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1989年5月 - 米光さんのアレンジと出会う
前回はコレ
過去記事の集合体はコレ
この話は1988-89年頃、PCエンジン版のイースを作るとき、僕が経験した話を出来るだけ正確に記録に残すつもりで書いている。ただし、これは
1)21年前の話で、記憶違いの可能性は十分にある。
2)僕が体験したり思ったりしたことを書くようにしているが、伝聞情報(二次情報程度)もある。
だから、当時の正確な記録ではない可能性はあるのは理解して欲しい。

■■■

5月のデモに向けて、チームではオープニングを作っていた。4月の半ばぐらいにはオープニングのコンテは上がっていたのだが、山根がなかなか北海道に来なくて、最初のうちは作業が進みにくかったが、いったんくると作業ははかどるようになっていた。

山根はコンテを書けるし、容量を計算出来るし、自分でドット打てるし、プログラムのこともちゃんとわかっていて、まさに期待通りの仕事が出来た。


ただ、問題は必ず期待できる圧縮率の最大値を計算してくるうえに、技術がわかっているせいで「こうすりゃ縮むじゃないですか、ゴー」とかケチをつけてくることだった。おかげで色数に4/8/16色をサポートするハメになり、めんどくさいプログラムが大量に実装されるハメになり、それでもメモリの減りっぷりから、いずれさらにツールとか実装しないときつい…と想像できる事態になりつつあった。

このメモリとの戦いは、最後には基本管理プログラムを2キロバイト以下に圧縮し、プログラムの自己書き換え(自分で自分を書き換えるプログラム)が当たり前になり「1バイトは血の一滴」と本気で言い、HaHi君の名言中の名言「岩崎さん、イースは慢性メモリ不足だよ」が発せられるところまで行くのだが、5月の段階では、メモリがきつそうだとオボロゲに想像できた、という程度だった。
(ちなみに当時はPCエンジンはCDROMにメインメディアが移行するなど想像もしておらず、HaHi君は最初のうちは「PSG版のROM版イース」を作ることを想定して仕事をしていたらしい)

で、営業のZからのお達しでショーに出す予定のデモは急速に完成しつつあったが、問題は音楽だった。
当たり前だが、デモとして出すからには、それなりの音は鳴って欲しい。
それにハドソンの音楽のトップ、笹川さんからも「岩崎君、音楽のアレンジャー誰にするのよ、結構曲数あるから大変だよ」と脅されていた。
でも、このシリーズの最初の方で書いたとおり、公式アレンジャーのイメージに最も近かった難波さんはどうにもイースに合わないと思っていたので、いやだった。

とはいっても、他にあてがあるわけでもなく、しばらくオリジナル音源を収録するという手を真剣に考えていた。これなら熱狂的なイースのファンは絶対に文句を言わないだろうことは容易に想像がついた。だけど、やってはいけないと最終的に考えた。
なぜなら、ゲームを買ってくれる人は数万円のCDROMドライブを購入した人だ。そして音楽CDと同じクオリティの音が鳴るのを期待しているに決まっている。
しかも当たり前のことながらPC版イースをプレイしている人はほとんどいないに決まっている。イース初体験の数万円を投資したCDROMで音楽を期待しているユーザーに「オリジナルはFM音源ですから、オリジナルと同じFM音源を録音しました」といったら「おお! それは素晴らしい」と言って、満足してくれるだろうか? 満足してくれるわけがない
それにオリジナルのFM音源を使うということは、せっかくのCDROMの最強武器の一つCD音源の実質的な封印になってしまう。だからオリジナル音源はダメだと思った。

妥協案としてずっと考えていたのがプラスミックスだった。
これはオリジナルのFM音源に音を厚くするようにミキシングする方法で「オリジナル音源が最高だ」という声に押されて、難波さんが編み出した方法だが、発売されたCDを聞いて、正直ガッカリした。しょせんはパソコンのFM音源。どれだけ調整しても、周囲の楽器の音と比べると安っぽくて、浮いて聞こえてしまうのだ。
だが反面、オリジナルのよさが一番残りつつ、なんとかCD音源といえる音になっていたので、米光さんの音に出会わなかったら、これを使った可能性はかなり高かったと思う。

この悩みの全てを解決したのがデモに音が必要って理由で、フィーナのアレンジ版でも流し込んでおこう+曲が出来るまで入れておくための仮の曲用のサントラとして購入したキングレコードの"Music From Ys"だった。
どうしてこれを購入していなかったのかというと、音楽に悩んでいた当の僕自身がオリジナルの音楽最高主義者で「アレンジ版を聞くぐらいなら、オリジナル聞くわ!」という人間だったからだ(笑)
じゃあ、そんな人間がどうしてデモにアレンジ版でも流し込もうと思ったのかというと、当然の事ながらデモは商談に来る人たちに見せるものだ。商談に来る人たちはオヂサンであり、FM音源のよさなどわかるわけもなく、音が派手なほうがハッタリが効くに決まっていた。だからアレンジ版でも入れておこうぐらいのつもりだったわけ。
(そしてオリジナルの音源が全部入っているので、ゲームのCD音源の代用品を果たす目論見もあった。実際、Music From YsとMusic From Ys2からダビングした音源をかなり長期間にわたって使っていた(笑))

そんな軽い気持ちで購入した"Music From Ys"を聞いて、僕は衝撃を受けた。
"MUSIC FROM YS"に収録されていたアレンジ"FEENA"、"FIRST STEP TWORDS WARS","BEAT OF THE TERROR"、"SEE YOU AGAIN"、どれもこれもぶっ飛ぶ圧倒的な完成度のアレンジだった。
正直、生まれてほとんど初めて、ゲーム音楽でオリジナルよりアレンジ版の方がいいと本気で思った(それ以前にも数曲はあったが、PSG時代の元の音源が極めて貧弱な曲だった)。しかも、カッコよさに感動した、あのイースの曲でアレンジ版がいいと思えたのだ。
もうこの人しかない、そう思ってすぐに裏面を見て、笹川さんに「このアレンジャーの人がいいんですが」といって"Ryo Yonemitsu"と書いてあったアレンジャーの名前を挙げ、即、笹川さんに"Music From Ys"を渡した。
笹川さんも「難波さんよりイースに合っていると思う」という意見で、コンタクトを取ってくれた。すぐにオッケーが出てイースのアレンジャーは米光さんに決まった。

残念ながら、僕自身は直接米光さんと会ったことは一度もない。
一度ぐらいは会ってありがとうございました、と21年経った今でも言いたいと思っているぐらい素晴らしいアレンジともらえたと思っているが、それはともかく、笹川さんの話ではぶっ飛んだアレンジからは想像もつかない、人のよさそうなオジサンだったらしい。

アレンジャーが米光さんに決まったのは良かったが、曲数の問題は解決できていなかった。1曲2分としても全曲入れると、60分を超えてしまう。そしてCDROMの規格"Yellow Book"はデータ領域は60分までと決められていて、何が何でもその中に入れなければいけなかった。
泣く泣く、まず大好きだったイース2のボスの曲を切った(正直な話、イース2のボスの曲のほうが好きだったので、イース2のボスの曲を使おうかと真剣に考えた)。次になくてもいい"Morning Glow"を諦め、街の曲はPSGにすることにした(もともとショップの曲はPSGの予定だった)。
これで、ようやく60分前後の計算になった。
だがこれでは声が入らない。要所要所でフィーナやらレアに喋ってもらうつもりなのに声に割り当てる時間がどこにもない。曲の2分は最低必要だと考えていたので、もう削れない。ADPCMという手はあったが、PCエンジンに載せられていた初歩的なADPCMはモノラルで、今のMP3やAACといったコーデックから想像するADPCMとは比較にならない音で、出来るだけ使いたくなかった。
それにダームの曲("Termination")はリピートさせたくなかったので、5分は欲しかった。そう考えると、どうしても70分以上のCDを作りたいのに規格では60分まで…

そこで気がついたのがYellow Book(CDROMの規格)の盲点だった。
Red Book(音楽CDの規格)によればCDは74分まで音を入れられる。そしてYellow Bookにはデータ領域は60分までと書いてあるだけで、60-74分にCDDAを入れてはいけないとは書いていない。つまり60-74分に曲をいれてもCDROMの規格は満たしている!
これだと思ったが、さすがに74分は怖かったので(CDは長くなるに従ってトラック間が縮まるので、プレイヤーのトラッキング精度が必要になると同時に、マスタリング精度も必要になる)、自分の持っている音楽CDで一番長いものまで録音して構わないことにした。
当時もっていた音楽CDフランキーゴーズトゥハリウッドの"Welcome To The Pleasuredome"が72分で最も長かったので、72分で計算すると、なんと喋りの分を考えても、イース2のボスの曲まで入る!
喜び勇んで、総計72分のリストを笹川さんに渡したら、しばらくして、笹川さんから70分以下にしてくれと内線がやってきた。
当時のマスタリングの技術では70分以上の量産が保証出来ないとNECから脅されたという(正確には65分だったが、ゴネたらNEC側が70分まで折れてくれた)。

あと2分ありゃーイース2のボスの曲が入るはずだったんだよなー…畜生。

そんなわけで、イースは(当時の)CDROMとしては「イエローブックの規定にある60分の領域にROMのデータは入っているでしょ、だからCDROMって名乗っていいよね」という危なさのあるソフトだった。しかも当時CD-Rは60分以上がなくデバッグのたびにマスター出していたんだから、世にもひどいことをしたもんだと思うが、反省はしない。

もし21年前に戻れたら、もうちょっとゴネて72分まで延ばして今度こそイース2のボスの曲も入れるつもりだそんときはよろしくお願いします、米光さん
|| 17:48 | comments (2) | trackback (0) | ||

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コメント
こうして自分が書いてますが、素晴らしいオリジナルがあり、Hahi君・山根・進藤・イトマキを始めとした素晴らしいスタッフがいて、米光さんがいて、初めて出来た作品です。
自分の力なんて小さなものですよ。
感謝してくださるのは嬉しいですが、その感謝はスタッフ達に向けてやってください。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 10/04/18 23:53 | 0GxDfQ/U |
僕は、イースに初めて出会った時のことが忘れられない。

中学2年。友人宅に遊びに行った時のこと。
友人はゲームをしていた。

・・・「何?この音??」
僕が知っているゲームの音とは全く違った。
(当時の僕は、曲ではなくて\"音\"という認識だった)

やたらとかっこいい曲に、僕は衝撃を受け、飲み込まれた。

・・・後日、曲にタイトルがあることも知った。
Palace of Salmon。


そのゲームタイトルは、PC-E版イース。
(いわさきさんの思いを知ったので、イースI・IIとは書きませんね^^)


僕は続けて「最初の画面を見せて」と頼んだ。

アドルがイースへ飛ばされるシーンを見せられた。
(これが最初の画面ではないことを知ったのは随分後だったがw)
もちろん、曲はTo Make the End of Battle。
全画面でアニメーション。曲も高音の疾走感がたまらない。


その日の僕は、眼前の景色がイースの画面や曲で打ち消され差し変わり、うまい例えが見つからないが半ばボーっとしながらレコード屋に向かったと思う。
イースというタイトルを探しに。

(中学2年の僕には、5万程のCD-ROM2システムを買える筈もなかった)

買ったのは、パーフェクトコレクションイース。
PC-E版イースの衝撃を受けた状態だったので、3000円という大金をはたいたのに、さっきのアレンジとの落差に、泣いた。
悔しかった。
「なにこれ?」っていうくらいの落差だった。

それからというもの、あの音のイース、あの画面のイースが、どんなに欲しかったことか。
CD-ROM2システムがどんなに欲しかったことか。

手に入らなかった。


そこから、僕の中でイース探しがはじまったんだと思う。

後にPC-E版イース4が出る・・・僕が高校3年の頃だっただろうか。
プレミア化していたイースが再販されると聞き、即買った。

ついに手に入れた、イース。

20年以上経った今も、その感動を覚えている。



いわさきさん。

いわさきさんの生み出した作品で、(うまく言えないですが)僕の人生変わっちゃったんじゃないか、なんて思っています。
僕の中のスタンダードが変わったというか・・・

人様の人生を動かすことが出来る仕事って、なかなか出来るもんじゃないですよね。

いわさきさん、ありがとう。
本当にありがとう。感謝。



「あんまり胸がいっぱいで、何を話したら良いのか・・・(笑)」

・・・えーと、おあとが宜しいようでw


元気ロケッツ 「Never Ever」を聴きながら。
| のっぽ | EMAIL | URL | 10/04/18 22:56 | kZle/Lnw |
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