天外ⅡのCDROMはなぜ60分だったのか?

Twitterでつぶやいた話をちょっとまとめて置いておく。
このカテゴリ、書いたの久しぶりだ。
『天外Ⅱ』の容量は60分で出来上がっているのだけど、どうして60分になったのかについては書いたことがなかったので、忘れないうちにメモしておく次第。
『イースⅠ・Ⅱ』を作ったころ、すなわち1989年ごろのCDROM黎明期には、容量は時間換算で60分までしか使ってはいけないことになっていた。

当時雑誌などで良く書かれていた540メガバイトの容量は60分換算。
CDは1秒に75セクターのデータがやってくる。1セクタは音楽CDでは2352バイト、CDROMでは2キロバイト(2048バイト)。
なのでCDROMでは2*75=150だから、1秒150キロバイト。
150*3600(3600秒=60秒*60分=1時間)=540000キロバイト。
1000キロバイト=1メガバイト。
540000/1000=540メガバイトというわけだ。

本来、RED BOOK、つまり音楽用のCDでは74分入るわけで、どうして14分も短かったのか?
当時はCDの生産技術そのものも黎明期だったので、60分を超えて、トラック間が縮まるとディスクの読み取り精度が保証できないなんて理由だったと聞いていた。要はエラーが怖いからフルに使えないって話だ。

実際に『イースⅠ・Ⅱ』を作る時、72分のディスクを作ってくれと言ったら、最初は65分以上の量産経験がほぼなくダメだと拒否されて、交渉した結果70分でまとまったという経緯があるし、そもそも僕のプロのキャリアのほとんど最初のCD-iでもシカゴやデモインズで常にリードエラーと読み取り精度は問題とされて議論の対象になっていたので、リードエラーを恐れたって話は間違いないと思う。

と、ここまでは話の枕。


1989年に『イースⅠ・Ⅱ』作ってた時、どうしてもCD音源を録音する長さが足りなくて、気がついたのがYELLOW BOOKの盲点。YELLOW BOOKの60分とRED BOOKの74分。
その差の14分をCD音源として使ってはいけないとはYELLOW BOOKのどこにも書いていなかったので、そこを使ってCD音源を詰め込んだ。当時、RED BOOKとYELLOW BOOKは暗記するほど読んでいたので、思いつけた方法だったと思う。
ところがこれが問題になったのがデバッグ。
ようやく規格が策定されて出たところのCD-RはもちろんYELLOW BOOK準拠のCDROM用だったので容量60分のメディアしかなかった。だから『イースⅠ・Ⅱ』ではCD-Rが使えず、デバッグをするとき、数十万単位で金がかかるスタンパー(製品と同じもの)を連射するってマネをやらかした。
当時、値段なんかカケラも気にもせず、バグ取れたと思う安定版が出るたびに、マスターを出したわけだけど、ひでえことをやったもんだと思う。
そして『天外Ⅱ』がスタートする時の話になる。
僕がメチャクチャをやったのをハドソンはとても良く覚えていてーーー
「岩崎、CDROMの容量は60分だ。それ以上は絶対に使ってはならん」
と、キツくキツく厳命された。
要はCD-Rの容量以上を使ってはいけない、ということだったのだけど、『イースⅠ・Ⅱ』がやたらと容量が必要だったのは2本を1本にまとめたからで、かつADPCMを使えなかったからで、1本なら60分ありゃあ、まあなんとかなるだろうと思っていたのだけど…4人のテーマ+メインの曲+タイトル+オープニング+マップの曲2曲…と、イロイロ入れてたら、もう明らかに「これヤベーんじゃね?」って状態になっていた。
それだけなら「あーCD音源欲しいなあ」でしかなかったのだけど『天外Ⅱ』はADPCMデータがとんでもない容量になって、なんと無限の容量を誇っていたはずの540メガバイトがパンクした
僕はこれさいわいと「70分まで使っていいことにしましょう。それなら全部入りますよ」と言ったのだけど、拒否されてしまった。
当時、CD音源がもうちょっと欲しかった僕はガッカリしたのだけど、今から考えたらハドソンの判断の方が正しかったと思う。あんなデバッグの大変なゲームで、最終段階でマスター出しまくっていたらデバッグは永遠に終わらなかったのではないかと思う。
ただパンク自体は、当時の規約を変更することで解決できた(ADPCMはデータを二重にしなくていい、という規約。コレ自体は合理的な話である)。ここらへんの話については、この記事に書いた。

もちろん『天外Ⅱ』でもADPCM領域までデータに使ったが、SuperCDは256キロバイトのメモリがあったおかげで、ADPCMにも常時必要なデータが満載って構造にはせずに済んだし、ADPCMを使う技術も確立していたので、ADPCMをオーディオに使うのが遥かに楽だったのである。

そんなわけで『天外Ⅱ』は確か58分ぐらいしか使っておらず、あと12分ぐらいはCDオーディオを使える。12分あると、4人のテーマの変奏をそれぞれ2個入れられるから、音楽の表現力がぐっと上がったのになあ…と残念に思うのである…てな内容をツイートしていたら、当時、久石さん以外で作曲されていた福田裕彦さん曰く…

うーむ…どっちにしても当時は無理だったということかw

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1件のコメント

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    天外2の記事が更新されるのを、かなりお待ちしていました。
    できればこのまま本にまとめられるくらい続けて、年末に出していただきたいところですが、最近の記事を見ると岩崎さんの興味がF2Pに向いているようなので無理かなあ。

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