ハドソンのやらかし伝説 in スーパースターフォース

たまたま、下のツイートがアクティビティに流れてきたことから話は始まる。

どうしてこのツイートに引っかかったかというと、もともとwikipediaなどで流布されていた与太話なのだが、以下のような説があった。

  • スーパースターフォースはハドソンが作っていた。
  • ところがテクモに許可を取りに行ったら、テクモも開発中だった。
  • ハドソンは内容を修正して発売した

こんな説は当時の開発のスケジュール感やタイミングを知っていれば、読んだだけで与太と分かるレベルの話で一顧だにする必要はないし、だいたいこれの原典がどこにあるかすらわからない。
はっきり書けば、wikipediaのゲームの項目にやたらめったらある与太話の一つでしかないのだけど、もちろん、裏を取るために野沢さんに確認したのが下の記事。

■野沢さんの証言
ハドソン版スターフォースがべらぼうに売れたので、自分たちが作ると意志表明があったため、ハドソン側は名前の使用を諦めたんだと思います。
私のところに来たときにはスターフォースの名前は使えないのが前提でした。名前を決める企画会議があった事は覚えています。
まあ、コロコロコミック辺りの方は早めに入校する為に、訂正が間に合わんかったと思われ。

というわけで「ハイ、この話は与太、与太」と片付けられることになったのだけど、実はこの中には一つ推測があった。

コロコロコミック86年2月号で『スターソルジャー』は『スーパースターフォース』というタイトルで発表されているが、それは「入稿の都合で直せなかったか、それとも通りがいい仮題で出したんだろう」というところだ。

合理的な推測だし、疑う理由はないが、ハドソンがそれを仮題として発表したというのは推測で、ハドソンがあのタイトルを出したときは、営業は『スーパースターフォース』で行くつもりだった可能性はあった。

で、それが知れるのではないかと…ワクワクしてRTしたら、そこに何と鶴田道孝さんがポンと、とんでもない爆弾発言を!

そりゃ、ハドソンがテクモに全く話無しに、スーパースターフォース出す、と言い出したものだから、柿原社長が激怒して、そんならウチで出してやる!って事になったからですよ。

な、なんだってえええええ!?
というわけで、話を聞いてみた。

ハドソンのスーパースターフォースは、雑誌で開発開始、みたいな記事か広告を社長が見て、大激怒して。
スターフォースはウチの商品。勝手に続編など。勘違いも甚だしい、みたいな感じで。
私同じフロアにいたから、社長と部長の会話聞いてて。もうね。あーあ、と。

なお鶴田道孝さんは、あの『ソロモンの鍵』と『キャプテン翼』の作者ですよ!
普通尊敬するだろ!

つまり事実はテクモに対して何の断りもなく、いきなり86年2月号で『スーパースターフォース』をハドソンが開発中という記事がコロコロコミックに発表される。
それを見た当時のテクモの社長だった柿原さんが激怒して「許可はやらん。ならばうちが作る!」ということになる。
そしてテクモさんが実際に開発に乗り出す。
と、こういう流れだったわけだ。いやはや…これはもう当時のハドソンが全面的に悪いと言わざるを得ない。

『スターフォース』は間違ってもテクモ(テーカンから名前が変わったところだった)の作品であり、どう考えても、先にテクモにちゃんと断っておくべきで「こんなことやったら使えなくなるの当たり前だろ! なんで先に言っておかないんだよ!」と言いたくなるハドソンのやらかしだったわけだ。

なお、ここでは鶴田さんは「広告だったかなんだかを見て」と言っておられるが、まず間違いなく86年2月号のコロコロコミックの記事だったと思われる。
ただ、あとで野沢さんが証言してくれているのだけど、メーカーに内容の確認用のゲラ(印刷になる前に修正のために送られてくる記事)が送られてきて、それを見て怒った可能性もあり、その場合には12月のどこかで怒られた可能性が高い。

というわけで、ゲーム史的な事実は野沢さんが本格的に開発に入った(86年1月)時には『スーパースターフォース』というタイトルはテクモに怒られて使えないことになっており、それで『スターソルジャー』というタイトルになったわけだ。
で、この話を野沢さんに教えて、当時のことをもうちょっと詳しく教えてもらおうとしたら、以下の証言が。

■野沢さん
中やんから「スターフォースは使えないからね」だけ。

中やんは、中本さん。
んで、ちょっと細かく聞くと「使えないからタイトル決めなきゃ」で、その場でタイトル会議がいきなり行われて、野沢さんが出した『スターソルジャー』がその場で通って決まったという、とんでもないお話だった。
以下は野沢さんの推測。

■野沢さん
たぶん、記事出る前にはいってると思うが、記事が入稿済みで怒った!てのがパターンでしょ。
(仮)でも「許さん!」てなるよ。
まあ東京の企画がいい加減なのは伝統でしょうね。**の親父が悪いと思ってるよ。

確かに当時の編集部とゲームメーカーとの関係値を考えれば、ゲラ(校正をするためにテスト印刷されたページの束)の確認がいっていて、85年のうちに「まかりならーん!」となっていた可能性があるなあと思った。

いずれにしても他社のタイトルを何の許可も取らずに雑誌にいきなりタイトル出すとか「怒られて当たり前デスヨネ。使わせないと言われて当たり前ですよね」という以外、全く形容のしようがない話だったわけだ。

ただ、ありていに書くなら、当時のハドソン、こういう話がボロボロあって『ファザナドゥ』の時には、当時のファルコムの加藤社長に「版権取れないんでタイトル変えます」って電話一本しか連絡なかったとか、もうあちこちの会社に失礼しまくっているのである。
まあ本当に急に会社が大きくなったので、そういうところが非常に粗雑な人たちが沢山入っちゃった結果だろうなあ…とか思っちゃうんだけど、にしてもひでえ話である。

ところで、では当時のハドソンがもうちょっと筋が通った会社で、雑誌でブチあげるまえにテクモに許諾を取っていたらどうなっただろうか?

あー。ちゃんと手順を踏んでれば、ハドソンで出せただろうと思います。
柿原さん、義理堅い人だったと思ってますから。

というわけで、もしハドソンが当時、もうちょっとちゃんとしていたら『スターソルジャー』ではなく『スーパースターフォース』だった可能性があった、という話であった。

しかし怒られてしまった結果として『スーパースターフォース』ではなく『スターソルジャー』になり、ハドソンのオリジナルタイトルになったわけだけど、これがちゃんと筋が通っていたら、なんと『スーパースターフォース』になっていて、結果として『コナミ・コーエーテクモ』の版権になっていた可能性があると考えると、これは実は歴史の綾だったのだなあと思うのである。

オシマイ

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5件のコメント

  • 仮題は小学館主導ではなかったのですね。
    ツイートにある営業さんはもしや、スーパーイースの……(汗)

    FaXanadUもカダッシュ型ゲームとしては良くできてるのだから別タイトルとする手はなかったものかとつくづく思います(別の理想郷の名前「アヴァロン」「アルカディア」やエンディングの大木から取って「イグドラシル」など)
    それなら、角も立たずに、かつ、XanadUを期待した人の期待を裏切らないでゲーム自体も評価を落とさずに済んだのに……と。

    • まず営業さんが誰かはわかりません。
      ただ、ハドソンの当時の東京の営業企画(と、こういう表現をされていました)は猛烈に雑なところでした。
      スーパーイースさんと同じぐらい雑な人ばかり…
      なのでザナドゥをそう出来るなら、もうちょっとマシなことにw

  • ハドソンはファミコンの自社のボンバーマンをロードランナー関連作(ロードランナーは海外ゲームの移植)にしちゃったり
    全然ザナドゥと違うファザナドゥ作ってファルコム怒らせたり(違うゲームとしてみたら面白いがザナドゥ移植として売ってんだから文句言われても仕方ないと思う)
    とか今回のスターソルジャーといい ファミコン初期時代の黎明期なのもあると思いますが 版権扱い雑だなと

    ファミコンのボンバーマン海外版ってEDどうしてたんだろ さすがにボンバーマンはロードランナーになりましたは 海の向こうじゃ使えないと思うのだが

    • 当時はハドソンだけじゃなく、他も雑なところが多いんですが、ハドソンはファザナドゥとかウハッってビッグタイトルでやっちゃうんですよね…w

  • そういえば’92に忍者龍剣伝がHuカードで出てますけどよく許諾取れましたね・・・

    あとハドソンの場合、雑というより所謂「バカ枠」な会社&人の集まりって気が(°°;)
    中本氏が凄いのはイースの許諾料1億を即答したことよりもファザナドゥでしたたかやらかした後に臆面なくイースの移植の話をしに行ったトコロだと思います
    しかも針の蓆のような会談にただイースを移植したいだけの純真無垢なプログラマーを同席させるとゆー(笑)

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