「プランナー」ってナニ?
なんだか、最近、日本のゲーム作っている人と話をしてて、よくわからなくなってきたので、海外のスタジオと、そこに勤める人の職能を書いて、少し疑問を投げてみたい。
まずスタジオってのがどういうものかというとゲームを作る場所。
スタジオには2種類あり、ひとつがパブリッシャーの下にあるタイプ、いわば支社とか子会社みたいなもので、例えば、僕が勤めているゲームロフトのオークランドスタジオはそのタイプだ。
もうひとつが、独立スタジオ。簡単に書けばゲームを作る開発専門の会社だ。
具体的には、例えば僕の尊敬するケン・ロルストンが仕事をしているBig Huge Gamesがそうだし、僕が韓国でいた会社や、勤めたこともある会社もそう(ああ、しかしBHGはどうやらチャプター11っぽいが…)。
スタジオの中でゲームを作っている人達はどんな風に分かれているのかというと
・ゲームデザイン
・アート(グラフィック)
・サウンド
・プログラム
・プロデューサー(プロジェクトマネジメント)
の5種類。
これはスタジオのサイズがどんだけでかくなっても変わらない。ウン百人いるスタジオでも、この5つの職以外はほぼいないと思っていい。
(もちろんデカくなるに従って、細かく事務やITといった日本でいう非生産部門は増えていく)
ではそれぞれの役割はなにかというと…
■ゲームデザイン
ゲームデザイン、レベルデザイン、一部スクリプト、データ管理、ダイアログ、ワールドセッティング、UIデザインなどなど、ゲームに関わるもの全てのデザインを司るパート。
ゲームサイズが大きくなると、レベルデザインが「レベルデザイナー」と呼ばれる専門の職種として分離されたり、UIデザインが「UIデザイナー」に分離されたりするけど、それは基本全部デザインの仕事になる。
だからUIの雑なレイアウトや状態遷移などまで含めて、全部ともかくゲームデザイナーの仕事になる。
ちなみにスクリプトの一部はゲームデザイナーの仕事になることがとても多い。
■アート
3D、2D、プリレンダだろうがムービーだろうがともかく絵に関わるものはすべてアート。shaderが出てきたせいでartとテクニカルを結ぶテクニカルアーティストと呼ばれる、場合によってはshaderのプログラムまで書くアーティストが現れているけれど、それでもArtはArtって扱いになってる。
ちなみに日本では「グラフィック/グラフィッカー」とか「デザイナー」と呼ばれることが多い。
これはたぶん「グラフィックデザイナー」からそうなったんだと思ってる。海外との言葉の互換性を考えたとき、少なくとも「ゲームデザイン」と混乱するデザイナーは使うのが止めたほうがいいんじゃないかなと思ったり。
■サウンド
サウンドは昔とは結構違って外注だったり、ライブラリを使うことがすごく増えた。これはPSGだのFM音源だのを使わなくなったからだと思う。
■プログラム
プログラムを書く人。昔から一番変わらないところ。ゲームが複雑化したのでエンジンとかツールとか、いろいろ専門が分かれてるけれど、やってることは変わらない。それはプログラムを書くこと。そしてコンピュータゲームがコンピュータを使う以上、永遠になくならない職種の一つだと思う。
ちなみに僕は、ゲームプログラマには数学的能力もさることながら、アートの才能が必要だと信じてる。ゲームデザイナーという職業が出来て、アートの部分をある程度肩代わりするようになっても、なおかつプログラマにはアートの才能が必要だと思う。
■プロデューサー
韓国ではプロジェクトマネージャーと呼ぶことが多かったのだけど、世界的にはプロデューサーらしい。
要はプロジェクト管理をする人。予算管理・時間管理・人員管理をする。
デザイナーが、脳天気に僕の考えた最強ゲームを作りたい人だとすると、プロデューサーはソレに対して「お前、それだと予算XX、人員XXの発狂サイズになって通るわけねえだろう」と冷静にブレーキをかける役目をする人。
ゲームを作るうえでゲームデザイナーとコンビネーションを組む、プロジェクトを前に進めるための車輪の片方。
と、こんな風に分かれている。
で、ナニに混乱しているのかというと、まず日本には、上の職能にはないプランナーが(たいてい)あり、たいていゲームデザインがない。
(と僕は理解している。もし現在の日本で仕事をしている人で「いや普通はあるよ」というなら教えて欲しい)
この理由は、ゲームの世界では、業務の分岐は日本で先に起こっていて(日本の方が市場サイズが大きくなるのが早かったので組織化するのが早かった)、そしてプロデューサーってのは日本では「金と人の手配をする人」だった。
海外ではこの職種にプロジェクトマネジメントがひっついて、プロデューサー=ゲームを作る上で必要なリソース(金・人・期間・モノ)を管理する人になった(韓国ではお金の調達が分離されているのでプロジェクトマネージャーになっているのだと思う)。
ところが、日本では会社組織の構造が職能と分離しなかったので、プロデューサーってのは決済をする部長だの取締役が割り当てられることになった。そして、ここらへんは「金と人と期間の決済はするけれど、現場を具体的に管理する人」ではない。
また、日本では初期にゲームデザインや外注管理などを担当する企画という職業があり、これはゲームデザインとプロジェクトマネジメントの両方を兼ねることが多かった。なので結果的に、日本ではゲームデザインとプロジェクトマネジメントが分離しないまま「プランナー」になった。
だからプランナーってのは、僕は「ゲームデザインと現場のプロジェクトマネジメントをする職種」と理解していた。
これ自体は、僕はあんまり合理的ではない構造だとは思うのだけど、ともかく歴史的な話だから理解はできる。
ところがだ。
ツイッターなんかで話してると、プランナー=レベルデザイナーだったり、プランナー=スクリプトデザイナーだったりする。
で、さっぱりワケがわからなくなったので、質問。
「プランナー」っていったいどういう職業なの?
2件のコメント
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書籍とご自分の経験から分類された五種はなるほどと思う所と、あー判っていないと点があります。
レベルデザインとプログラムにはふれ、アーキテクトに関しては何も触れていない事や、プログラムの描画エンジン部分が軽く流されて書かれていた事から、恐縮なのですがここ10年現場に居られ事がないのでは?思ってしまいました。
なぜなら現場に居れば優れたゲームにはゲーム性と描画エンジンとアーキテクトは無くてなならないものだからです。
ゲームを遊ばれた解説はすごく良く出来ていますが、現実感がかなり伴っていないように見受けられます。
制作スタイルの違いから来るのかは判りませんが。
ただ長谷川さんが言っておられた言葉が思い出されます。
乱文失礼いたしました。
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アーキテクトねえ…それは僕のやってるスタジオでは「Core code」と呼ばれ、やはりプログラマの中の仕事の一つです。
例えばゲームロフトではcore codeにはゲームロフト全体で標準で使われるライブラリ、例えばGL Liveに繋ぐ部分などを作るチームがあり、これは世界標準用コードを作るチームが受け持つところです。
対して描画エンジンだったりAR処理などは、スタジオそれぞれのcore teamが書くところで、スタジオ独自のノウハウ。まあこれが世界標準に格上げされることもありますが。
書いておくと、あっしの仕事はDirector、それもゲームデザインのDirectorで、プログラムではありませんが、コードについては今でも見ますよ。