スターソルジャー30周年記念(4)

twitterで「スターソルジャー30周年ですね」と言われ「あっ」と思って、せっかくだから30周年を記念して、イロイロ野沢さんに聞いてみたら、まったく聞いたことがない話がいっぱい出てきたので、メモ書きとして残しておくシリーズ。
以下はリンク。

このブログに来る人で、知らない人はいない気がするけれど、お約束的に『スターソルジャー』について書いておく。
『スターソルジャー』はハドソンから1986/6/13にリリースされたファミコン用の縦スクロールシューティングゲームだ。販売本数は約100万本。
第二回の全国キャラバンに使われたソフトで、高橋名人の16連射を印象付けたソフトでもある(第二回の全国キャラバンで人気が爆発することになる)。
また全国キャラバンがわからない人もいるだろうから、簡単に書いておくと、夏休みに全国各地をハドソンのスタッフが巡って、そこで地方大会を行い、最終的に全国チャンピオンを決めるというイベント。1985年に第一回が行われ、『スターソルジャー』は第二回のゲーム作品。
雰囲気などはこのサイトでも読んでほしい。

というわけで、今回はプログラムの続き。

■野沢さん
ついでにデカボスの話。スターフォースよりもでかいの出せと言われた関係で、思いついたのがBGまるごとボス化。これはわりと単純に実装できたが、砲台との微妙な同期ずれにちょっと引いたが、まあなんとかなった。

スプライトでボスを作るとファミコンの場合は横のスプライト制限は8個なので、64ドット以上のサイズの敵はうまく表示できなくなる。もちろん自機も必要なので、自機が1スプライトとして、7つ、さらに自分の弾やらなにやら…と考えると、すぐにスプライトが表示されなくなる。
そこで野沢さんが考え付いたのが「BGそのものをボスにする」という方法だ。
僕が知る限りで、ファミコンでこの技法を使ってボスが表現されたのは『スターソルジャー』が最初だと思う。

もちろんボスがBGに描かれていたというだけなら、有名な『ゼビウス』のアンドア・ジェネシスからしてそうなわけだけど、ポイントは上図のようにしたこと。
つまりスタソルの『ビッグスターブレイン』は背景を真っ黒にしたので、スクロールレジスタを使って動かせて、かつ余ったスプライトで星をBGの後ろに表示していたので、流れる星を背景に世にもバカでかいボスが目の前に現れるという、絶大なインパクトを与えるボスが登場したわけだ。

同期ズレって表現が出てきたのでここで説明しておくと、これはスプライトはいつ表示されて、スクロール位置はいつ更新されるのか? というコトから出てくる問題だ。

例えばスプライトバッファと呼ばれるものが作られて、垂直同期期間中にスプライト転送命令を叩くと、表示期間の間にビデオチップに転送され、その次に処理されるとする。ところがBGはスクロールレジスタに書き込んだ瞬間に即時反映される。だから、BGとスプライトの表示位置は、こういうハードでは上図の上側のように1VSync(つまり16.7ms)遅れることになる。だから、BGの上にスプライトを載せると1ドットズレて表示されるようなことが起こるのでよくないって話だ。
で、これを下側の図のようにしておくと、ズレないというのが基本的な話になる。ちなみにPCエンジンの垂直帰線期間のサンプルのプログラムでは、まさに右図下の書き方でスクロールレジスタの処理が行われている。

■野沢さん
こんな感じかなー、デライラ、ゼグのフラグカウントはわりと難なく実装できたが、エディター上では見づらくて、確認時だけセルキャラ変えてただけ確認する必要があった、まあ当たり前だけど。
隠しキャラはおまけ的に入れたんだけど、動機が小学館の方からのプッシュもあったと記憶している。
レーザーはつい出来心で作ってみた。
スタートの隠しコマンドは自分がチェックしたいので追加した。確か先例があって真似した感じかな?
一番揉めたのが自機の武器かな? まあ、これは自分の意見が通った感じですかね。
■桜田名人
実に入力しにくい無敵技の操作方法は野沢さんがコントローラー2個重ねて、こうやるんだよとレクチャーしてもらいました(^^)
あ、無敵じゃなくてレーザーでした。左上とか2コンの右下とかでw
ところで最初は普通にパワーアップでレーザーでてませんでしたっけ?>野沢さん
■野沢さん
実験時はいろんな機能を入れてデバッグしてたから、沢山のバージョンが存在してた。 あまり外には出さないようにしてたけどね。
レーザー標準にしたかったが、誰かに強すぎとか言われた、で5方向になった記憶がある。
■桜田名人
レーザー標準だと高橋名人の出番が、、、ですねw
でもレーザーの出来がすごくよかったんですよねー。

この話自体に解説はいらないと思うのだけど、どうしてみんながレーザーにこだわっているのか、わかりにくいと思うので、ちょっと書いておく。
この当時「レーザー」はシューティングゲーム界では、まさにブーム…というかシューティングゲームなら積んでるでしょ、的な武器だったのだ。
これを決定づけたのが1985年に登場したコナミの『グラディウス』。
『グラディウス』はゲージ式のパワーアップ・ステージごとに全くイメージが違う・ボス前の演出・オプションなどなど、現代シューティングゲームの基本的な要素が極めて高い完成度で登場した。
その中でもオプションとレーザーは鮮烈なカッコよさで、当時のゲーム制作者に強烈なイメージを与えていて「最強武器と言えばレーザー!」って時代になっていたのだ。
余談になるのだけど、当時、タイトーに在籍し、のちに『ダライアス』を作った長谷川ケンさんも、『ダライアス』で『グラディウス』みたいな弾幕、『グラディウス』みたいなレーザーを出したかったと言っていたのをよく覚えている。それぐらい鮮烈なイメージだったのだ。
また桜田名人は、当時のハドソンに3人いた名人の一人で、もう一人、川田名人という人がいる。
ハドソンの全国キャラバンを東京から北と、東京から南に展開する都合+高橋名人が忙しくなってしまったために、サポートとして名人を増やす必要があったのだ。そして、この桜田名人がハドソンから出たPC88版の『スーパーマリオブラザーズスペシャル』のプログラムとマップデザインをやっていたりする。

■野沢さん
裏面はほぼ山本さんのおかげ、プログラム上ではコースの変更なしに、敵キャラのレベルアップで軌道や玉の特性変えてただけ。
誘導弾作るのに結構面倒だったよ。100%追尾だと必ず当たっちまうしね。

誘導弾をマジメにつくると、弾に生存期間をつけるとか、誘導する時間に制限をつけるとか、誘導のやり方に制限をつけるとか、結構面倒くさいことをしないと当たりすぎてイライラすることになる。

ところで、裏面については、野沢さんの記憶違いで、裏面を作ったのは松浦さんらしい。第2回を参照してほしい。

というわけで、この項目続く。

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1件のコメント

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    ここまで手間暇かけて作ってたんですね。。。
    もし可能であれば、スターソルジャーをMSXに移植した時の話も聞いてみたいです。
    よくできてたと思いますがかなりの無茶をしたのでは・・・

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