ダームとピーターパン

ふっと思い出した『イースⅠ・Ⅱ』の話。
一度も書いたことがないし、言ったこともないような気がしたので、メモ代わりに残しておく。
遥か遠い昔の記事で書いたとおり、PCエンジン版の『イースⅠ・Ⅱ』は作る前から、もうこう作るときめていた。

●2本入れて1本にする(これは僕から中本さんに提案した)
●音楽はCDオーディオ
●パソコンのグラフィックを強化
●アニメーションのデモをやる
●声をつける
●CDオーディオ使うからデータは圧縮して詰める。できるだけロードしない

と、たったこんだけで、実に簡単な方針だ。
この方針はCDROMのいい所だけを見せて、悪い所は見せないためのものだけど、実際に作るうえで、特に重視していたのがオープニングだった。


バカ高いCDROM(全部合わせて当時の物価で85000円だ)を買ってよかったと思ってもらうためには、オープニングで何がなんでも心をつかむ必要がある。
ハリウッドの格言にあるという「火事で始めて、地震へもってけ」というヤツだ。
(この格言をどこで覚えたのか、未だ思い出せないのだけど…そもそもハリウッドなのかも不明である)
実際にどうするかも決めていて、オープニングでド派手なCD音源の曲が鳴って、スペクタクルな感じのイースのデモが始まって、ナレーションがかぶされば、当時のゲームマシンと比較して、CDROMの持っている絶対的な武器、具体的にはCDオーディオ・使い捨てできる容量・音声が全部出ることになる。
これが、ユーザーとショーにやってきた問屋のオジサンの心をつかむためには必須だと思っていた(ユーザーに売るためには、問屋に買ってもらわないといけない。問屋に買ってもらうためにはショーに来るオジサンの心を掴まなければならなかったのだ)。
そんなわけで、オープニングではナレーションが入ることも決めてたわけだけど、じゃあ「どんな声で?」になると、さっぱり声優さんのこととかを知らない悲しさである。
単に「渋いオジサンの声がいいだろう」ぐらいにしか考えていなかった。
だから声優さんを決めるとき、オープニングをどなたにやってもらうかは全く決めておらず、青二プロのテープをみんなで聞きまくって決めたのだけど、ここで一つだけ、決めていたことがあった。
それはダーム、すなわちラスボスとオープニングのナレーションの声優さんは同じ人にやってもらうということだった(だから最初からオープニング兼ラスボスとして銀河万丈さんにお願いした。また当然海外版でも同じ声優さんにやっていただいている)。
なぜか?
僕は『ピーターパン』という作品が大好きで、特に中でもディズニーの『ピーターパン』 の”You can fly”で空を飛んでネバーランドに向かうシーンをこよなく愛しているのだけど、この『ピーターパン』(の戯曲)には一つ変わったルールがある。それはキャプテン・フックとお父さんを同じ役者がやること。
どうしてこんなルールがあるのかというと、それは戯曲の『ピーターパン』にそう書かれているから…で、なぜそうなったのかについては諸説あって、よくわからない。
そのルールをディズニーのピーターパンも守っており、お父さんの声優さんとフック船長の声優が同じになっている。
で、僕は、このピーターパンへのオマージュとして、オープニングのナレーションとダームの声は同じにしよう、と決めていたわけである。
これ、実はちょっとした意味が他にもあって「オープニングとラストのダームの声が同じってことは、これは実は閉じ込められ、今蘇ろうとしているダームの回想」って解釈も出来て面白いだろ…と思ったのだけど、ダーレもそんなふうには取ってくれませんでした。エエ。

余談ついでだが、ピーターパンが大好きで原作を読んだときには、イロイロびっくりした。ぜひ一度原作も読んでいただきたいと思う。

ところで、今回リンクを張ったほぼ最初期の記事は2010年。
なんとこのブログ、丸5年半ほど書いていることになる。思ったより長く続いたものだ。

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2件のコメント

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    それ最近ではガンダムUCで永井一郎氏が初代ガンダムのナレーションやってたのと同じ手法ですね!

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; rv:41.0) Gecko/20100101 Firefox/41.0
    今現在の本家ファルコムのイースシリーズ本編やPV等でも銀河万丈さんがナレーションをしているんですから、当時のPCE版のインパクト・影響力、推して知るべしという感じですね!
    そう言えば『天外魔境ZIRIA』も、OPナレーションとラスボスのマサカド、両方を野田圭一さんが担当されてましたけど、もしかすると同じような演出意図だったり?

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