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桝田方式によるユーザーストーリーの作り方(5)
桝田方式によるユーザーストーリーの作り方(5)
パート(1)
パート(2)
パート(3)
パート(4)
パート(4.5)

シリーズの続き。
よくわからなくなってるひとは読みなおして欲しい…

属性など成長軸を増やすのはいいけど、扱いづらい。では、もうちょっと都合がいいモノがないのか?
「装備」を作ることで、強さが派手にジャンプするように作ればいい…そしてこれは海外のF2Pでよく使われる"Progression Wall"による課金にも使えるんだよ

つまりユーザーストーリーを組み立てていく上で、パラメータ母数問題と、RPGメカニクスの基本的な問題から成長感が維持しづらい問題を比較的軽減できる強力な武器として装備がある、ということだ。
…というところまでが、前回までの話で、今回からは装備をユーザーストーリーに組み込む方法を解説していくことになる。

ここで装備と簡単に書いているが定義がヌルいので、装備をもう少し厳密に定義しよう。

装備とは「パラメータになんらかの補正を加え、新たなパラメータを与えるもしくは特別な行動を与える機能」

と定義しておこう。どうしてこんなに回りくどい書き方をするかというと、装備の概念は非常に幅が広いからだ。

例えば「防御力アップの魔法」はよく考えれば(一時的な)防御装備だし、攻撃魔法は「一時的に強力な武器を装備している」と考えることが出来る。またアクセサリでHPが増える設定があれば、それも防御の一部になるし、ターンベースのゲームで絶大な破壊力を示すことが多い攻撃回数を増やす魔法だのアクセサリなんてのは「新しいアクションを付け加える」と見なすことが出来る。

つまり、装備とは、アイテムではなく一時的/恒久的にパラメータに補正を加えたり、新たな機能をプレイヤーが得られること、と考えておいたほうが、より柔軟で間違いにくい設計が出来るわけだ。



というところで、装備を作るために、このシリーズで使っていた、以下のゲームを再度引きずり出す。

・ドラクエみたいなRPG(古典的だ)を作っているとする。
・バトルはランダムエンカウンター
・プレイヤーは一人、敵も一体。対面型バトル。
・バトルは平均して10秒。バトル間には50秒。1分に一度戦闘をする。
・レベル50でクリア。
・プレイタイムは37時間。

古典的な設定ではあるが、レベル50でクリアではなく「エンドユーザーになる」形にして、なおかつ、バトル間隔を体力で調整する仕掛けにすれば、実は現在のスマートフォンゲームであろうと全く問題なく使える設定だ。
この設定のゲームのexcelファイルに、遥か遠い昔パート3で書いたパラメータ「強さ」を登場させよう。

そこでまず「強さ」というナゾのパラメータを用意しよう。
このパラメータは現時点ではレベルの10倍にする。つまりレベル1では10,レベル50では500。1レベルごとに10ずつ上がる完全に直線的なパラメータ上昇だ。
加えて、敵には攻撃すると必ず強さぶんのダメージが出て、そして同一レベルの敵は常に3発殴ると抹殺できると設定しよう。すると同一レベルの敵のHP=強さの3倍ということになる。
そして標準的にはゲームは、同じレベルの敵と戦っていくのが適当なバランスとしよう。
とすると初めての街から外にでると、周囲の敵は標準的にはレベル1。
レベル1の敵のHPは30。ちょっと戦闘してレベル2になると2撃で抹殺でき、レベル3まで上がれば1撃で死ぬことになる。
最初は「オッ?」と思ったスライム君がプレイ開始後12分(エクセルのプレイタイムを見よう)ほどで、もう楽勝。
いかにも「レベルあがった!!」と感じるだろう。成長感は満点だ。
問題は、この成長感は機能しなくなることだ。

パート(2)から引用

装備の概念なので、3撃で倒せるでなく倒されるまで何撃なのか? でも成り立つのだが、倒すほうが気分はいいだろう。とすると例えばレベル1の敵のHPは強さ=10の3倍で30ということになる。わかりやすい計算式をさらに付け加え、出来上がった結果がコレだ。



ここで簡単にHPと書いたが、正確には3撃分の「強さ」を与えると敵が倒れるということをルールにしているだけで、これがHPである必要は全くないことは意識していただきたい。

この同じ敵はレベル2になると2撃で…となっていくので基本的な成長感もここでわかるようになるが、それは今回の本題ではないので、次に装備を考えよう。もちろん装備の強さももexcelの「強さ」から計算するわけだが、ここで気をつけて欲しいのはexcelの表は論理的にバランスがとれているということだ。
もちろんプレイしてみたら3はゲームデザイナー的に気持ちのいい数字ではなく、標準値を2.5にするとか、4.3759にするとか、そういう調整をする可能性はあるが、excelの表の上で一貫したバランスがとれているということは非常に大事だ。
言い換えるなら、このexcelの表を壊すような計算式を作ってはいけない
ということで、バランスがとれている(攻撃用)装備をどのように作るか?

答えは簡単。
あるレベルの「強さ」のうちのN%が装備で与えられ、100-N%がソレ以外で与えられる、と決めればいい。
つまりexcelの表で強さ=100とあったとき、そのうちの30%が装備だと決めると、30が装備の強さに、70がパラメータになるということだ。
ここで足し算をして表を作る方法もあるが(100だとすると100+30として扱う)、この方法では例えば複数の装備を作ると計算式が複雑になりやすいし、さらに足し算をした結果で3撃で倒せるようにする(130*3=390になる)、直感的でないことが増えるので、あまりお勧めできない。

では何%にするのか?
このシリーズでは、装備がパラメータの40%を受け持つと決めよう。
もちろん、この数値を決めるのはゲームデザインの専権事項だ。そして例えば80%とすると「装備が全てのゲーム」になり、5%にすれば「レベルが全てのゲーム」と言って、そう間違いではなくなる。

じゃあ、これで完成かというとそうではない。なぜなら一律40%はあまりいただけないからだ。
例えばレベル1で強さの40%が装備に依存ということだと強さ=10のうち、パラメータは6。残りの4が装備になる。ここまではそう大きな問題はない。問題はレベル2になったときだ。レベル2では強さ=20のうち、パラメータは12。残りの8が装備。ここでレベル2の装備に交換しているだろうか? なんとも疑わしい。実際には12+4=16の強さの可能性が高い。ここで敵の想定の強さは20*3=60。60/16=約4撃で、成長感の面から見ると、あまりいただけない。しかも低レベルで装備を取り替えると、5分に一度装備を取り替えるような計算になってしまう。

つまり、低レベルの成長速度が速いうちはパラメータの装備への依存度は低いほうが望ましいわけだ。
というわけで、ここで複雑怪奇なif文を使った計算式を作る。この計算式(I列)は下のような計算式になっている。



1)もし設定レベル上限よりレベルが高ければ装備の強さは強さの40%
(G6とE6は等しい値を入れるのが標準だが、あえて別に出来るようにしてある)
2)もし設定レベル上限よりレベルが低い場合には装備の強さは0%~40%を直線補間する。
(ここで直線補間せずに関数を挟む方法もあるが、パラメータの増加に関数が挟まることが多いし、装備はあとで離散的な値になるので直線補間をオススメしておきたい)

こうしてレベルが低いうちは装備への依存率が低く、レベルが上がるに従って装備への依存度が上がるパラメータ設計が出来る。



では、こうして成長の内のN%を装備が受け持つ構造を作った所で、これがユーザーストーリーの何の役に立つのか、について書いていきたいのだが…もう行数が死ねる状態なので、次回に続く。

■今回の計算が入っているexcelシート→ダウンロード

前回(すごく古い)のシートにはわけのわからない数字がいろいろ入っているが、整理して話はこっちをベースに続ける予定である。

ところでなんだけど、この新しいシリーズを全部入れて『F2Pの最初の3分間の前と後』とか、そんなタイトルにして本を作る予定。
なので、このシリーズ、あと1~2回で完結する予定なんだけど、ウェブ版ではなく、先に本が出来てしまうかも(;´Д`)
前回の『F2Pの最初の3分間』があまりに中途半端な本になったので、今回は決定版にしたいと思っているのである。
(どうせ1年経ったら「ふ、古い! この思想は古すぎる!」とか叫びたくなるんだろうが)
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