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1989年8月 - どうせ銀の装備なしには勝てんのだ
前回はコレ
過去記事の集合体はコレ
この話は1988-89年頃、PCエンジン版のイースを作るとき、僕が経験した話を出来るだけ正確に記録に残すつもりで書いている。ただし、これは
1)21年前の話で、記憶違いの可能性は十分にある。
2)僕が体験したり思ったりしたことを書くようにしているが、伝聞情報(二次情報程度)もある。
だから、当時の正確な記録ではない可能性はあるのは理解して欲しい。

■■■

続くと前項で書いたけど、別に続けなくてイイヤと思ったので、やんぺ。

豪華声優と言われるイース1・2だが、決め方は簡単だった。
当時も、そして今もそうだが、僕はさっぱり声優さんとかわからない。また、アニメはいっぱい見るが「声」で覚えることはさっぱり出来ない。だから声優さんを選んでくれといわれると「あの作品のXXをやっていた人」という表現しか出来ない。
実は映画でもたいていそうでストーリーや場面は一度見たら30年経っても、セリフまでいえるぐらいだが「役者(の本名)および役名」は即忘れしてしまうことがほとんど。例えば「マスク」のジム・キャリーは一発で覚えたが、相手役の女の子が美人なのは覚えていたが、まさかそれがキャメロン・ディアスだったとか、そういうのが全然ダメ。「すげえ美人の金髪の女の子」としか言えない。

そんな余談はともかくとして、声優をまるで知らない人間が、声優さんをどんな風に決めたかと言うと、都合がいいことに、当時ハドソンの入っていたビルの1Fに大きなレンタルビデオがあった。そこでともかくアニメビデオを借りまくって、スタッフみんなで見まくってこれが良さそうという面子をかき集めたのだ。
【注】 そのレンタルビデオ屋のあった場所をストリートビューでチェックしたらドコモショップになっていた。Hahi君とやたらほっけ定食を食った定食屋もなくなっていた。諸行無常だ。

それでハドソン東京にリストを出したら、声優さんの所属プロダクションが複数あって調整が取れないから、青二プロダクションに一本化してくれ、と言われ、青二プロダクションの声優カタログがやってきた。
そこで「これが良さそう」と選んだメンツから、青二プロダクションに所属している人はそのまま決まりで、足りなくなった人を、またみんなでCD聞き倒して選んだだけだ。
【注】 声優カタログとは声優さんの顔写真や、やってきた仕事が収録され、一緒にCDが付属していて、ひたすら声優さんの自己紹介+演技(2分程度ある)が入っているという代物。今なら電子化されているのかも知れないが、当時はカタログがプロダクションからやってきた。青二プロダクションに統一してくれと言われた理由は不明。当時、ハドソンは東映と距離が近かったのかと思ったら、高橋名人の映画は東宝だし、Bugってハニーは東京ムービー新社。なんで青二プロダクションだったんだろう…



あとから声優を知っているヤツに「豪華声優だ」といわれただけで、僕らスタッフは当時そんなことを知りはしなかった。(ただし、進藤は一応それなりに豪華だとはわかっていたらしい)
声優さんはクラスがあって値段が違うということすら知らず「この人がいい~」というだけの理由で集めてしまったのだから、音声の入ったゲームの黎明期だったんだなあと思う。
自分にとってはオープニングの絵コンテで声優さんの名前をだすことになっていたので(最初は「声優」としか書いていなかった)名前に第二水準が入っている人がいたら漢字フォントをタイトルで出すときアーティストにドットを起こしてもらわないといけないので注意しないとなあ…と思っていた程度だ。
【注】 PCエンジンCDROMでは、16x16ドットと12x12ドットの2種類の漢字フォントがシステムカードに収録されていて漢字仮名交じり文を標準で扱うことが出来たが、どちらも第一水準約3000文字しか収録されていなかった。そして名前、特に芸名などはかなり第二水準(あまり使われないことになっている漢字)が良くあった。
全くの余談だが、自分の名前、岩崎啓眞のうち『眞』は第二水準でPCエンジンCDROMではフォントを作らなければ表記できない。でも自分の名前程度にフォントを作るのは面倒だったので、全部『啓真』で統一している。

録音は東京のスタジオで行った。僕も録音に立ち会った。
イースは喋る時間が短いこともあり、録音は1日で終わっている。集めた声優さんがとても上手い方ばかりだったので、せいぜい4テイクも取れば終わってしまう楽さ加減で、あっというまだった。
終わった方からサクサク帰ってもらったのだが、今から考えれば、山根に色紙にイラストでも書かせておいてサインをメディアの分とかもらっておけば、プレゼントに出来たのにと、後悔することしきりだ。

さて、声優さんにしゃべってもらうセリフは、オープニングのナレーションを除いて、原作のテキストがあるが、結構表現を修正した。修正した理由は簡単で、話し言葉と喋り言葉は似て非なるものだから、普通の小説などの会話文をそのまま喋ってもらうと、たいてい不自然になる…ということを最初に所属していた会社でCD-Iの仕事をしていたとき(プロの脚本家に)教えてもらっていたから。
そして、セリフを書くときのコツを簡単に教えてもらっていたので、そのまま実践しただけだ。
やり方は簡単で「自分でしゃべる」。録音して聞く。これを繰り返すだけ。
話し言葉と書き言葉は違うから、最初のうちはともかく声に出すことだ、と教えてもらっていたのだけど、自分の声を聞くという不愉快さはともかくとして、きわめて有効だった。これがなかったら、オープニングの長さの調整とか大変だったと思う。

と、実はここまでが前フリ。

セリフの修正の大半は、言葉の入れ替えだったり、微妙な修正だったりで、ほとんどのユーザーはまるで気がつかないものだったわけだけど、たった一つ、どこの誰でもわかる大修正を加えたセリフがある。
それがタイトルでも使っている「どうせ銀の装備なしには勝てんのだ」
このセリフは、ダームの塔の最上階で、イース1のラスボスに当たるダルク・ファクトが喋るセリフだ。
どうしてこんなセリフを喋るのかというと、イース1では最強装備は「バトルシリーズ」だが、ファクトを倒すためにはシルバーシリーズを装備しなければならないトリッキーな謎が用意されており、人にプレイさせているのを見ていると、結構分からないで詰まる人が多かったので入れたセリフだ。

ボスがネタバレをするのはどうなんだ、と当時もいわれたし、今でも言う人がいるので、ここらへんでゲーム論的な話を語ろう。
実は、これは全く同じことを、デバッグに入った当時、ハドソンの若き俊英の一人だった杉本悟に質問されて、僕が答えた会話がそのまま答えになっている。
ちなみに杉本は、PC版のイースをプレイしたことがなかったので、デバッガとしてもとても役にたったわけだけど、こんな会話だった。

「杉本、お前は最初に最上階に行った時、どうした?」
「嬉しくてすぐにファクトの前行きましたよ」
「で、銀の装備つけてた?」
「つけてませんでした。バトル装備でした」
「まあ当たり前だよなあ。バトルのが強いもんな。それで、銀の装備なしでは…って言われたんだろ? どうだった?」
「うわー俺、バカって思いました。言われたのに!って」
「負けるよなあ」
「負けました」
「そこでね、君の操るアドルの人生は終わってるの。本来ならさ『俺、バカーッ!』って言いながら、アドルは死んでいったんだよ。終わってるの
「ゲームオーバーってのは、君のアドルにとっての話で、本当はイースの世界は、それが現実だとしたら続いているはずなんだよ。で、ダルク・ファクトが邪魔者はいなくなった、俺が世界の支配者だ! とかいって、ウハウハしているはずなんだよ。コンティニューしたアドルはさ、それはキャラクタに人生があるとしたら、平行世界のアドルなのさ」
「それにさ、2回目は間抜けなヤツめ!と思えるから、優越感あるだろ?」
「あーはい」

もちろん、この通りの会話をしたわけではないが、これがゲーム論的な答えだ。
RPGの原理的な構造から考えれば、アドルが死んだ瞬間、そのイースの世界でのアドルの人生は終わっている。だからネタバレをしても構わない。それを聞いて「今度は銀の装備をつけよう」と思っているプレイヤーは神の立場に立っている、その世界の住人ではないモノというわけだ。

ところで、本来なら音声トラックを2トラック用意して「ど、どうして銀の装備を!」と「どうせ…」の2種類を用意するべきだったが、今までのこのシリーズをお読みのみなさんなら、わかっているだろうが、もちろんCD音源はメインメモリと並んで重要な資源だったので、残念ながら2つのトラックを用意するのは無理だった。
なんとも無念なことである。
|| 00:41 | comments (8) | trackback (0) | ||

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コメント
>> KKMM 様

黙ってスタッフにやらせたら、かなりの確率で、謎が解けないんですよね。

本来、ゲーム的な話をするなら、ダームの塔の中でそれを解決したかったのですが、なんせダームの塔の中にはドギ・ジジイ・レア・ルタジェンマしかいない始末で、しかもみんな遥か階下で、結構辛いと。

だったらファクトにネタバレさせようと。
言われた瞬間に「俺のバカーッ!」と思う人間の方が絶対に多いと確信していたので、ああ作りました。

ちなみにデバッグのとき見てたら、ほとんどの人間は「俺、バカーッ」でした(笑)
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/06/27 13:37 | 2OXmdoFs |
思わず、昔、イースをプレイしたときのことを思い出しました。
私は、PC9801版しかプレイしたことはないので、声のことも、セリフのことも知りませんでした。

ダルク・ファクトとの戦い。
何度やっても、敗北。
知り合いに、「バトルシリーズ」を装備した状態でダルク・ファクトを倒した奴がいたので、装備が間違っているなんて思いもしませんでした。
攻略本を見て、初めて銀の武器でなければ勝てないことを知りました。

PCエンジン版のイースに、そんな配慮があったことを初めて知りました。
貴重なお話、ありがとうございました。
| KKMM | EMAIL | URL | 10/06/27 07:47 | jHufx13E |
>> Konbcan 様

アニメには全く関わっていません。
またアニメの声優さんを僕らがチェックしたこともないので、少なくとも僕らは影響を受けていません。

アニメ側がPCエンジン版の声優選定やシナリオの影響を受けている可能性はゼロではないとは思いますが、聞いたことはないので、真相は藪の中です。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/06/26 12:59 | 2OXmdoFs |
「どうせ銀の装備なしでは私には勝てんのだ」は、オリジナル版からの変更点として今でも語り草となってる台詞ですからねぇ。
ずっと気になってましたので、貴重なお話をありがとうございます。
そういえば、OVAのイースも同時期の製作だったと思いますが、何かしら関わりはお持ちだったんでしょうか。
ストーリーの変更点や声優について共通点が結構ありますけど、アニメのスタッフがPCエンジン版の影響を受けただけなんでしょうか。
| Konbcan | EMAIL | URL | 10/06/25 23:07 | T0o4ZKrk |
PCエンジンCDROMの時代の内蔵音源のADPCMは、残念なことに、非常に原始的で、今のMP3やATRACといったものと比較して、圧倒的に性能が悪く、古い電話程度の能力しかありません。

またシャーというノイズは、そのADPCMにデータを作り直すとき原理的に出来てしまうノイズの一つで、このノイズをうまく抑える方法が分かったのは、天外2前後、ノウハウが出来てからで残念ながらイースの時にはわからなかったわけです。

つまり、どうしようもないってことです。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/06/25 21:53 | 2OXmdoFs |
声優さんの台詞、CD音源は立派ですが内蔵音源だと貧弱に聞こえます。なんかシャーっていうノイズが入り、声が小さくて聞き取りにくいんです。特にルタ・ジェンマの声がボソボソで何を言ってるのか良く分かりません。
もう少しクリアな音声にできなかったのでしょうか?
| take | EMAIL | URL | 10/06/25 20:17 | uf.ijuPI |
天外1とコブラ(原作者の寺沢さんの意向で、野沢さんではなく、山田康雄さんがコブラの声をやっている)で大量に録音とかしてて、そこらへんの値段と比べると相対的にイースが安かったから、なんも文句言われなかったのかなあ、とか思ってますw

ちなみにゲーム論の部分は結構深いです。ゲームは学習ですからトライ&エラーが当たり前のシステムですが、それが「物語」と結びついたとき、より複雑な立場になります。
そこを映画的に突いた「バタフライエフェクト1」なんかは、ものすごく面白かったですね。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/06/25 13:49 | 2OXmdoFs |
あれほど豪華な声優さんを出演料に関係なくキャスティングできたというのは、仰るように音声入りゲームの黎明期であったということと同時に、当時のハドソンのこの作品への期待の大きさや会社に勢いがあったこともよく分かるエピソードですね。

それと、ダルク・ファクトのあのセリフに対するゲーム論的な答えを拝読して、映画や小説には無いゲーム特有の二面性のようなものについて考えると深みにハマりそうになりました(笑)。

前回の「バランスの取り方」のお話でTRPGが出てきましたが、TRPGではゲームマスターが神でプレイヤーはGMの手のひらの上で転がされる立場ですが、TRPGはCRPGと違ってゲームマスターが臨機応変にある程度調整しながらゲームを進行させることができますよね。それでも場合によってPCが息絶えてしまうと蘇生を試みたりしても失敗...みたいな展開だとそのPCは終了、コンティニューもないことを考えるとTRPGはプレイヤー自身がその世界の住人となれるゲームといえますよね(この場合はGMの腕に問題あり?(笑))。
| はちすけ | EMAIL | URL | 10/06/25 06:06 | mOba9e0I |
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