イースⅠ・Ⅱ通史(番外):イースグローバルガイドブックの謎

話は僕のあるツイートから始まる。

”イースの世界設定は『I』・『II』で完全に完結することを前提に作られており、最終的に現実の歴史とリンクするようになっている”

僕のツイート

このデタラメには続きがあり「オリジナルスタッフはⅠ・Ⅱで終わらせるつもりで辞めた(Ⅲはつまり他が作ったことになっている)」とか「山根は続けたかったからⅠ・Ⅱでシナリオいじった」とか、もうよくこんだけデタラメを書けると呆れる代物だ。

このとんでもないデタラメはwikipediaのイースシリーズの初期の項目を筆頭に、何か所かで書かれていたのだけど、これにモトネタがあるのか不思議に思っていた。
というのも、山根のくだりはともかく、それなりに発想力のある話で、素人がゼロから考られるとはさすがに少々想像しがたく、何か元ネタがあったのかなあ? と調べていただけど、さっぱりわからず、ツイートしたのだけど…そしたら、このツイートを日本ではクトゥルーとレトロゲームについては、この人に聞けばわかる…というぐらいの識者、森瀬 繚さんに捕捉され、下のようなツイートが。

『イースグローバルガイドブック』の年表あたりが発火点のような気はします。あの本の執筆陣に、成立の経緯をお聞きしてみたいと常々。

森瀬さんのツイート

1989年8月に出版された『イースグローバルガイドブック』あたりが最初ではないかというので、びっくりして家の中を調べたのだけど、こいつはない。
どうやら読んだことがないらしい本…とか思っているうちに、フォロワーの方が、イースの資料を調べるとたいていぶつかる本名荒井さんのウェブに情報があると教えてくださった。

一読して、驚愕。な、なんじゃこりゃああ! って、ビックリの年表だ。
で、荒井さんや何人かの話によると非公式ではないかというのだけど…ここでさらにフォロワーの方が写真を!

表紙画像・帯つき

帯にはなんと、初の完全オリジナル設定資料集!?
おいおいおいおい、これがオリジナル設定資料って、オリジナルからかけ離れてるだろうが!?
いや、全くひどいなどとツイートしているうちにである。
なんと知り合いの、とみさわ昭仁さんがとんでもないツイートを!!!

ゲゲーッ!

さらにとんでもないツイートが!

ゲゲーッ!

というわけで、ちょっと裏でいろいろお話をしてわかったこと。

  • 昔から知り合いだった故・成沢さんも絡んでいた
    (なんてこったい!)
  • 実質的にファルコム公認。
    ライセンスとかそういうのが入ってない理由は不明だけど、1989年の夏発売というと、シリーズで書いてきた通り『イースⅢ』終了直後でオリジナルチームがほぼ全員いなくなったときだ。
    ファルコム的には面白くなかったのかと思う。
  • 資料はサッパリなかった。
    資料を残すタイプの人も資料が残っていない(これについては後述)。もらった記憶もない。
  • 足りないところは本当に好きに書いていいと言われた。
    雑な仕事だなぁと思いながら、当時は若造のペーペーなので受けてた。
    「ファルコムがそういった」と編プロに教えてもらったと複数の人が証言したので間違いない。
  • ない資料で適当に描いたモンスターが後に角川から出版された『イース大全書』にトレパクされた。
    紙資料無しでゲーム画面のプリントアウト渡され「モンスターの絵描いて」「好きに描いていいよ」と成沢大輔さんに指示された。
    「宙に浮いた眼に岩がくっついたもの」とか程度の指示。
    武器と防具は、ほぼすべてテキストのみだった
これ、僕も手伝ったんだけどなあ…(‘A`)

…いやあ、ポカーンとしてしまう。
ただ、実はここで僕が気にして確認したのは「資料がなかった」という話だった。

というのもだ。
僕がハドソンで『イースⅠ・Ⅱ』を作るとき、もちろんありったけの資料をファルコムに送ってもらってくれと言った。
その時やってきた資料は製品のマニュアル、ソース、データ、プロトタイプ、製品ディスク(ただしプロテクトなし)と全部でフロッピーディスク2箱ほど。
横に山根はいたし、どうせファルコムに行って、まだいるはずの大浦さんと桶谷さんにインタビューするつもりだったのもあって、当時は気にもしてなかったが、よくよく考えてみれば紙の資料や設定資料なんてものは一度も見たことがなかったことに気が付いた。

リリアのキャラ資料すらなかったんだから、考えてみれば「?」だ。
というわけで、オリジナルスタッフに取材すると…

■オリジナルスタッフの証言
紙の資料は、ほぼありませんでした。
企画書はもちろんありません。
キャラクターやモンスターデザイン、マップデザインもほぼPCのツール上で作っていました。
たまに絵描きが、自分でイメージを固めるために、ラフ絵やデザイン画や原画を起こしたりしてましたが、他の人と共有するものはなかったです。
シナリオやマップから来る要望もほとんど口頭で指定、まれに複雑なものは紙に書かれるくらいでした。
広告打つ段階になってから、ドット絵を元にキャラクターのイラストを起こしたり、イメージ画を起こしたりしていました。

ああ、やっぱりなかったわけだ…というわけでだ。

『イースグローバルガイドブック』の内容は確かに酷い。
だが当時、ファルコム社内には世界観を作った決定的な二人、山根と宮崎さんはおらず、もう全体像を知ることも、説明することもできなかった。
そう考えれば、これは雑ながらも一つのパラレルワールドの正史と見るのもありなのではなかろうか。
と、思ったのだった。

にしても、30年前の話とはいえ、ファルコムさん、雑なことしてくれたもんだよ…

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9件のコメント

  • この内容、本の方にも入れたいという事ですので、実際に実物に目を通しておいてはいかがでしょう? 通史の一購読者としてお貸しするのにやぶさかではないので、ご希望であればお送りしますが。(DM送れない設定のようですのでここでのコメントで失礼します。)

  • エインシャント(古代兄妹)やクインテット(橋本さんや宮崎さん)のにも取材行けばよかったんじゃと思うのだけど会社の関係で難しいのかなやっぱ
     SFCの某ナ〇コROMカセットなのに主題歌流れるRPGも 資料残ってない部分が後発シリーズや移植で当時のスタッフの設定や思惑変わってしまったりしたけど
     そこら辺ト〇イエースに居る当時のスタッフに聞けば解決する話だったわけで(まあこれも会社の関係で難しいんだろうけど)
     実際に本や移植作リメイク品作ってる人からしたらこっちの苦労知らないで好き勝手言いやがって状態なんでしょうけど
     

  • 記事タイトルが「イースグローバルデータブック」になっていますね。

  • 現在本を所有していないので記憶が曖昧ですが、アスキーのイースTRPGがこれを参考資料にしていて、更にTRPG版初出のネタもPCエンジン版YsIVで使われちゃってたような気がします。

  • こんにちは。この本、持っています。中古で買ったので帯はなかったです。この本はPC-88版イースI説明書についているプレ小説(ゲームが始まる前の経緯を書いたもの)も元にしていると思います。セルセタの樹海(IV)、砂の都ケフィン(V)、アルタゴの五大竜(VII)の記載があるからです

    いわくつきで、イースIIエターナルが発表された時、ファルコムの公式サイトに記事の一部が転用され、しかもユーザーからの「非公式本ではないのですか?」という指摘で削除したという恐ろしいエピソードまであります。

    イースは先月で9作目まで発売されましたが、ファルコムが公式で使っているイースの世界地図は、もしかしたらこのグローバルガイドブックが初出典かもしれません。自分はSFC版イースVのマニュアルで使っているのをはじめて見ました。PCエンジン版IV製作時の原案にあったのかは知りません。PC-88版I、II、IIIでも地図を見た記憶はないです。でも、1989年に発行されたこの本には載っていた。つまりは何気に公式設定に紛れ込んでる可能性が極めて高い、胡散くささ満載の本です。

    私が以前こちらで質問させて頂いた、イースIの神殿と、ムーンドリアの廃墟が同じ建物だったというのも、この本に書かれています。同じ設定が「イース冒険の書」という本にも書かれているそうですが、どちらが先だったのかはわかりません。

    PCエンジン版IVも、この本の影響を受けており、ラーバのフルネームがラーバ・サルモン(本の中ではサルモン神殿を作った男の末裔。もちろん公式はこの設定を否定というか、サルモン姓の設定を使っていない)ということになっています。

  • いつもイースの裏話を拝見しております。
    イースⅢの内容は別の作品だったのが
    急遽イースの続編として製作する事が決まった為
    内容を変えて主人公をアドルにしたという噂を聞いた事があります。

    • イースⅠ・Ⅱ通史(17):イースⅢの開発と終了、そして一つの推測
      これで少し書きましたが、僕がインタビューした限りでは、それは「わからない」が答えです。
      当時のスタッフの間ですら記憶があいまいで、一番真相に近そうなのは「別なゲームを作ろうとしたけれど、手慣れたアドルでテストしてるうちにイースの外伝になっていた」ですが、これが本当かはわかりません。
      また、当時のイースチームはイースⅠ、Ⅱの制作を見ても、急遽続編にしたとか、そういうのはほぼ間違いと断言できるかと思います。
      ただ「イースⅢ」という名前はつけたくない、外伝であるという扱いにしていたのは間違いないです。

  • 御返事ありがとうございます。
    あるイースの漫画は
    アドルがイースの女神と六神官によって造られた人造人間というトンデモ設定があります。

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