山根はどうしてイースⅡのオープニングをアニメにしたのか?

この前、山下章さん主催の楽しい飲み会があって、そこで山根と会ったのだけど、その時、ずっと聞きたかったことを聞けたので、メモとして残しておきたい。

聞きたかったことは簡単だ。
山根はPC88版の『イースⅡ』のオープニングアニメを作って、間違いなく日本のゲームの歴史を変えた男なのだけど「なぜアニメのオープニングを作ろうと思ったのか?」を聞きたかったのだ。

と書いても、なぜこれが疑問になるのかが、今の人にはわからないと思うので、簡単に説明をしておきたい。

80年代後半のPCの世界では、そろそろフロッピーディスクでゲームが供給されるのが当たり前になり、640×200の解像度でタイリングで、それなりにちゃんとした絵が表示できるようになり、頑張れば目パチ口パクで「アニメだ!」とウリに出来るようになっていた。
でも一枚絵がゲームの主役の一端を担うアドベンチャならともかくRPGにオープニングがつくなんて発想はまるでなかった。
そこに、とんでもない衝撃的なアニメーションのオープニングをつけて登場したのがPC88版『イースⅡ』で、それをつけたのが山根だ。
これによってゲームにアニメのオープニングがつくのが当たり前(ついていないとカッコワルイ)の時代がやってきて、このオープニングにアニメがついている構造は、以後連綿と、今でもフォーマットの一つとして残っているほど、大きな影響を与えている。
だから「なぜ付けたようと思ったのか?」は、とても大事な問いだったわけだ。

以下はその時の大雑把な会話。

  • 僕「どうして、Ⅱのオープニングを作ろうと思ったんだよ」
  • 山根「いや、Ⅱの時は俺は知っての通り、オープニングぐらいしか絡んでいませんから」
    ※山根は当時Ⅱではマップやキャラの作業はしていない。
  • 僕「いやそうじゃなくて、あんときってなぜⅡのオープニングをアニメにしようと思ったのか? ってことさ」
  • 山根「いやーあれは日和(ひよ)ったんですよ」
  • 僕「は?」
  • 山根「本当は6冊の本が出てるみたいな静かなタイトルを作るべきだったんですが、ほら当時、『ヴァリス』とかでビジュアルが流行っていて、いっちょやったるか、みたいなそんな感じでひよったわけですよ。いやー恥ずかしい話なんで、ちょっと後悔しているんすよ」

正直、聞いて爆笑した。
確かに、当時日本テレネット(正確にはのブランドのウルフチーム)が『ヴァリス』でオープニングにアニメ(今の目で見るとほとんど紙芝居だが)をつけたのが話題になっていたし、他にも『ブラスティ』だの『アルファ』だの、アニメが売りのゲームが流行していたのは事実だ。

ちょっと注を書いておくと、当時は描画速度が速いとか(当時山根が勤めていたファルコムでも、瞬間描画を売りにしたアドベンチャ『デーモンズリング』なんてのがあったりする)、アニメが出来ることそのものが技術力の証明、というところがあった。デカキャラが表示できるとか、スクロール出来るってのが当時はウリになったのと同じようなものだ。

だが、それらは確かになんとかアニメをしていたのは事実だけど、あまり大きな影響をゲームの世界に与えていたとはいいがたい。
そう考えると、山根の言う「『ヴァリス』を見てひよった」結果が、一世を風靡したリリアであり、以降、みんな真似したあのオープニングデモであり、山根のひよりがゲームの歴史を変えたのかよ、と言いたくなってしまう。
続けて、山根曰く「本当はイースの本を付録につけたかったんですよね」
これはエッと思ったのだけど、あとでtwitterでちょっとつぶやいたところ、アドルクリスティンの名づけ親であり、マニュアルの小説を書いた五十嵐さんからコメントがいただけて、残念なことに覚えていないとのことだった。

なお、ここで五十嵐さんは6冊の本についてはシナリオを書いた宮崎君とツイートしていて、もちろんそれは間違いがないことなのだけど、比較的精度が高いと思われる、僕が進藤から教えてもらって、びっくりしたら山根もそうだと追認した歴史的なな話をちょっと書いておくと

  1. そもそも山根が「デカキャラ」(ボス)を6体と決める。
  2. それをもとに宮崎君がシナリオを書く

という流れであったのは、ほぼ間違いない(と思われる)ので、山根が決めた6体のボスから対応関係として6人の神官が生まれ、6冊の本が生まれた、というのが正しい流れだと考えられる。
また、イースの神官の名前についてもビックリな話があり

いやいや、こんな話、誰も知りませんでしたよ…山根も教えてくれなかったよ…ちゃんと残しておきましょうよ、五十嵐さん。

閑話休題。

で『イースⅡ』のオープニングアニメの話に戻ると、山根は、「技術的には、何も難しいところはなかったんですよ」と、さらっと言ってのけたわけだけど、まあ『ヴァリス』は86年で、『イースⅡ』は88年ということを考えても、両方比較するとわかるけれど実力差はあると思いマシタ。
とはいっても、実物を見ないとわからないと思うし、そして見るのは極めて難易度が高いので、以下youtubeの動画。
当時、アニメで有名だった作品もちょっと入れてみた。当時の「アニメ」がどんなもんかわかると思うし、どんだけ『イースⅡ』が卓越しているか、よくわかると思う。

ヴァリス(1986)
アルファ(1986)
クルーズチェイサーブラスティー(1986)
イースⅡ(1988)
ヴァリスⅡ(1989)

ところで、上のPC88のデモを見て思い出した余談なのだけど、イースⅡオープニングのダレスとダームの会話のシーンはPCエンジン版とPC88版では違う。
PC88版は「ダームの塔が沈黙しました。いかがいたしましょうか」→「アドルとやらがどこまでやれるか見てみるとしようぞ」なのだけど、オリジナルのテキストでは、相手にしてない感が足りないと思って、PCエンジン版では面白い。アドルとやらがどこまでやれるか見てみるとしようぞ」にしてある。
チョッピリ付け加えさせてもらったわけだ。
ところが、なんとこの「面白い」、セガサターン版で使われ(ついでに書くとサターン版は「見てやるとしようぞ」に修正されている)、さらに御本家のファルコムのウィンドウズ版でも登場してしまう。当時、ちょっとビックリしたり、嬉しかったりしたのであったw

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6件のコメント

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; WOW64; rv:55.0) Gecko/20100101 Firefox/55.0
    ダームの「面白い」の台詞は、イースIIのOVA『イース 天空の神殿』の同シーンにも入ってましたね。
    PCE版の要素は、台詞だけでなく細かい要素や演出などがSS版以降にかなり還元されていると感じるので、それだけ影響力を持つ名移植だったのだなぁと思います。

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; rv:56.0) Gecko/20100101 Firefox/56.0
    1987年発売のYAKSAとかゼリアードとかを間に入れるとオープニングの発展の様子がさらによくわかると思いますよー。

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; rv:56.0) Gecko/20100101 Firefox/56.0
    当時はあのマイクロキャビンですら「セイレーン」でアニメーションやってて、イース2と同時期には確か「ディガンの魔石」とか「スタークルーザー」とかが出てたので、そういう雰囲気の中で、いっちょやったるかって感じで派手なオープニングにしたっていうのはすごく納得できますね。

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; rv:56.0) Gecko/20100101 Firefox/56.0
    YAKSAと同時期の日本テレネットがどうだったか気になったんで調べてみたら、アンドロギュヌスとか出してました。これもYoutubeで見れますが、けっこうセンス良いですよー。
    イース2のオープニングは確かにすごかったけど、同時期の他のゲームにもレベル高いのがあってそんなに負けてない印象。オープニングも徐々に進化していってるんですよねー。

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/61.0.3163.100 Safari/537.36
    PCE版イースⅡのOPでリリアが走っている理由が分からないです。
    他のOPだと、光って落ちたのでそこに走って向かったように見えますが、
    PCE版は光るより先に走っているので。。。
    外で一人走って遊んでいた、のですかね???

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/62.0.3202.62 Safari/537.36
    コンテを書いたのは山根なので「なぜ?」についてはわからんですね。
    当時の彼には何か理由があったんでしょうが、それを聞いた記憶はないので、わからんです。

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