enchantmoonを買ったわけ

まだ届いていないのはともかくとして、enchantmoonを買った。
買ったワケは簡単だ。
今まで、どんなコンピュータも満たしてくれなかった、決定的な要素を満たしてくれる可能性のあるデバイスだからだ。
僕は本当になにをやるにもコンピュータが必要な人間で、例えば文章を書くときはワードプロセッサとアウトラインプロセッサがないとやってられない。
プレゼンはパワーポイントとexcelがないとどうしようもないし、物を調べるのにも、メモを取るのにも、あらゆることにコンピュータやスマートフォンを使う人間だ。だから毎日ノートブックとスマホとタブレットを持ち歩く。
だけど、コンピュータが全く使えない瞬間がひとつある。
それがアイディアをひねり出す瞬間だ。


アイディアをひねり出すと称する方法はいろいろあって、インターネットを検索すればマインドマップとかKJ法とか、ごまんと出てくるけれど、実はこれらはアイディアをひねり出す方法じゃない。
マインドマップだろうとなんだろうと、何かターゲットがあるから書けるわけで、もっと曖昧模糊とした、マインドマップの中心トピックとか、カードにするとか、そういうことがまるで出来ない(マインドマップの中心トピックに「面白いXX」と書かれているぐらい曖昧としている状態)状態では、そういうコンピュータが支援してくれる方法を、少なくとも僕は全く使えない。

もちろん、これらの方法はアイディアを整理した後、連想でふくらませていくような段階ではとても役に立つ。ただ、それより前のアイディアが何物なのかすらはっきりしていない状態で役に立つ技術ではないってだけだ。

では、僕はこの段階では何をやっているのか?
たいてい奇っ怪な落書きを紙にしている。
この落書きは、変なグラフまがいだったり、テキストがひっついていたり、ちょっとした図になっていたり…なんてことを繰り返しながら、何ページかに渡って書かれ、ページが進むに従って、たいていの場合には具体的なテキストが増えてきて、最終段階で、ほぼ整理されたアイディアになる。
このプロセスには短い時は数時間、長いと数日(ひどい時は数週間から1年とかかかって出てきたものもある)かかるのだけど、どうしてこれで出来るのか、どのようにして具体化していくのか、人に全く説明出来ないのだけど、ともかくアイディアをひねり出す瞬間には、この落書きプロセスが必要だ。

ちなみに僕にはもうひとつ、アイディアをひねりだす方法がある。
自分が考えていることを延々と、人に喋って聞かせるってやり方だ。
これを聞いた人に言わせると、ものすごく話題や内容がジャンプして、まるで一貫しているように聞こえないシロモノを延々喋った挙句に「だいたいまとまった」とかいきなり言うらしい。

そして、前者の落書きをするプロセスが僕にとってメインのやり口なのだけど、こいつをコンピュータに載せることが出来なかった。
だから僕の周りには必ずメモがあり、そのメモにはキッカイな、他人が見たら全くワケがわからない曲線が書きまくられているわけだ。
しかし、物理ノートってのは実にめんどくさい。適当なサイズがないとダメだし、書いていくと、バリバリページが減ってきてなくなるし、買い直しをしないといけないし、ボールペンは書けなくなるし、ともかく手間がかかる(これを手間と思うダメ人間なのだ)。
だから、このプロセスを遥か遠い昔からコンピュータに載せたくて、Palmの時に「もしかしたら、ここに手書きメモを入れたら出来るんじゃ?」と思ったけど出来なかったのから始まって、現在のipadだのandroidだのまで、僕は必ず手書きメモを山のようにインストールして、片っ端からためしてみる癖がある。
だけど、ともかくどれもこれも話にならなかった。
まず第一に反応が鈍い
自分の思った通りに、思った通りのスピードで書けない。
次に、これはもうアプリのなりわいの話になってしまうが、手書きメモってヤツは一見なんでも書けるように見えるが、たいていはメモを手書きするか、それとも手書き作図ツールでしかなく、落書きをそぞろに行うための、つまり自由連想のキーするようなツールになっていないというのが僕の結論だった。
自由連想のキーではなく、教科書に線を引くような発想でできているから、ツールボックスだなんだとあるわけで、結局はそういう機能の整理された、使い道の考えられてる、こーいうときにはこうしてくださいって、普通のアプリでしかない。
端的に書けば、僕の最初の一手に使う道具としては使い物にならない。
ところがenchantmoonは、僕が欲しい、勝手気ままに書ける紙の延長を作ろうとしているように見えた。
だからenchantmoonを買って見ることにしたわけだ。
ところで、清水君がtwitterで書いていたのだけど「xperiaの方がやれることはずっと多いと思います」のは間違いもなく本当だろう。
enchantmoonは紙を置き換えるって発想なら、普通の意味でのアプリ的な概念はほとんどないはずだし、アプリそのものもenchantmoonの本体であるはずの『ノートの紙』に当たる部分をより賢くする方向に進むはずだ。
つまり目次は作れても、引き出しはあっても、ホーム画面はないのが、僕が思っているenchantmoonの思想のはずで、となると普通の意味でのタブレットの使い心地を期待すると、ひどいことになるはずだ。
そんなわけで、普通の人にはとてもお勧め出来そうにはないデバイスなのだけど、僕が、まさに欲しかったデバイスの可能性がある。
だから、enchantmoonを買うことにしたわけだ。

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1件のコメント

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 5.1) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/27.0.1453.73 Safari/537.36
    初めてコメントさせて頂きます。
    enchantmoon。もう販売されていたんですね。
    全然気が付きませんでした。情報ありがとうございます。
    手書きメモとコンピュータが、どこまで仲良しになって
    いるのか楽しみです。

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