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1990年10月 MV、季節、そして回転拡大縮小(2)
僕と山根はMVというアイディアを思いついて、それで「ゲームの画像とビジュアル(ムービー)の落差を減らすと共に、今まではシステム的に厳しいだろうと思われた物」まで実現可能だろう…と考えた、というところまで書いた。
MVは僕らが「システムレベルクラス」、「ロードレベル」、「ビジュアルレベル」の3つの「クラス」と呼ぶ物で分割されていて、この時期、僕らは桝田さんが書いてくるシナリオのイベントを、まずMVにするかアニメにするのか、そしてMVにするなら、どのクラスで行くのか…を分類する作業を行っていた。

ところでMVは、今のゲームに例えると「実機レンダリングで作られたプリレンダムービー」、すなわち一見、ゲーム画面に見えるけれど、実はプリレンダされたムービー…が一番近いと思う。
これはゴッドオブウォー、アンチャーテッドなどの海外の作品でとてもよく使われる手法で「別に実機でやってもやれないことはないけれど、それをやるためのリソースをわざわざロードするぐらいならシーンは固定だし、プリレンダにすればフェイシャルなどもリッチに出来るので、実機でムービーを作り、プリレンダムービーにする」って手。
どうして美麗なプリレンダムービーを作れるのを実機と同じにするのかというと、もちろんゲームとの乖離を抑えるためだ。
そして「ゲームと同じ画面に見せかけて、実はムービーのようなものをプレイする」という意味で、MVと似ているわけだ。

では、これら3つのレベルとは何なのかというと「MVの規模」を表していた。



システムレベルは「ゲームシステム上で対応可能なレベル」。
いろいろな制限はあるけれど、普通にゲームシステムで対応可能なビジュアルとでもいう意味合いだ。
これはイースで初登場したやり方で、イースの時にはメモリがないのもあって1イベントごとのスペシャル品だったけれど、天外2ではBAT(Background Attribute Table)書き換えの技術が確立していたことや、メモリ的に余裕があるのがはっきりしていたので、システム化するメドが立っていた代物だ(イースで具体的に使ったのはダームの塔の悪魔の回廊の柱が壊れるシーン・水路の水がなくなるシーンなど)。
具体的なやり方はまた後に実際の天外2システムの説明をするときにでも書くことになると思う。

BAT書き換えはビジュアルはもちろん、イースの後半に散々使っていた技法で、BGを力任せに直接書き換える方法。
ムチャもいいところだが、まずBGの書き換えのタイミングに制限がないうえに、PCエンジンがバカっ速くて間に合うもので、イースで困るとこれをやっているうちに、システム化されてしまったものだった。

ロードレベルは「ゲームシステムで対応可能だけどロードが必要なレベル」。
中身はほぼシステムレベルと同じ。メモリ管理の都合で分ける必要があった。
ちなみにCDROMってやつはCLVなのもあってともかくシークが抜群に遅い。だから出来るだけシークをせず、連続してロードするのが一番速い。そして容量は捨てるほどあるのがCDROMだったので1バイトでも違えば、それは違うデータとして扱い、普通なら2つのデータに分割しておいて2回ロードするデータを連続でロード出来るブロックにして管理する方法をイースで完全に確立していたので、実際のプログラムでは「フラグ上イベントが起こることが分かっているとき、最初からイベントが組み込まれているブロックを読み込む」って仕掛けで実装されていた。

ビジュアルレベルは、ゲームシステムは全部捨てて専用ルーチンで駆動する代物。
具体的には鬼怒のシーンとか、琵琶湖の水揚げのシーンとか、そういう本当にムチャクチャやる、1バイトでもグラフィックに使いたいシーン。スーパーCDになったとき、ちょっとはメモリに余裕があるかと思ったけれど、現実的には全く足りなくてやっぱり1バイトは血の一滴に最後にはなった。

僕と山根は10月あたりから二人で桝田さんの書いたイベントを、この3つのクラスに分割して割り当てる作業をしていた。この作業は10月あたりから始まって、12月までかかった(もちろん桝田さんのシナリオに合わせるので、シナリオより速い進行はありえないw)。

また、MVと絡む山根が考えついたアイディアもあった。
それはダンジョンではキャラを大きくしよう…というアイディアだ。
これに僕と山根はLマップモード(街および村で使われる小さなキャラ)とダンジョンモードと名前をつけた。
どうしてこんな案を山根が思いついたのかというと、街や村ではキャラが小さい方が全体の見通しがいいが、ダンジョンではキャラを大きくした方がディテールが出るし、さらにイベント時によりディテールのあるグラフィックスを作ることが出来るからだ。これまた単純な手だが「ビジュアルとゲームの間での落差を少しでも減らす方法」の一つだった。
この案はほぼ無条件でいいんじゃないってことになった。もちろん、こんなムチャをROMカートリッジでやったら命がいくつあっても足りないが、天外2はCDROMでデータ読み放題なのはわかりきっていたので、平気で採用することが出来たわけだ。

ちなみに天外2のダンジョンモードのサイズを流用して、PC版とは全く別物のグラフィックでゲームを仕上げたのがPCエンジン版のエメドラだったりするが、これは余談。

と、ここまでは、僕と山根が決めていった仕様だが、もちろんマップに関しては桝田さんからの要望もあった。
それは日本は四季がある国なので「ゲーム内に季節を持ち込みたい」
実は天外2には夏の飛騨高山の祭で始まり、ゲームの進行に従って季節が変わり、冬になって、そして最後に夏になって大文字で終わるという、日本らしくプレイ進行に従って四季が移り変わるというテーマがあった。そして、季節の移り変わりに従ってマップが日本の四季らしく色とりどりに変化するのをやりたい…ということだった。
これまた容量があるCDROMならではのネタで、プログラム側では難しいことは何もなく、単純にグラフィックリソースの問題でしかなく、あっさり採用されるが…後に、これらの仕様は大問題になって、制作スタッフを苦しめることになるけれど、それは後の話だ。

そして最後にハドソン(および結果的には桝田さん)からの極めて強い要求として「オープニングで回転・拡大・縮小をやれ」というものがあった。
もちろん、これはPCエンジンスーパーCDROMのスーパーファミコン対策で「スーパーCDなら、別にハードなぞなくても回転・拡大/縮小が出来て、そのうえ声が出て、音楽がオーケストラで、アニメが出来て全然スゲーですよ、スーパーファミコンなんて屁でもないっすよ」と宣伝をしろってことだ。
モチロン、回転・拡大/縮小が簡単なんてことはなくて、PCエンジンでは泣けるほど難しいつーか、パターン持たないとどうしようもないので、めちゃくちゃ大変で、ぶっちゃけ冗談じゃないというのが正しいところだったけれど、そんなことは座談会だろうがなんだろうが口が裂けても言えない。
平然と「スーパーCDROMなら回転だろうと拡大だろうと楽勝っすよ、まあ見といてください」と(必要に応じて)言うのが仕事ってものだ。

このあたり、いまだに分かってない人がいくらでもいると思う。
だいたい仕事で座談会出てて「スーパーCDはスゲエ」って宣伝するのが仕事なのに「いやー回転拡大はSFCのモード7の方が全然楽っしょ。1枚のペラペラで扱いにくいけど、回転/拡縮するだけならすげー楽ですよ」なんて言ったら速攻0点以外の何者でもないし、仮にうっかり喋っても(まず間違いなく)雑誌には載らない。
だいたい『スタッフ座談会!』なんてものが雑誌やウェブに掲載されていたとして、普通はメーカーチェック(という言い方をする)で一度原稿がメーカーに戻されて、マズい事言ってないか、広報の予定と違うことになってないかの確認を取るのが当たり前だ。
そして広報的に絶対に言うべきことが座談会に入っていなかったら文を創作して記事に入れるぐらいまでやっても不思議はないし、その逆で絶対にマズいことは削るのも当たり前だ。
さらに書くなら最初から喋ることや内容が決まっている方が当たり前で、インタビュー記事はそれぐらいコントロールされていると思った方がいいのだけど、平気で中身を信じた挙げ句にスタッフがどうこう言う人がいたりするのでポカーンとしてしまう。

この回転・拡大/縮小は、最終的には電源投入直後のタイトルデモと、岸田今日子さんのオープニングナレーションのあとの2つの玉が飛んでいくデモに集約されて完成するのだけど、2つの玉については僕の要望で「球がもっともいい(もちろん拡大縮小しやすいから)」というので決まったのだけど、それ以外に2つ幸運があった。
どちらも全くの偶然の産物でラッキー以外の何者でもないのだけど、一つが火の一族のマークが軸対象で回転しやすかったこと。
なんでこのマークになったのかはさっぱり知らないのだけど、対称軸が多くとても回転しやすい形状で、全くありがたい以外の何者でもなかった。しかも家紋などのイメージで作られていたので、基本が黒で下手に色がついていないので回転時に四苦八苦することすらない。もう神様が回転しなさいと言ってくれてるようなありがたい形状だった。
加えてもう一つのラッキーが「卍」がやはり拡大/縮小しやすく、回転もしやすい形状だったことだ(タイトルの背景は卍をイメージした炎が回転する)。

この2つの偶然がなかったら、正直タイトルは遥かに難しいことになったのは間違いなくて、例えば広井さんの最初考えた案の通り『天外魔境2 三日月丸』だったりしたら、もう超大変で「三日月をマークにして三日月と丸を組み合わせにしよう」とかそういう代替案を出さないと、正直絶対ムリだった。

あの火の一族の紋章と「卍」なんて拡縮しやすい文字を桝田さんが選んだのは全く、運が良かったと思う。
作品を作るときには、こういう不思議な巡り合わせがあるものだ。
|| 20:13 | comments (1) | trackback (0) | ||

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コメント
当時はスーパーファミコンの回転拡大機能をソフトで
対抗しようと、セガさん、NECさんの陣営が頑張っていましたね。

同時期の「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の回転ステージも凄いと思いました(w
| まつした | EMAIL | URL | 11/07/25 10:04 | dyMaSDVs |
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