どうして、みんなゾンビが好きなんだい?

電ファミの『なんでゲームは面白い』にゾンビに関する記事があり、とても面白い記事だったのだけど、その中で──

「時間」と「空間」を表現するメディアである映画と、「時間」と「空間」を股にかけることができるゾンビは相性がいい。だが、ゲームとゾンビもまた非常に相性がいい。

とあったのだけど、これについて議論したゲームロフト時代のヒトコマを思い出したので、twitterでも雑につぶやいたのだけど、もう少し詳しくメモ書きとして残しておきたい。
話は、今はなき(シャットダウンされたんだよ)ゲームロフトNZがまだピカピカだった2011年の冬の話になる。
記憶ではデザインディレクターに就任してすぐだったので、11月の真ん中あたりだったと思う。ともかくまだ英語が耳慣れず(ニュージーランドの英語は猛烈に早口)、苦労していた記憶がある。


HQ(フランスにある本社)にゲームを提案しようという”back burner”と呼ばれるプロジェクトがスタジオ内で立ち上げることになり、最初にコンセプトを募集したところ、その中の一つにシューティングゲームがあった。敵はゾンビ
それを見て、ふと気になって聞いた。
「ねえ、なんでみんなこんなにゾンビ好きなの?」
こう聞きたくなるのも理由があって、FPSがあればゾンビが出てくるDLC、TPSがあればゾンビが出てくるDLC。ともかくゾンビの出てこないゲームってないんじゃないの? と言いたくなるようなトコロがあって、どうしてこんなにみんなゾンビが好きなんだと思っていたわけだ。
「Hiro(と呼ばれていた。今は中国人とロシア人とイタリア人が入り混じっているせいか、謎の訛り”Iwasaky”と呼ばれている)、Resident Evil(バイオハザードの海外名)を作ってサバイバルホラーを決定づけた国出身の君が何を言っているんだい、あれが決定打だよ」
「そりゃそうだ。でもなんでこんなにみんな好きなんだろう」
といったところで、テクニカルディレクターだった Daniel Stephen いわく──
「そりゃ、AIが簡単だからさ。一番近いターゲットに向かって近づいて一定範囲に入ったら攻撃。ジュニアでも書けるコードだよ」
一同「おおー!」
確かにそうだと、僕も思った。
ぶっちゃけ壁にぶつかって引っかかっても、ゾンビならきっと誰も文句言わない。それどころかプレイヤーが大喜びして壁だの箱に引っかけて、ぶっ殺している姿が目に浮かぶ。
そこでジャッキーってやっぱキレもののゲームデザイナーが「ゾンビって遅いから、数出せるよね」
アーティストのDonだったと記憶してるやつが「リグをさー人と共通に出来るじゃん?」
誰かが「バリエーションいっぱいあるよね、犬でもネコでもゴリラでもゾンビに出来るしさ」
「歩くの遅いからチュートリアルに便利なんだよね」
「耐久度が壊れ方でわかるからさ、表示にいいよね」
「ゴア表現が楽なんだよね」

などなど。
談論風発の1時間ぐらいだったのだけど、結局、話をまとめると

- AIが簡単
- 沢山出せる
- バリエーションが広い
- 動きの遅いのが標準なのでチュートリアルで使いやすい
- 人とリグが共通に出来るのでコントロールを流用できる
- 現代社会に出してもOK
- 沢山いる理由が説明しやすい

などなど、よくこれだけ便利なモンスターがいたものだ、というぐらい便利な要素が揃っている、だからみんなゾンビが大好きだという話で会議は終わったのでありました。
懐かしいゲームロフトのヒトコマでした。

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1件のコメント

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    恐怖の対象にも出来るし、ヒャッハーしてふっ飛ばしまくる対象にも出来る(人や動物じゃマズいでしょうから)
    中々便利な存在ですね

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