懐かしのカーレース
『教養のゲーム史』について書いたとき、ちょっとカーレースについて触れたら、もっとカーレース…特に2D時代のセガとタイトーのカーレース黎明期のつばぜり合いについて書いておきたくなったので、ここに記しておく。
この話は、僕が9歳からスタートし、最後は18-9歳あたりまで続く、当時2つのゲームメーカーがカーレースについて張り合っていたら、そこに第三のメーカーが現れ、あっつーまにジャンルそのものが過去の遺物になってしまうまでの物語だ。
さて。
僕がテレビゲームと出会ったのは、1973年。2泊3日のハワイ旅行のホテルだった。
小学校4年の夏休みだったので、多分10歳になっていたのだろうと思う。
ホテルに置かれていたのは『PONG!』。ただしアップライトではなくカクテル筐体バージョンだった。カクテル筐体だったので上がスモークの茶色のアクリルになっていて、恐ろしくハイテクな印象だった。これがATARIのオリジナルなのか、それともATARI コピーだったのかは残念ながら覚えていないが、ハワイの海よりこのゲームの事を良く覚えているのだから、よほど衝撃的だったのだろう。
ウチのブログに来る人で『PONG!』を知らない人はいないと信じたいが、念のために書いておくと、ATARI製作の史上初の商業的に成功したビデオゲーム。リリースが1972年11月なので1年弱で見ていることになる。
それから2年たって、僕はもっと心奪われるゲームに出会った。それがタイトーの『スピードレース』。
こいつは今で言う見下ろし型のカーレースで、マイカーをステアリングで左右に動かして、上から現れる敵車を避けつつ、路側に当たらないようにしつつ、走るゲームだった。
実際の筐体と画面は右みたいな感じ。当時はグリーンディスプレイに表示されていた(緑色しか表示できない長残光ディスプレイがあったのですよ)。
これと出会ったのはボウリング場だった。
当時、テレビゲームにこのパターンで出会った人が多いのではないかと思うのだけど、1970年代半ば~後半に、日本では大変なボウリングブームがあった。
そして僕の両親もご多分に漏れず、ボウリングにはまっており、そのボウリング場にはゲームセンターがあった。そしてボウリングはガキのやるものではなかったので、僕は小遣いがもらえ、それでボウリング場の片隅にあった、ゲームコーナーで遊んでいたわけだけど、そこにあったのがこの『スピードレース』だったのだ。
当時遊んだ僕は知らなかったが『スピードレース』は当時としては大ヒットゲームだったらしく、あちこちに普通に置かれていて、小学校の修学旅行で富士五湖めぐりと箱根に行ったとき、ホテルにあったゲームコーナーにもこいつがあった。そして友達で競争をやったとき、僕はぶっちぎりの1位だった。当時のガキとしてはゲーマーだったのは間違いない。
そして、僕が小学6年の歳というのは、1975年でエポックのテレビテニスが発売された年である。
このオモチャは19500円したのだが、もちろんとんでもないお値段であり、僕の実家は裕福ではあったが、子供に体験はさせても高いオモチャや小遣いはやらん! という教育方針だったので、クリスマス前に発売された、喉から手が出るほど欲しかったこのゲームマシンを買ってもらえることはなかった。
当時、大学生の初任給は90000円ほど。今の半分以下だ。つまりこれは現在で言うと4~5万円するオモチャだったってことになる。そりゃムリというもんだ。
さて、この『スピードレース』、『スペースインベーダー』の大ヒットと共に全国津々浦々に山のように出来上がったゲームセンターに置かれるゲームとなっていたけれど、1978年にカラーになった以外は、大きなゲーム内容の変更もなく、不良中学生だった僕がスペースインベーダーの代わりに100円を投げ込んで楽しむ事もあるゲームだった。
ここに登場したのが『モナコGP』(1979/セガ)だった。
こいつはスゴかった。
まず道にバリエーションがあって一本橋とトンネル(なんとスポット処理される! これが多分史上初のスポット処理ではないかと思っている)と砂利道がある!
おまけに時間制限を超えると残機制になり、残機ある限り、延々とプレイ出来るのだ!
全くの驚きで、僕のフェイバリットカーレースはたちまち『モナコGP』になったのだけど、タイトーも黙っていなかった。すぐに『スピードレースCL5』を発売して、追撃。CL5は『モナコGP』とギミックはほぼ互換で、ちょっとだけカッコ良かった。そして、僕は走る味がタイトーの方が好きだったので、モナコGPは四条大宮のパチンコ屋の地下にあったゲームセンターで遊ぶだけになり(ここはCL5がなかった)、仲間と遊ぶ河原町のゲームセンターではCL5を遊んでいた。
ちなみにモナコGPは覚えていたけれど、CL5は名前を覚えていなかったので、wikipediaやいろいろなデータを検索して確認して書いていたりする。ただWikipediaでは1ヶ月しか差がなかったと書いてあるのだけど、現実、自分が遊んだのは、CL5は年が明けてからだった記憶があり、数ヶ月の間が空いているはずなのだけど、こればかりはゲームセンターで違いがあるのでどうしようもないよなあ…
そして、タイトーはさらにこれの改良型になる『グランドチャンピオン』(1981)をリリース。
これになるとモナコGPを完全に上回る出来で、もちろん僕は走り味がタイトーのが好きだったので、夢中になってプレイした。
だけど、セガにはスゴい切り札があった。それが『ターボ』。なんと画面が3D風! これは当時あったパソコン雑誌でショーかなんかに出ていたのが取材で載っていて、1982年の春にグランドチャンピオンをやりながらも、ワクワク待っていた(きっと四条大宮のゲーセンに入ると思っていた)。
だけど…1982年のある日、当時あった難波のビッグキャロットでロケテストされていた、あるゲームをプレイした瞬間、それまであったあらゆるカーレースゲームは僕の心の中で過去の遺物になった。
それがナムコの『ポールポジション』。
これのラスターによる疑似3D処理の出来は圧倒的で、そのあとプレイしたセガの『ターボ』は『ポールポジション』と比較してガッカリする出来でしかなかったし、もちろんそれまで僕が愛してたと言っても間違いない『グランドチャンピオン』も全くの過去の遺物でしかなかった。
そしてもちろん『ポールポジション』以降、疑似3D表現がカーレースでは当たり前になり、見下ろし型のカーレースなんて、特殊なモノを除いて全く相手にならなくなるし、もちろん、ほとんどの人はそんなものをプレイした記憶すらないと思う。
だけどだ。
1975-81年の6年間の間、確かにセガとタイトーが見下ろしカーレースで開発競争を繰り広げていた時代があった。
そして、僕はその時代、まさにそれらのゲームを興奮して遊んでいたから、こうして記録として残しておきたいと思うのだ。
7件のコメント
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モナコGPって、レースカーより救急車のほうが速いヤツでしたっけ?トンネルに入ると急に視野が狭くなるので、事故るのは決まってトンネル内でした。
見下ろし型のレースって、画面の構成そのものはシューティングと変わりませんよね?ということはシューティング下手な奴はレースのゲームも下手だと思います。だから私はどちらも苦手です。
後年マリオカートやって目を回しゲロ吐きそうになりました。それ以来レースのゲームはやっていません。
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僕はポールポジションよりもファミコンのF1レースが先だったので
実はその辺の衝撃があまり無いんですよね。初見はF1レースのアーケード版かと思いました。
レースゲームでの衝撃といえば、割と最近になってしまうんですが
なんといってもウィニングランですね。雑誌やNGのスクリーショットではしょぼく見えたんですが
実際にやってみた時のリアリティ、操作感覚は本当に画期的でした。
(物凄く難易度が高いゲームでもあったんですが)
当時、ちょうどユーノスロードスターが発表されたころで、ユーノスの実車両にナムコが開発した
3画面のポリゴンシミュレーターを載せたデモが、環八あたりのショールームにあったらしいんですが
やってみたかったなぁ。(ウィニングランがベースだったのかな?)
その頃、放課後に友人とファイナルラップを死ぬほどやりこんでたんですが
ウィニングランで完全に過去の物になりましたね。ただ、ラスタ系が仲間内で廃れた訳でもなくて、
鈴鹿8アワーズは(2輪ですが)その後も結構はまってた気がします。
他に印象に残っているレース物としては、F-ZEROとリッジレーサーでしょうか。
F-ZEROはともかく、リッジに関しては、F1等のレースカルチャーが既にバブルの遺物に
なりかかってた状況に対するレースゲームの解答として、技術云々以上に表現・コンテンツとして
非常に画期的だったように思います。(セガのデイトナUSAはなんとなく苦手でしたけど)
F1にしても、峠や第三京浜などの走り屋的文化にしても、レースゲームに関しては
最新の技術と同時に、その時々の文化的な「カッコ良さ」の反映が求められるジャンルだとは
思うんですが(マリカーなんかは別として)、今現在の車・バイク関連の周辺状況を考えると
仮に「カッコ良さ」はあっても、レースゲームに落としこむのは難しいのかもしれませんね。
(グランツとかFORZAの先が見えない、かなあ)
車メーカーなんかも、販促にタレントや外人モデルなんかを起用してないで
ゲームメーカーと組んで、新車販促用ゲームROMでも配ってみたら面白いのにな、
とは常々思っているんですが。
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モナコGPはウチの地元のショッピングセンターのゲームコーナーに10年近くも置いてたので
大昔のゲームのわりには結構記憶に残ってます。タコメーターやランキングなども「、
ゲーム画面内に表示ではなく直付けのタコメーターやサブLEDなどに別表記だったり、
シフトレバーが木製だったりと、筐体の装飾が凝ってたのが子供ながらに印象的でしたね。
この手の見下ろし型の2Dレースは、後にファミリーサーキットやF1サーカスなどで昇華して楽しく遊べました。
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ちょっと体調悪いのでまとめてなんですが…
ポールポジションは1982年、ファミコンのF1は1987年、マッハライダーは1985年…ちょっとポールポジションにかわいそうですw
2Dカーレースは、ファミリーサーキットの成功とファミコンでのラスター処理の難しさとラスター処理してもレースの面白さをあまり改善出来ないことから、一時ヒットします。
それでSFCの登場でまた下火になるのですが、F1ブームや対戦ブームで2Dレースは再度盛り上がります。これが最後の2Dレースの盛り上がりでしょう。
ちなみにモナコGPの救急車と僕も思っていたモノは設定では違うそうです。
本当かは知らないですが、驚きましたw
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>ポールポジションは1982年、ファミコンのF1は1987年、マッハライダーは1985年
上記のF1は、青ディスクの2Dの奴ではないですか?
(ニチブツのF1サーカスとソックリな)
ラスタでターボな初代任天堂F1レースは、少なくともマッハライダーよりは
前だったように思うのですが・・・(銀箱の頃かな)
>ちょっとポールポジションにかわいそうですw
この頃はまだゲームセンター等に行ったことがなかったんですよ。
まだ子供には「怖くて危険な場所」だったので。今よりも数はあったんですけど。
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>上記のF1は、青ディスクの2Dの奴ではないですか?
>(ニチブツのF1サーカスとソックリな)
青ディスクのファミコングランプリF1レースは1987年10月30日発売です。
こちらは8方向へスクロールするタイプのシステムなので、上方向スクロールのみの
F1サーカスとはまったく違うものです。むしろF1サーカスの方がファミリーサーキットにクリソツだったかと。
ちなみに、このファミコングランプリF1レースと同じタイプなのがカプコンのF1ドリームでしたね。
>ラスタでターボな初代任天堂F1レースは、少なくともマッハライダーよりは
>前だったように思うのですが・・・(銀箱の頃かな)
こちらのラスターのF1レースが1984年11月02日発売です。
子供の頃は友人の間ではファミコンのポールポジションとか言ってましたw
個人的にファミコンのラスターのレースゲームで最高峰だったと思うのは、スクウェアが1987年に出した
ハイウェイスターだったと思います。3Dメガネにも対応だったのこれは是非3DSで復刻希望です!
これをプログラムした、当時天才プログラマーと言われてたナーシ・ジベリさんは今いずこ?
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>むしろF1サーカスの方がファミリーサーキットにクリソツだったかと。
>ちなみに、このファミコングランプリF1レースと同じタイプなのがカプコンのF1ドリームでしたね。
今の今まで勘違いしてました。あれF1ドリームだったんですね。
それにしてもカプコンのPCE物って印象薄いなぁ。
ファミリーサーキットは最高でしたね。音楽以外は。(妙に耳に残るんだよなー)
車同士のクラッシュが無いのが斬新でした。
PCEで「ワールドサーキット」が出ると期待してたんですが
今にして思えばサーカスとモロカブりだったんですね。