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斉藤由貴さんとKMOとハドソンと(中)
前回はコレ

あらすじw
1987年、CD-iにウンザリしていた僕は、KMOで仕事をしていた知り合い編集SKさんの誘いに乗り、ハドソンでゲームを作らないかという話にダボハゼのように食いついた。
そしてハドソンにプレゼンを行い、首尾よくサイキョーRPGを作れそうになったところまではよかったが、うっかりCD-iの仕事をしていると話したことで、中本さんにCD-ROMの話を根掘り葉掘り聞かれる羽目になり、エラい目に合ってしまう。
そんなわけでKMOの仕事を断りにくくなった僕に、メインプログラマがパンクしているので新しい88のサウンドルーチンを書いてくれ、との依頼が舞い込む。
首尾よく書き終わって渡して数日後、なぜかNECに一緒に来てくれ…ということになり…

以下、本文。

田町にあるNECの本社ビルはびっくりするほど大きくて、さすが天下のNECと呆れたのをよく覚えている。とは言っても、待ち合わせ場所に迷うことはなく、すぐにTKさんと会えた。そして二人で5階あたりの会議室に移動して、相手が来るのを待つことになった。
僕は気楽なものだった。
NECからなんで呼び出されたのか知らないが、言われたとおりBASICしか使っていないし、ルーチンが動くのも確かだ。まあ仕様の報告ぐらいだろうと思っていた。
それにCD-iのミーティングと違って、英語じゃないしフィリップスの連中と喧嘩する必要もない。全くノンビリして問題のないミーティングだった。

会議室で待ってたところに入ってきたNEC方は記憶では4人。エラく険しい表情で入ってくるや否や、席につくと…
「始めましょうか、TKさん」
確か銀縁の細いフレームのめがねをかけたオジサンと記憶している人が口火を切った。(今ならもう部長とかそういうところにいたり、下手したらそろそろ退職の年齢だったり、退職してリタイアしてたりするのではなかろうか。以降、銀縁オジサンと書いておく)
普通なら、最初に名刺交換やらお互いの自己紹介があり、それから会議に入るのが世界共通のビジネスミーティングの流れだが、そういった事前の儀式が全くなかったので、どうしていいかわからず、あぜんとしている僕を、銀縁オジサンはジーッと見ながら言った。
「メインプログラマの方ですよね?」
「は?」

銀縁オジサンのおっそろしく厳しい声に、僕はとても間抜けな返事を返した。

何の話をされているのか全くわからなかった
「だから、あなたがメインプログラムを作られているんですよね?」
「いや…僕、サウンドプログラムを作っただけなんですが…?」

イライラした口調で繰り返す銀縁オジサンは明らかに怒っているので、僕はあわてて説明を始めた。
「KMOさんから、メインプログラマがサウンドのところが出来ないというので、サウンドルーチンを作ることになりまして…かくかくしかじか…」
かなり焦って説明したと思う。
ともかく銀縁オジサンは詰問する雰囲気で、とてもノンビリしてられる状況はなかった。なにがなにやらさっぱりわからなかったが、まるで事前の自分の想像とは違う会議のようだった。

「…で、少し前にプログラムを渡して仕事は終わっているわけなんです。今日も呼ばれたので来ただけなんですが…」
ようやく、一通りの説明を終わらせたとき、銀縁オジサンから怒りは消えていたので、少しほっとした。
「それは失礼しました…で、お名前は?」
「はあ、岩崎です」
あとにも先にも、ビジネスミーティングで自己紹介を会議が始まってからやった唯一の例なので、おっそろしく良く覚えている。なんせ名刺を出したのも、会議が終わってからだったのだ。
「つまり岩崎さんはメインプログラマではないということですね」
「はあ、そうなんです」
この段階に至っても、僕はまだ事情が飲み込めていなかった。今から考えれば、全く間抜けな話だと思うが、どうして僕がメインプログラマと勘違いされているのか、まるでわかっていなかった
「TKさん、メインプログラマの方が来られるという話だったのでは?」
銀縁オジサンは今度はTKさんのほうを向くと、質問をした。
「いや、それがですね…来る予定だったんですが…急に都合が悪くなったと朝に連絡が入りまして…」
TKさんは、困ったようにボソボソと言った(もともとボソボソと喋る人なのだが)。

急に都合が悪くなった」だぁ?
さすがのボンクラな僕も、この瞬間に全てを悟った。

どうしてTKさんに質問が行くまで、僕が一方的にNECに問い詰められて答えるという、会議としては異様きわまりない状態でスタートしたのか?
なぜ、会議の雰囲気がエラク剣呑で、NECの人たちの態度が厳しくて、僕がいきなり責められ、そしてどうにもTKさんが居心地が悪そうな雰囲気だったのか?
しかも、僕が詰問されている間、TKさんがうまく間に入れなかったのか?
あらゆることが、ただ一つの真実を指していた。
頭が良くてスマートなメインプログラマ君は、プログラムが完成していないせいで会議で責められるマズい事態を回避するため、南の島にバカンスに行った。知らずに、ノコノコやってきたどこかのワーカーホリックの間抜けなライター兼プログラマが生贄になった
と、鈍い僕が事態を悟って呆然としている間も、銀縁オジサンとTKさんの会話は続いていた。
「それでプログラムの方は…?」
「いやもうすぐ渡すと言われたきりでして…昨日もようやく連絡が取れたような状態で…直接には会えていないんですよ」
TKさんは、ものすごく困った口調で言った。
「すみません、岩崎さんはプログラムを持っておられるんですか?
銀縁オジサンは突然丁寧な口調になって僕に質問してきた。
「実は僕もメインプログラムは持っていません。もらえなかったのでサウンドルーチンの動作確認もダミーで行いました。打ち合わせのときも口で説明されただけで、ちゃんと動いているのは一度も見ていません
僕は答えた。

実際、メインプログラムを何ももらっていないせいで、サウンドルーチンを作るときに結構困ったのは本当だった。
というのも、2010年現在、今時の言語を使っている人には想像もつかないことだろうが、当時のMS-BASICはモジュラリティがゼロだったので、ローカルに影響をとどめるのがとても難しかった。
しかも、音楽は常時鳴らす都合上、結構問題を起こしやすいので、出来れば動くメインプログラムの上でテストしたかったのだが、打ち合わせのとき「今、ちょっとデバッグ中で渡せないんです」などといわれ、渡してくれなかったのだ。
「こいつ、あんま腕良くないんじゃ?」と思った最大の理由がソレだった。
話に聞いている程度のプログラム、仕様を満たすためのデバッグや細かい修正はともかくとして、動かないところだけ「ここまだ出来てないんで」と説明してメイン部分を渡せばいいだけの話だ。
ところが打ち合わせのとき、何一つ見せてくれず、渡してくれず、仕様決めるときも生返事ばかりで「大丈夫かよ、こいつ」と思ったわけだ。
大丈夫でないのは、会議の状況から見て明らかだったわけで、自分の勘は正しかったわけだ。

【注】ローカルに影響をとどめる
自分の作った範囲だけにプログラムの影響を押さえるという意味。
だいたいサウンドルーチンは割り込み(一定の時間や、あるタイミングで、プログラムに<ちょっと僕の作業をさせてちょうだい>と『割り込む』こと。英語ではinterrupt)を必ず使うので、絶対にプログラム全体に影響を及ぼすし、結構メモリも使うのでローカルに影響をとどめるのは、難しい。
しかも、オールBASICで書いてくれ、と言われた手前、面倒は3倍増しだった。


と、自分が思い返している間も、なおも会議は続いていた。
「TKさんはどうお考えですか?」
「この状況では、正直、完成は難しいと思います
「ですよねぇ…」
TKさんが苦虫をかみ潰したような顔で言うと、銀縁オジサンもうなずいた。
「岩崎さんはどう思われますか?」
「うーん…僕も完成は難しいと思います。だいたいこの程度の音楽ルーチンも書けない人間が、メインプログラムを全部書けると思えません」
僕は答えた。嘘はつけなかった。自分の感覚から考えて、出来るわけないと思った。
あのプログラマを自称するメインプログラマ君は、作る能力なんかありゃしないのは、もはや明らかだった。明らかに自分の手に負えないレベルのプログラムをいい気になって受けた挙句、何も作れないけれど(結構めんどくさい)サウンドを外注にすれば、出来るのではないか、と勝手に夢を持っただけだ。

銀縁オジサンは難しい顔で黙り込んだ。TKさんも黙り込んだ。
会議室は静まり返った。

記憶では数分静かだったような気がするが、多分せいぜい1-2分だったのだろうと思うが、銀縁オジサンが、はっとした表情をして、僕のほうを向いた。
「申し訳ないのですが岩崎さんにプログラムを書いていただくというわけにはいきませんか?」
エーッ!
銀縁オジサンは本当に真剣な表情で僕を見ていた。いつの間にかTKさんも僕を見ていてた。それどころか、そのミーティングに出席していた人全員が、訴えるような目で僕を見ていた。
「今からプログラマを探してとなると期間的に非常に厳しいですし、岩崎さんは、内容も分かっておられますし、既にプログラムが書けることもわかっていますし…これも何かのご縁ということで、やっていただけませんか?」
正直な話、こんなに参ったことはない。今でもはっきりと思い出せる。こんなことと分かってたら、絶対来なかったと思った瞬間だった。
その場にいた全員が「お願いだから受けてくれ」と無言で圧力をかけていた。世の中「いやだ」といえない状況があることを知った瞬間だった。
「はい、わかりました。なんとかしてみます」
僕はしょうがなく言った。

■■■ 続く ■■■

【注】23年も昔の話なのだが、書いてみて当の本人すらまるでウソとしか思えず冗談か創作のように思えるうえに、自分の武勇伝のように読めてしまい、とてもイヤなのだが…この一連の話は、もちろん会話などは記憶に頼っているので当時のままであるわけがないけれど、一連の物事の流れも、起こったことも、全くの事実なのが本当に困る。
おまけに結構長くて、仕事の合間にちまちま書いてたらいつまで経っても終わらない。
|| 01:45 | comments (2) | trackback (0) | ||

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コメント
ええ、まさかの中ですw
そして、まさかの休載>打ち切りのコンボでw

インターチャネルのTさんは直接の知り合いです。
PCエンジン誌で仕事していましたし、何度もあって話をしています。
いい人ですよ。
仕事は失敗も絶対あって、それが結構有名な形で表に出ちゃってるだけで、あれだけ長く仕事が出来ている、というのは、それだけで「仕事が基本的にはちゃんとできる証拠」です。

期待してて出なかったファンの人は「そんなことしるか」でしょうが…

あと、筋書きではなかったと思いますよ。プログラマを連れてきてくれ、と言われたので、二人とも連れて行こうとした、というだけだと思いますw
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/10/08 11:30 | Eeem.i3Y |
まさかの中編とはw

失礼ながら、とてもハラハラして楽しめました。
若き日の岩崎さん気の毒すぎる。
しかし、会議室での話の流れは、TKさんの筋書きだったんでしょうかねw

後編も期待しております。

あ、あとイ○ターチャ○ルがきな臭いようで・・。
NECアベニューには思い入れがありまして
とても残念です。
もし、T部田さんが残って居てくれたら・・・。
スペースファンタジーゾーンはずっと許しませんがねw
もしご存知でしたら岩崎さんから見た、氏の人物像などを一度。長々と失礼しました。
| ケラ | EMAIL | URL | 10/10/08 03:12 | /1m1/Uts |
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