『キャッスルクエスト』を巡る一挿話
まず最初に『ハドソン伝説1』に収録した『キャッスルクエスト』についての記述を載せておきたい。
キャッスルクエスト(90/5/18)
トムキャットシステム制作。これまた奇跡の男、長山君が覚えていてくれて、どこの会社が作ったかわかった。
■長山君
キャッスルクエストは、岩崎さんと私で夢中になって遊んだ「メイジェス」ですね。なのでトムキャットシステムの大久保さんです。なぜかキャラがガラッと変わってしまい、残念でした。
大久保良一さんはナムコ出身のゲームクリエイター。『源平討魔伝』、『超絶倫人ベラボーマン』を作ったのち、ナムコを退社して、テンゲンに移籍。その時、企画したのが『キャッスルクエスト』。ただ作られたのはトムキャットシステム設立後。2016年没。
つまり『キャッスルクエスト』は90年に発売された、ハドソン以外が開発したソフトだったというのをまずわかってほしい。
で『ハドソン伝説』の1を書いていた時、以下のような真偽不明のエピソードを、当時のハドソンの偉い人から聞いた。
誰も覚えておらず、真偽不確かな話とか、昭和コソコソ話には収録するんだけど、スゴいのが「キャッスルクエストなんだけど確かそれを作ったのはポケモンの田尻君だったような気がする」って話で、調べたんだけど、全くわからずじまいwしょうがないので棚上げw
(19) 岩崎啓眞@スマホゲーム屋+αさんはTwitterを使っています 「誰も覚えておらず、真偽不確かな話とか、昭和コソコソ話には収録するんだけど、スゴいのが「キャッスルクエストなんだけど確かそれを作ったのはポケモンの田尻君だったような気がする」って話で、調べたんだけど、全くわからずじまいw しょうがないので棚上げw」 / Twitter
実はこれはちょっと不正確なツイートで『キャッスルクエスト』は、1989年にハドソン札幌で『イースⅠ・Ⅱ』を作っていた時、シナリオの修正を手伝ってもらっていた長山君とハマりにハマっていた『メイジェス』で、作者は大久保良一さんだというのは、この当時、すでに知っていた。
そこに当時のハドソンのエラい人が「記憶が不確かなんだが制作に関わっていた記憶がなんとなくあるんだ」と情報をくれたわけだ。
言い換えるなら、例えば『キャッスルクエスト』に名前を変えるのに田尻さんが関わっていたとか、それともアドバイスか何かで関わっていた可能性がある思ったのだけど、困ったことに大久保さんは亡くなっておられるし、ハドソンの他の誰も田尻さんが関わっていたという話を覚えていなかったので、真偽不明の話として最初は『コソコソ話』に収録しようと思っていた。
でも、結局、エラい人の記憶以外全く出てこなかったので『コソコソ話』に収録するのもヤメにしたというのが『ハドソン伝説』の1を出すまでの話。
それから半年ほど経った時、僕のツイートになんとコメントがついた。
はじめまして。
https://twitter.com/macochan_this/status/1415779934920855554
キャッスルクエストの絵を描いた者です。
田尻さんは素晴らしい企画者ですが、このゲームには関係ありません。キャッスルクエストの企画、プログラム担当は大久保良一氏で2016年末に逝去されました。
なんてこったい、ドットを打ったアートの方、長島正登さんの登場で「田尻さんが関わっていた」というエラい人の記憶が間違いなのが分かるのと同時に、トムキャットシステムが出来る前のテンゲン時代の作品だったことも判明。
で『メイジェス』を『キャッスルクエスト』に変更するときに出来た画風でそのあともゲームを作っているというの出てきたのがコレ。
な、なんだってー!
これはアイレムより発売されたPCエンジンの傑作『激写ボーイ』(のPSへの移植版)!!!
長島さんはなんとこのドットを打たれた方で、しかもこの画風は『メイジェス』を『キャッスルクエスト』に変更するときに出来たわけだ。全く二重三重に驚きだ。
みたいなことを書いたら、長島さんからの返事。
ありがとうございます。
https://twitter.com/macochan_this/status/1415862091936714752
私の代表作ですね。
今、思えばキャッスルクエストの時にリアル風を否定され…(最近の業界の風潮なら人を変えてオシマイ)…のところを、大久保氏が親身になって色々書店や美術館をまわったりして、あの画風を編み出す手伝いをして下さいました。一生、忘れません。(´;Д;`)
知られずにおかれるにはあまりにもったいない、このエピソードを残しておきたくて、ブログに書いていいかと聞いたところ、快諾していただきブログに書く時、ハンドル名では書きにくいでしょうということで、当時の名刺の画像をいただいた。
貴重な画像ありがとうございます。
ところで、ハドソン伝説1で長山君が岩崎さんとはまっていたと書いていたけれど、その通りで、確か中本さんから「こんなゲームがあるんだけど評価してくれや」みたいなことを言われて渡されたのが『メイジェス』。『キャッスルクエスト』の開発時の名前だ。
これを長山君やったら、もうこれがメチャクチャに面白くて「これは絶対に出した方がいい」と言ったのだけど、ハドソンのイメージと合わなかったのか、イマイチ売れず、今でも知られているゲームとは言いがたいのが残念だ。あと僕と長山君の二人は『メイジェス』の絵がお気に入りで、ポップな絵になったとき、二人で「なんでこうしちゃうのかなー」ってボヤきまくっていた。
当時、僕と長山君が送ったフィードバックへの大久保さんからの返信。なんと長山君が残していたのである。なんでも残している男で実に頼もしい友達だ。
ここにはテンゲンと書いてあったんだけど、タイミング的にはトムキャットシステムの立ち上げと重なっていて、誰もどっちか覚えていなかったので、トムキャットシステムと書いたわけなのだけど、ここらへんのわからないところをオープンにしていたので、結果的に長島さんより情報をいただけたわけで、よかったと思う次第である。
にしても考えてみたら、これはもう伝説的クリエイターの大久保さんからの直接のフィードバックなので、途方もなく貴重な代物なのではなかろうかと思ったのだった。
というわけで、こんな風に『キャッスルクエスト』の一挿話が残せたわけである。
もうメチャクチャに忙しくて、はっと気がつくと1か月たってしまっているような感じで、この話ももう3週間ぐらい前の話で、聞かせていただいた長島さんに申し訳なかったのだけど、ようやくこうして書けた…
んで、このブログの元になった『キャッスルクエスト』についてちょっとだけ書いたのが下。
ハドソン伝説既刊。BEEPさん・とらのあなさん・メロンブックスさんで委託しています。BEEPさんでは描き下ろしのイラスト+コラムの特典ペーパーがつきます。