約数が増えないと、成約率が下がる。つまり広告主からすると「タップの割に成約しない効果の低い対象」ということになって、単価が低くてダメな広告が流れてくるようになるので、そういう手段は間違ってもお勧めできない。
だからタップ率が上がらないものだと考えた方がいい。
では、広告を沢山タップしてもらうには、どうすればいいのか?
沢山、広告を表示するしかない
ついでに書けばバナータイプの広告のコンバージョン率は悲惨極まりないので、頼りになるのは動画、それもインターステシャル広告だ。
ところでインターステシャル広告というのは画面をバッサリ埋めて表示される広告なので、ゲームプレイを阻害する。だから出すタイミングが難しい。
少なくともマリオをプレイしていて、ジャンプする瞬間にインターステシャルが出たら、速攻削除されても文句は言えないだろう。映画の地上波放送でCMの入れ方が悪いとヘイトを集めるようなものだ。
では、どこで出せばいいのか?
ゲームが一段落したとき。もっと具体的に書けばステージをクリアしたときとか、ゲームが終わったとき。つまり基本はコアゲームサイクルが一周したときってことになる。
ここで簡単に説明しておくと、コアゲームサイクルとはゲームの核となる部分を一周することをいう。切り出し方でずいぶんサイズは変わるのだけど、例えば古典的なRPGのコアサイクルを書くと以下のようなものになる。

1)宿で回復+レベルアップ
2)ダンジョンに潜って戦闘して経験値取得。
3)リソースが尽きるまで(2)に戻る。リソースが尽きたら1に戻る。

これは『ウィザードリィ』のコアゲームサイクルだけど、この(2)はさらに「移動→エンカウンター判定」とか「勝つか逃げるか負けるまで戦闘」とか、内側にさらに小さなサイクルが入っていることがほとんどだ。ゲームはたいていこういった繰り返しの組み合わせで出来ていて、これらをサイクルと呼ぶわけだ。
さて、古典RPG型のゲームサイクルを例にしてインターステシャルをどこで出すのか考えてみると、いいタイミングは、宿に泊まるとき出すとか、それとも戦闘一回ごとに出すのか…みたいなのはすぐわかるだろう。出すのに適したタイミングは何かのサイクルが終わった時、すなわち一区切りついたときが望ましいわけだ。
そして沢山広告を出したいのだから、サイクルは短ければ短いほどいい。
そう考えると、例なら宿に戻ってきたときではなく、戦闘一回ごとにインターステシャルを出した方がいいし、もっと書くなら戦闘も一歩歩くごとに起こってくれた方がありがたい。
それの方が広告を出す回数が増やせる。もっと書くなら、戦闘も1タップで終わった方がサイクルが短くなるのでありがたい…と考えていくと、サイクルを短くするためには一発タップで終了とか、すぐ死ぬとかになる
だからバイトサイズゲームは死にゲーになることが多いし、単純なサイクルがリピートする
これは、典型的なバイトサイズゲームとして有名なフラッピーバードを考えればよくわかる。
そして、この収益条件はプレイ時間が短く、単純という制約を生み出す。当たり前だ。
ところが操作の組み合わせには限度があるし、一目でわかる単純なゲームにも限度がある。だからバイトサイズゲームは似たゲームの嵐だ。
さらにサイズが小さいのが災いして、ある種のタイプがヒットすると、あっというまにクローンが大量に現れ、ある種のタイプのゲームが飽きられるのを繰り返している。
結構難易度の高いゲームジャンルなのである。

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1件のコメント

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    日本的F2P(いわゆるソシャゲ)でも広告クリックで回復アイテムやゲーム内通貨とかダメなんすかねえ。
    昔からそういう意見はゲーム開発者に言ってはいるけど、そういうのが出てこないって事はやっぱ金にならんのか、
    それとも大手はそんな小銭要らんと思ってるのか。
    ポイントサイトが数多あり老舗も多いんだから、収益モデルはあるはずで、組み合わせでどうにかなりそうなもんなんですが。
    こんだけ非課金ユーザをそのまま遊ばせてるのは勿体無い気が。。。
    ってこれ以上は以前の話の繰り返しになりますか、失礼。

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