海外での就職、質問にお答え篇

海外スタジオの就職事情について書いた時、コメント…というか質問が来ていて、これがどうにも長くなるのでブログでお答えする次第。

純粋な疑問ですが
海外の新人はどうやって即戦力いなれるまで経験を積むんでしょうか?
どの会社も即戦力しか入れないなら今居るは初めて就職した時は社員はどうやって入社したんでしょう?
誰だって最初は全員「デザイナー志望で来たけれど、使えるかはわからない新人」ですし。

誰だってそう思う。
そのために、海外ではインターンシップ制度と呼ばれるものが広く普及している。
これはわかりやすく書くと大学生(社会人である場合もある)が「僕はこの職場で仕事をしたいです」と応募する。
すると、職場はそれを了解し、最大数ヶ月の間、インターン(つまり見習い)として、そこで仕事をする。
ここから先はいくつかの状況に分かれるのだけど、ここで聞いているのは新人さんの場合、すなわち大学生の話だとすると…
インターンは大学に帰り(卒業を目指している場合はたいていこうなる)、帰ったインターンに対して、その職場が推薦状を出す。
推薦状の内容は「この人はこの職場でこんな仕事をしてました」って内容だ。
そしていい職場でインターンを出来て、しっかりした推薦状があれば、就職で戦うための武器が手に入る。これが複数あればさらにいい。
そして、大学生はこれらの推薦状を利用して、就職活動を行うわけだ。
これが『経験のあるベテラン』と新人が戦うための手段だ。
つまり推薦状を使って、ベテランの間に割り込み、こいつは出来るんじゃないかと思わせ、職場に入るわけだ。

私も必ずしも新卒一括採用が良いとは思いませんが、
少なくとも教えた新人はいつかは頼れる戦力になるという
前提があるから仕事を教えるんであって、
(よく考えたら自分も同じように教えられたわけだしという
義理もあり)
お互いここにいつまでいるのか分からない、ましてや
採用するかどうかも分からないインターン生に
手取り足取り教えたりしないと思うんですが、
実際のところはどうなのでしょうか?

第一にインターンと言えども、雇用契約を結び、プロフェッショナルとしてゲームロフトでは遇される(給料も出ていた)。つまり仕事仲間になる。
またインターン(新人)に仕事を教えるのをメンターとゲームロフトでは呼ぶのだけど、このメンターの仕事が出来る事=自分がマネジメントの能力や教育する能力があることの証明になり、メンターをする人間のキャリアアップに繋がる。つまり手取り足取り教えるのが当たり前。
さらに、お互いここにいつまでいるかわからないは、海外スタジオではハンパじゃない。
平均勤続年数は実は3年そこそこなのが当たり前。
僕の部下で最優秀のゲームデザイナーは1年で1本作ってゲームロフトを辞め、シンガポールで1本作り、また転職して今度はドイツで仕事してる。他に最高の友達になったヤツも僕がゲームロフトにいる間に転職し、また1年ほどで今度はEAインドへの転職を決めている。
加えて書くと、デザイナーの半分ぐらいはゲームロフトから他に転職してるし(僕も含む)、プログラマもかなりの数が転職してる。
つまり転職するのが当たり前の環境なので、逆にお互い相手に仕事をキチっと教える(しかも雇用契約で仕事の範囲はガッチリ決まっている)し、だいたい仕事の内容までちゃんとドキュメントになっているのが当たり前って文化なわけ。
というわけで、まとめるとーー
新人が就職においてベテランと戦うための武器は、インターンシップによる推薦状。
そして職場での教育については、人材流動性が非常に高く転職するのが当たり前なので、ドキュメント化はしっかりするし、仕事内容もカッチリ決めるし、新人にものを教えるシステムもとても重要になるので、メンターシステムも人材評価として使う。
だからインターンにも当たり前のように教えるし、別にそれは不思議なことじゃない。
と、こういうことになる。
僕はインターンシップの問題点の話も聞いたことがあるし(ゲームロフトではともかく、無給でコキつかうところもあると聞く)、もちろん手放しで礼賛するつもりもないけれど、一括新人採用よりは、必要なときに責任者が必要なだけの人数をとれる海外スタジオ型のシステムの方が「ゲームを作る現場」には向いていると思うのだ。

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2件のコメント

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 5.1; rv:20.0) Gecko/20100101 Firefox/20.0
    個人的な話ではありますが、ソフトウェアテストの仕事をしていて、前の現場の上司がフランスの方した。
    その方がおっしゃるには、「フランスでは3年くらいで職場が変わるのが普通です」とのことでした。
    岩崎さんが「平均勤続年数は実は3年そこそこなのが当たり前」と書いていらっしゃいますが、少なくともソフトウェアを扱う業種に関しては、海外だとそれが普通なのかなあと思います。

  • 29回転職に成功した!!再チャレンジ転職法

    これまでの経験で、正確な人数は把握してませんが、マーケティング部門の責任者とし…

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