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メタルギア・ピースウォーカー(1)
雑誌にレビューを書けるコーナーを持っているにも関わらず、どうして自分のブログにレビューを書くかというと、雑誌のあの狭いコラムではとても書けないほどの内容を書きたいからだ。
また電撃プレイステーションは本質的にプレイステーションを持っている人を対象とした雑誌で、ゲームの歴史的な話をしたいとき、正直書きにくい。
そんなわけで、ここでピースウォーカーについて思うところを語るのである。
もちろん、この評価は僕の個人のものであり、僕が仕事している雑誌社・編集部・それとも会社とは一切の関係はない。

と、書いたところで始めるが、メタルギア・ピースウォーカー(以下PW)は、正直、メタルギア・ソリッドスネーク(MSX2)以来の小島監督の最高傑作だと、僕は思う。
こんなにとんでもなく面白いゲームをプレイしたのは久しぶりで、第一のエンディングまで全く夢中になってプレイしたし、第二の(と表現していいと思うが)エンディングを見た後も、なおかつ遊び倒し「オンラインなしで、軽く100時間以上遊べるゲーム」なのは間違いない。
しかも、挙句の果てには最初からもう一度プレイしたくて、新しいキャラを作って2周目をプレイして、また完全にクリアしてしまったうえに、さらにHD版でもう一度クリアしてしまった。
少なくとも、恐ろしく気に入ったゲームなのは間違いない。

もちろん欠点はある。例えばPSP版ではデータインストールがスリープするたびに切断されてしまうとか、ダウンロード版でもインストールが必須だとか(なぜだ!?)、追加ミッションでのボスの攻略が同じで固さが増すだけ、というあたりは「もう少しなんとかならなかったのか? カズ?」とか聞きたくなる。
あとこれは問題として指摘しておきたいが、PWは、メタルギアソリッド3の後日談のため、ソリッド3の話が分かっているかで面白さが大幅に変わってしまう。
もちろんゲーム内で必要なパートはいろいろな形でちゃんと説明されているし、ストーリーもカセットテープによるデブリーフィングで完全に分かるようにしてある。さらにゲーム内イベントでも何度も徹底的に示されるが「ザ・ボス」がスネークにとってどれほど大事な人間であったかは、やはり「ソリッド3をプレイしていない人」には分かりにくいと思う。ザ・ボスについて語るところから始まる(3をプレイしていない人のための)オープニングは作るべきだったのではないか…と思ってしまう。

しかし…PWは「そんな細かいこたあ、どうでもいい! このゲームはむちゃくちゃ面白い! 途方もないスーパーゲームでこれをやらない奴は損している」と断言できてしまうぐらい面白いゲーム」だ。
ともかく(第一の)ラストのピースウォーカー1~3あたりなど、シナリオは面白い、ゲームは異常に盛り上がると怒涛の面白さで、もう大興奮だったわけだが…反面、どうしてそこまでPWが面白くなることに成功したのか?
それは、結局のところPWが様々な面でゲームのバランスをとることに成功したからに尽きるのだが、それはPWに至るまでの、小島監督に代表されるスタッフが、悩み苦しんだ結果なのだ。

さて遥か遠い昔。
メタルギア(MSX2/以後MG)は本当に革命的なゲームで感動的に面白くはあったが、実質的に固定画面でしかゲームを作れない・スプライトが並ばないなどなどの、MSX2が持つハードの制約を死ぬほど受けたゲームでもあった。
色数とVRAMを制約があまりなく書き換えられるところ以外はファミコンに勝てるところがまるでない、そんなハードだから、逆に隠れるゲームを思いつけたわけで、何が幸いするかは分からない…のはともかくとして、いまだもってある双眼鏡は「固定画面の隣のマップの形と見張りの位置」を確認して進入するための道具として初代では登場し、初プレイ時には、とても大事だった。
敵はライン単位でしかスネークを発見できなかったし(YもしくはX軸が同一でないと発見できなかった)、マップからマップへと追いかけてくることはなかった。
音楽はPSGでバンタナも巻いていなかったし、ビッグボスはただの悪役で、ウンチクは語らず、ほとんどカタカナでしゃべってた(サブシスタンスで漢字かな交じりを喋るビッグボスなど、ホンモノではない! とか言ってみたりw)。
でも、信じられないぐらい面白いゲームで、住んでいた東高円寺のボロアパートで興奮しまくりながらプレイしてた(僕はまだゲーム屋ではなくシステム屋をやっていた)。当時、Beep!のライターをやっていたけどBeep!の連中もみんな興奮していた。ただし、カセットテープにデータセーブするのは本当に大変で、やってられなかった。

ところで、MSX2は縦スクロールはスムーススクロール出来たけれど、横スクロールはなかった。つまり、MSX2で作る限りは全方向のスムーススクロールは不可能で、言い換えると固定画面にせざるを得ない。だからMGシリーズを作るとして、ソコは変えようがない。
これはゲームデザインに重大な影響を及ぼす。
というのも、固定スクロールは「マップをまたいで巡回する兵士」を作るのがとても難しく、普通に作ると「MG1と同じ固定画面のパズルの連続ゲーム」になってしまう。
なぜなら、スクロールさせられるなら、例えばプレイヤーが常に画面の中心にいるようにして、画面の上に敵が見えたら、即走って戻る(最初の1ラインは敵は見えないというルールにすればよい)…とすれば「広い部屋で敵に出会わないようにしながら歩いていくゲーム」を作ることが可能だが、固定画面では画面を切り替えたとたんに、敵と当たる可能性を排除出来ない。
また、巡回してくる兵士が突然画面の上から現れ、発見されて銃撃戦ではあまりに理不尽だ。

超力技としてMSX1の『テセウス』のような方法で無理やりスムーススクロールさせる方法は、原理的にはあり得るが、それは背景に重大な制限があることになり、少なくともMGでは使える方法ではない。
また、勘のいい方なら既に気がついていると思うが、この画面中央にプレイヤーがいて、スムーススクロールするゲームは実はPS1の初代メタルギアソリッドである。

この問題を解決するために小島監督がソリッドスネーク(メタルギアシリーズ第2作。わかりにくいので、以降MG2と表記する。MSX2発売)で用意したのが動体反応レーダー(本来は全然違うのだけど、めんどくさいので以後はソリトンレーダーと書く)
かりやすい書き方をすればミニマップ+レーダーだ。
もちろんアイディアは遥か遠い昔、そうボスコニアンやラリーXの時代…いやそれどこかデフェンダーやスクランブルの時代からあるものだけど、固定画面ゲームしか作りようのないMSX2では、恐ろしいほど役に立つアイディアで、このソリトンレーダーによってマップからマップへ移動する複雑な順回路を持つ敵を作れるようになった。
なぜならソリトンレーダーがあれば「画面外の敵の動き」を知ることが出来る。だから画面の端から、いきなり敵が出てくることもない。広い部屋も表現出来るし、パズル性も維持できる。
また、ソリトンレーダーが「敵に見つかると妨害される」システムが登場したのもMG2からだが、理由は極めてゲーム的かつハード的。ミニマップはゲームシステムの都合上、3x3画面分ある。ところが敵に見つかったとき、プログラムが「発生させているポイント」は画面の端。
つまりソリトンレーダーを表示しているとレーダー上に突然敵が現れてしまう。ならば敵をちゃんとマップの端に登場させて、スネークを追跡させればいい…と今時のコード屋なら誰だって思うだろうが、そうはいかない。MSX2の処理速度はとてもとても遅く、メモリはとてもとても少ないので、敵を出せる数に厳しい制限がある。3画面×3画面のマップなんかで敵を生成したら発見されても怖くもなんともないゲームになってしまう。またスプライトの表示上限数が極めて低いので、仮に3x3のマップに敵を生成しても、1画面あたりに敵の表示できる数は結局ほとんど変わらない。
それよりソリトンレーダーが妨害されてミニマップを確認出来ないようにしてプレイヤーの記憶力を試しつつ、画面端で敵を生成する方が遙かにスマートだ。
もちろんこれは全くの推測だけど、当時のリソースが極めて限られた世界でゲームを作っているゲーム屋なら誰だってそう考える。

例えばイース1・2では2画面×2画面の仮想画面しか持っておらず、仮想画面の外に出た敵は消滅する。

そんなMSX2の都合はともかく、MG2はMG1から拡張され、以下のようなゲームの構造を持つにいたった。

1)どこか安全な場所でソリトンレーダーを眺める。
2)敵の順回路を確認する。
3)見つからないように潜入。見つかったら泣いて逃げ回る。

ここで重要なのはゲーム画面を小さくしたものがソリトンレーダーで、よくも悪くもソリトンレーダーとゲーム画面は実質同じものなので、ソリトンレーダーがなくても、敵の巡回が分からないだけで、逃げる難しさはないということだ(だいたい敵はレーダーが非表示になっている状態では巡回していないので気にする必要はない)。
つけ加えると、敵は視界を持ってはいるがトラックの下に隠れると絶対に発見出来なくなる・パイプの中に逃げ込むと絶対見つけられないといった「100%安全」と言えるパターンが存在することも、また重要ポイントだ。(ただし隠れるときに見つかっていると、パイプに逃げ込む場合を除いて、離れない)
なのでMG2では見つかると「うあーバレちまったよ、南(下)の2画面手前まで逃げればトラックがあるから、その下に隠れてやりすごすぜ!」…というようなプレイになることが多かった。

そして、いよいよメタルギアソリッド(以下MGS)が登場するが、MG2で登場したソリトンレーダーは、MGSに決定的なゲーム上の問題を引き起こしている。
というのも、MGSは、メタルギアの設定の延長にあり、技術的な設定も同じように引き継がれている。つまりソリトンレーダーは、表示され、敵も表示され、そして発見されると妨害される(表示されなくなる)ルールだ。

ところで、どこの誰でもそうだろうが、初めてデパートにいって、自由に歩き回れる人はいない。普通は「何階に自分の目当てのモノが売っているのか」を確認し、そこまでエスカレータなどで移動し、目当ての階にたどり着いたら、マップを見て自分の位置を確認し、売り場の位置を確認し、移動することになる。

そして当たり前のことながら、シャドーモセス島は誰も知らない謎の島で、右も左もわからない。そしてMGSはポリゴンゲームになっていて(つまり3D)で、なおかつ自分の視界は実際の世界より狭い(見下ろし型のTPSなので周囲を見回すのは簡単だが視界としては全く狭い)。そこでソリトンレーダーが妨害され非表示になってしまうと、おっそろしい問題が起きる。手近にすぐに見られるマップがなくなってしまい、逃げ惑うハメになってしまうのだ。(MGS1にはメニューから見られるマップがない)
しかも、問題はもう一つある。
もともとのソリトンレーダーはミニマップとして作られていた、すなわち3画面分あったと書いたが、MGSのソリトンレーダーは「視界的にはゲームよりちょっと広い程度で、相手の視界を判定し、自分が隠れているかどうかを確認する非常に重要なアイテム」になっている。しかも画面的には2DのMG1/2よりキャラクタが大きめなのもあって、見える範囲は狭い。
結果的に「MGSはソリトンレーダーを見ながら移動するゲーム」になっている。ぶっちゃけた書き方をすると、メイン画面は「ソリトンレーダーでは分からないことを確認するための画面」で、現実的にはソリトンレーダーを見て敵の視界を確認しながら移動するゲームなのだ。
そして、ソリトンレーダーが妨害されて消えてしまうこと、すなわち「敵の視界判定をするものがなくなってしまう」。
結果、何が起こったのかというと、MGSでは見つかったとき、ペナルティが極端に大きくなゲームになってしまっているし、また設定上、ソリトンレーダーが効かないとされる都合のいい場所は、メチャクチャめんどくさい。

他にも3Dでありながら、2Dに引きずられた俯瞰画面を維持したため、様々な問題が発生している。例えば「主観画面」で周囲を見回すシステムなど、その最たるものだし、壁に張り付いたとたんに、視界が変わったり、カメラアングルが変わってしまう場所があり、移動方向がコントローラと画面で一致しなくなるといった、2Dから3Dの移行時代にありがちな問題も発生している。
(とはいっても、MGS1のアナログスティックのない時代のPS1なので、この解決策がかなりスマートなのもまた反面事実)

まとめてしまえば、MGS1は偉大なゲームだが、2D~3Dの過渡期のゲームで、かつアナログスティックがなく、かつ過去の遺産を引きずった状態で3Dになったため、ソリトンレーダーが非表示になったとき、逃げたり、反撃したり、隠れたりするのに理不尽な要素のあるゲームでもあったわけだ。
もちろん「理不尽」といっても、我慢できる範囲なのは間違いないし、3Dにしたことで得られた要素が山のようにあったわけで、足し算引き算した結果は大幅にプラスなのは間違いない。
それに、これはMGSで初めてスニーキングゲームをプレイした人にはない、過去に同一の方向性を持った同一シリーズの作品を、状況把握が簡単に行える視界の広い2Dでプレイしていたからこそ生まれる不満で、MGS1をプレイした大多数の人間にはまるで縁のなかった不満なのも間違いない。
だが、反面、「2Dであったがゆえの整合性の高かったゲーム要素」が3Dになったことでかなり崩れたのも間違いない事実だと思う。

ところで余り語られないことだが、MGS…というかMGシリーズのゲームデザインの本当に偉いところは「一定時間見つからなかったら、敵が何事もなかったように元の状態に戻るということだ。リアリティ云々を語りだすなら、5分も経たないうちに、みんなもとの位置に戻り、おまけに足りない兵士のことを気にもしないなんてメチャクチャもいいところなわけだが、ゲームとして成り立つためにはほぼ必須の要素だ。
それを平然とやるのは本当に偉いと思ってしまう。

小島監督とそのスタッフはもちろん、前作から反省する人達なので、MGS2では、そのあたりをえらく改良している。まずレーダーそのものを改良して見やすくしつつ(微妙だが見える範囲も広がっていると思われる)、階層構造のときも敵を見えるようにし、さらに発見されてレーダーが利かなくなると、敵の動きを見ることが出来るなど改良を行い、プレイアビリティを向上させることには成功している。
でも、さすがにソリトンレーダーは根本的な要素で、しかもメタルギアの世界観に食い込んでしまっているためにいじれなかったのか、結局のところMGS1での問題を根本から解決できたとは言いがたい。
また、ゲームの年代を並べたとき、時代的にもMGS2はMGS1の直後…といってもいい時代だ。いじりたくてもあまりいじるわけにも行かなかったのが本当のところだろう。

MGS2はそれ以外にも「迷い」の見えるゲームだと思う。この当時(MGS2は2001年)、既に右スティックによる視界変更は常識化しつつあったが、俯瞰画面にこだわり、回転出来ない仕様にして、周囲を見渡すためには、一人称カメラでなければならないとか、どうなんだと思うところがあったりする。もちろんスティックで回転させるとクリッピングなどいろいろな部分に問題が発生するので、一概に簡単に入れればいいじゃん、と言える話ではないが、やはり微妙な仕様だと思う。

というところで、アホみたいに長くなったので続く。
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