『ジャッジアイズ』が「ちょ、まてよ」なぐらい面白かったよ

制作の人たちに向けたラブレター、みたいなものだと思って読んで欲しい。
正月、“JUDGE EYES:死神の遺言”、いわゆる『キムタクが如く』というやつを遊んでいた。

好みの問題はあるというのは前提にして、龍が如くシリーズの中では会心の出来というのが、僕の評価だ(同じ開発チームで、ゲームの構造が同じなのでシリーズ扱いさせていただいている)。

なぜそう思ったのか?
もちろん単純にゲームとして面白い

まずなによりメインストーリーがとても面白い
最初のうちは提示される情報が非常に断片的で、わりと漫然とプレイしていたのだけど、6章あたりから提示された断片が繋がりだして事件の骨格が見えてきてからは興味がどんどんひかれて、9章からあとはやりこみ要素の事なんか忘れて、一気にメインストーリーを追ってしまう面白さだった(実際10-13章は一気にやってしまった)。

最後の方で「ちょ、これホラーゲーム」となるところとか、あと「ちょ、こんなに早くは…無理あるっしょ」ってところはあるけれど(ネタバレはしたくないので曖昧にしか書かない)、それはまあ映像で見せないとダメなので仕方ないと思うし、シナリオの仕掛けや伏線が見事に回収されていくサマはたまらなく気持ちよく、クライマックスでの悪役が笑う所とか、オチまで含めてほぼ文句なく楽しませてもらったのは間違いない。

ぶっちゃけ、個人的には2が出たら必ず買うレベルの面白さだった。

ゲーム全般をみると、どうしても『龍が如く』のシリーズの一つなので、外しにくい様々な要素が逆に足かせになっているところがあるとか、UIがシリーズの伝統を引っ張っていて、今の最新の流行からすると少々古臭い所があるとか、ミニマップがビルの中に入るとやったらわかりにくくなるとか、あとキムタクさん主演なもので、水商売系とカラオケ系がほぼなくなってしまったのは残念だとか、いろいろ細かい問題点はある。
でもドローンレースとかVRスゴロクとか、新しい遊びも面白いし、神室町は遊ぶことが山盛り満載でたくさんあって、やっぱりとても楽しいと思う(カムロオブザデッドも楽しい)。
プレイしていてバトルが少々ウザい瞬間はあるし(特に後半の固い敵はかなり面倒くさい)、ウリの致命傷システムはゲームデザイナーが期待したように効果的に働いていたとは思わないのだけど、それでも、うまくなってくるとやたらめったらカッコイイ技を繰り出す八神ことキムタクを操作していて気持いいのは間違いないし、そのバトルからムービー繋がって、さらにやたらとかっこいいバトルを見せてくれるのは、快感以外の何物でもなかった。
たまに(毎回ではないのが困ったものなのだ)ボスでQTEが入ってくるのは、なんとも微妙で入れなくてもよかったんじゃないのかなあ…と思ったのだけど、ここらへんはシリーズの伝統ってことでオチャメに見ておいてあげたい。

致命傷は、相手がオーラをまとった状態で、かつ腕なりなんなりが光っている状態で攻撃してくると、自分の最大HPそのものが下げられ、かつ特別なアイテムでなければ最大値を復活できないシステム。
パッと聞くと結構いい案のような気がするけれど、致命傷の攻撃(MAと呼ばれる)が来る状態になると、相手の攻撃を喰らわないように走り回るとか三角飛びしまくってやりすごすか、それともそれようにためておいたゲージを使って大ダメージを与えて(道具を使ってダウンさせるのが一番安全)、動きを止めるかの選択になってしまって、むしろバトルの幅を狭めてしまう結果になっている。あと銃撃が致命傷とか結構理不尽な瞬間があるのも問題。次回作ではこれはもうちょっとマシなメカニクスを考えた方がいいと思う

要は『ジャッジアイズ』は細かい瑕疵はあれど、とても面白かったのだ。
だから「いやあ、楽しかったすよ」で終わりでもいいのだけど、実は感心した理由は、ゲームが面白いだけじゃない。
フルタイムでゲームを作っている人間の目から見ると『ジャッジアイズ』は、龍が如くシリーズの反省を踏まえてシリーズとして無理なく続けられる作品をブートしつつ、新しいファン層を入れる狙いをもちつつ、今までのファンにも配慮しなければならない非常に難しいゲームだ。
ところが『ジャッジアイズ』はその狙いをほぼ満たした作品で、作り手として感心してしまう点がとても多かったのだ。

ここで『龍が如く』の第一作の話をすると、続編のことなんてほっとんど考えていなかったと思う。
そりゃそうだ。
売れるかどうかもわからないヤクザものなんてとんでもない新規IPで勝負かけてるんだから、当たり前だ。
だから1で桐生一馬の話としては、ほぼ完全に伏線を使い切ってキレいに終わっている。オチまで含めて見事なものだ。
これが大ヒットしてもちろん2が作られるわけだけど、個人的な推測だけど2でシリーズは終わらせるつもりだったかはともかく、ともかく次のことは考えていなかったと思う。

なんせ西と東の抗争で、同じクラスの強さを持つ伝説の龍が登場しと、もうヤクザものの鉄板ネタ満載で、登場人物からナニから何もかも使いつくして桐生一馬は沖縄に隠遁。

そりゃあまあ次は考えてないよねと思うけれど、成功した人気があるIPを終わらせることなんて許されない。続編は使命なのだ。

というわけで、外伝はともかくとして3が出ることになるけれど、さてシナリオはというと沖縄から引っ張り出すために一苦労。だいたい1と2で使いやすい登場人物は撃たれて死んでたり、それともダイナマイトで爆発してたりで結構減っている。いろいろスタートが大変だ。
しかも1も2もヤクザ世界全体が揺るぐような大きなストーリーだったので同じクラスのネタが必要だ。そこでも四苦八苦。
ついでに書けば伝説の龍が神室町に戻ってきても、みんな知らない状態だし、ぶっちゃけ「エー」の嵐。
よほど辛かったのか、4ではマルチの主人公になるけれどストーリーはかなりメロメロ。そして5・6となると…まあいろいろツラすぎる。

だから3以降を眺めると「もうちょっとなんとかならなかったのか?」と言いたくはなるけれど、反面そうなるのも仕方ないとも思う(なお『0』は例外)。
なぜなら1と2で使いつくした素材に無理やりいろいろ足して、話を続けているのだ、そりゃあツラい。
つまり龍が如くシリーズは、桐生一馬という希代の人気キャラを生み出したのはいいけれど、シリーズの最初でいろいろ使い切ってしまってイロイロ辛かったということだ。
おまけに、本人が基本ヤクザなので組織の内部に絡む話をやらざるを得ない。ところがシリーズの前の作品では必ず問題を解決しているので、シリーズが進むごとに、かなり無理なトラブルを起こすることになるし、ヤクザ絡みだと人死にが起こるので、使いやすい登場人物がガンガン死ぬ。
要はシリーズを作る側に立つと「これでシリーズやるの厳しいっすよ」ってことだ。

この苦しさを経て『ジャッジアイズ』に話は戻る。
まずシリーズファンのために舞台は神室町。組織などは『龍が如く』から引っ張ってくる…が、世界観は並列(でないと成り立たないところが多い)。いわばDCやマーベルの並列宇宙型だ。
ところで「神室町は飽きた」という主張がプロのレビューにまで見られるし、作り手側だって、きっと「また神室町?」って言われるだろうと思いながら作っていたと思う。
でも、ここで「では神室町ではなければ、どこを舞台にするんですか?」と考えてみれば、神室町以外が難しいのはわかる。
なんせベースとなっている新宿の歌舞伎町は日本有数の歓楽街だ。しかもそこに訪れる人の年齢層、社会的地位の幅も広く、ホームレスから超金持ちまで、中学生あたりから老人まで、ゴールデン街から最新のシネコンまで、ホテル街から居酒屋からピンク街から、ともかくなんでもありだ。
これと比べれば、渋谷・銀座あたりは、それだけで話の幅が狭くなると容易に想像できる。
あえて書くなら、池袋や六本木あたりなら結構似た環境を作れると思うが(クラブセガもあるしw)、ゴールデン街あたりが厳しい。
もちろんどこであろうと、作品として成り立たせることはできるだろうが、そうまでして過去の資産を捨てる価値があるのか? と質問すると、その答えは明らかだろう。
だから作り手として、舞台は神室町は正しいと思う。
で、主人公はヤクザと関係しているけれど、刑事事件で無罪を獲ったことがある元弁護士の私立探偵で、しかもキムタク。なおかつ横にはやっぱり荒事が得意なヤクザ系を配置。
かなりモリモリのフックだらけの設定なのだけど、この私立探偵にしたのがスゴくイケている。
なんせ私立探偵。
サブシナリオで下着泥棒だろうが、素行調査だろうが、なんでもありなのだ(実際なんでもあり)。
しかも事務所に人が来る・ほかの事務所で受ける・知り合いのバーに相談しに来るというぐあいに、わかりやすい窓口を作ることが出来る。『龍が如く』はどうしてもサブシナリオが街をブラブラしていると始まるお話になっていたので、いろいろ辛かったのだけど、ここらへんが実に簡単に解決できる。
しかも探偵モノは探偵事務所なり、もしくは八神が昔勤めていた源田法律事務所なりに依頼人がやってくれば、ドラマをスタートすることが出来る。
そして「最初はなんてことはない浮気調査だと思っていたら、調べていくうちに政財界を揺るがす大陰謀に巻き込まれていく…」という風に話を持って行けばいい。
この構造なら八神が有名な探偵になっていてももちろんまったく問題はないし(有名になっていることを利用した話だって作れる)、基本的には「依頼人と八神のドラマ」として構成することが出来るので、ドラマの幅も広い。
シャーロックホームズやポワロ、それとも弁護士にして探偵みたいな活動をやるので有名なペリイ・メイスンなどを見ればわかるとおり、とてもシリーズに向いた構造だ。

加えて書くと『龍が如く』ではシナリオのクライマックスがほぼヤクザバトルになってしまいパターン化してしまう問題点があったけれど、弁護士にして探偵なので法廷・バトル・犯人捜しなど、ドラマのクライマックスそのものもバリエーションが豊かだし、実際第一作でも舞台のバリエーションにあふれている。
つまり『ジャッジアイズ』はシリーズとして続編をムリなく作ることが出来て、なおかつバリエーションが広く(言い換えると飽きにくい)、しかも面白い作品を作りやすい構造を作ることに成功したうえに、新しいプレイヤーを引き込むためにフックとしてキムタクを用意し、なおかつ旧来の要素もキッチリといれて、シリーズファンにも目配りしているのだから、全く見事な作品だと思うのだ。

『ジャッジアイズ』、第二作があると信じて、続編を楽しみにしています。

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