天外Ⅱの戦闘システムについて(2)

説明を始めると深入りして、面倒くさいから書きたくなかったのに、コメントで書かれてしまった上に「どうしてウィザードリィやドラクエがそういうシステムなのか?」を知らない人も沢山いることが、ツイッターとか見ていてわかった。
しょうがないので、話を一度前に戻して「なぜ、フェイズシステムなのか?」を解説するところから、今回は始めたい。
初代の(最近はクラシックというらしいけど)D&Dは、元々作った会社がTSRって有名なミニチュアール(フィギュアを使ったシミュレーションゲーム)だの、けっこーマニアックなボードシミュレーションを作っていた会社で、しかもD&Dは「ミニチュアールの戦闘ゲームにいろいろオマケのルールを付け足していったらRPGになりました」という代物なので、結構、戦闘がヘビーなゲームで、本来は方眼紙の上にフィギュアを置いてプレイし、距離だのなんだのまでルール化されているゲームだった。


ところがウィザードリィでは距離は「前列・後列」という概念に抽象化されている。

多分当時のパソコンでは実現が厳しすぎたのだろうと思っている。ちなみに簡易的に距離を扱うために同じようなシステムが当時のD&Dにはあった…はず。そしてそれが前列・後列という形でさらに簡易化されて導入されたのだと思う。

この前列・後列という概念はなにかというと…似たようなモノがFFやら世界樹にあるけれど、雑にはパーティが前と後ろに分かれていて『剣とか使った距離の近い攻撃は、相手の前列にしか出来ません。後列からは魔法とか、飛び道具とか、長く届く槍でしか攻撃できません(長く届く槍は後列から相手の前列までしか届かない)』というルールだ。
これが単純化・抽象化された距離の概念を表しているのは分かるだろう。
また距離の概念と同じように重要なのは時間の概念だ。
D&Dでは1ターンは6秒ほどと規定されている(はず。記憶ではそうのはずなんだ)。
この6秒の中で移動/魔法/アイテム/飛び道具/攻撃のなかのどれかをやるルールで、そして確か魔法なんかは詠唱時間があった記憶があるのだけど(これはハウスルールだった可能性がある)、ウィザードリィでは移動が削除され、複数ターン使用の魔法もなくなり、どんなアクションも1ターンになっている。
なので、ウィザードリィの戦闘では1ターンとは「攻撃するか・魔法を詠唱するか、アイテムを使うかといった、次の6秒の行動を決定する」という意味になった、と考えることが出来る。
つまりウィザードリィでは、元々のD&Dの戦闘の全ルールを載っけるのは当時のパソコンではムリだったので、戦闘を以下のように簡素化して、載っけましたということになる。

・距離の概念は、前列・後列に単純化して移動を削除。
・時間の概念は、アクションを限り、全て1ターンで終わると変更。

そして、数秒しかない中で、ダンジョンの乱戦の中で戦闘やってんなら

・魔法の詠唱が死んだヤツにかかってしまう。
・倒れた奴に攻撃しちゃう。

この仕様は、話にならないほど理不尽ではないのは明らかだ。
実際にプレイして起きれば「アチャー」な気持ちにはなるだろうけれど、前述したようなゲームのルールを共用していれば、理解は出来る。
と、ここまでが「ウィザードリィはD&Dの戦闘システムの簡易バージョンが載っていたけれど、距離も時間も概念としてはありましたよ」という話。
ここで問題になるのがドラクエだ。

ところで書いておくと、僕がここで問題にしているのはFC版のドラクエ2-3あたりの話で、ドラクエ10のようなMMOのEQが作りだした文法に則っているゲームとは全く別の話になる。FC版の4は「めいれいさせろ」がなく、AIがかなりインチキくさい挙動をするので、ここで歴史には断絶がある、という考え方をしている。

まずドラクエには前列・後列の概念がない。言い換えるなら、距離の概念がない。敵のグループの概念はあるけれど、それと距離の概念は全く繋がっていない。
次に「1ターンにどんだけ時間がかかってるのか?」という時間の概念もない。というか極めて曖昧だ。
例えば1ターンが6秒だというなら、装備の変更が戦闘中に出来るはずがないという話になる。道具だって大きな物を取り出して使うのはどうなんだ? という話になる。
つまりウィザードリィの「D&D簡易型戦闘」がドラクエ2~3で距離と時間がとても曖昧な戦闘になりましたということだ。
これは、堀井雄二氏がD&Dを知らずに抽象化と単純化をしたということではなく「一般向けであることを意識して、わかりにくいところや面倒くさいところを除去した」のが事実なのだろうと思う。
ただ、結果として、ドラクエは距離の概念も時間の概念も曖昧な対面型戦闘になった、のは間違いない。
と、ここまでが…
「D&Dの戦闘がウィザードリィで単純化されたモノが、さらにドラクエでいくつかの要素がなくなったり、つけたされたりした結果、距離と時間が曖昧になった。結果として『同じ敵を狙ってしまう』とか『ターゲットのいないところに魔法をキャストする』といった事が理不尽に見えるようになった」
という話。
だけど、これだけでなく、他の理由もあって、僕はフェイズ型ターンシステムは理不尽だと思っていた。
なぜなら、このゲームシステムは本質的にはペーパー&ペンシルでプレイする都合から出てきているシステムだからだ。
本来ならバトルは全員が同時にお互いに相手の行動を見て、影響を与えながら動いているリアルタイムなものだけど、そんなことは「ペーパー&ペンシル」では出来ないので「1ターンを6秒にして、その6秒の行動を決めましょう」ということになる。
そして、ペーパー&ペンシルでは行動を同時に処理することは出来ない。
だから、現在、プレイヤーが2人(P1,P2)とモブ一個(m1)がいて、戦闘をしているとしたとき、例えば、P1とm1のバトルを解決し、次にP2とm1のバトルを解決する、そして最後にm1のP1もしくはP2に対する行動を解決する、というような具合になる。
ここで仮にP2がP1とm1のバトルの結果を見て行動を変更するということを許すと、P2はP1と同時に行動しているはずなのに、P2はP1の行動を見て行動を変更する、タイムトラベラーな行動をしていることになる。
だから、P2はP1の行動いかんに関わらず、行動を変更することが出来ないルールが出来る
また、これの変形で「行動を変更出来る」としても、例えば次の1ターンは自動的に休みになる・移動以外は許されないといった制限をつけることがあるのも理解出来るだろう。
これらは、本来なら同時に処理されているモノを逐次処理しなければいけないペーパー&ペンシルゲームの持っている問題点だ。
しかも、このシステムは表現できないことも多い。
例えば、1ターンは6秒って厳密なシステムだと仮定して、最初のプレイヤーが突撃するのを3秒見て、それからダレを攻撃するかの判断を下す、というのは実世界では全く普通にありえる話だし、6秒はそれをやるに十分な時間なのは間違いない。ところが、6秒固定・出来る行動は一個の戦闘システムでは、そういうことは出来ない。

この手の問題は、情報の隠蔽と共にボードシミュレーションゲームの大命題だったのだけど、これを解決しようとすると、ペーパー&ペンシルなゲームでは、だいたい時間粒度を細かくか、複雑なフェイズを持つ方向に進む。
つまり1ターンを1秒とかにして「攻撃するのは3秒(3ターンを使う)」、「魔法の詠唱は簡単なのは10秒(10ターンを使う)」みたいにして扱うとか、例えばある種の行動は変更可能とか「攻撃した相手が防御を選択していた場合、相手は即時反撃フェイズに入り、攻撃を無効にするチャンスがある」みたいに複雑怪奇にフェイズが組み合わさる方向に進む。
でも、管理がとんでもなく面倒くさくて「こんなゲームやってられっかあ!」となってしまうことが大半。

そして、これこそが僕が6秒だろうが、それともドラクエの曖昧な1ターンだろうが、いずれにしても理不尽だと考えていた理由だ。
なぜなら、ウィザードリィはPCでD&Dをやりたいから、そうしたのだろうけれど、最初からコンピュータゲームで作っているのに、わざわざ、そういった制限を残す必要はない。
それに、同時性の問題はコンピュータなら、かなり解決の仕方がいろいろある。
またアクションそれぞれに必要な時間があるって考え方をしても、それをコンピュータでデータとして持てるし、管理もコンピュータがやってくれるから、時間粒度を細かくしても全然怖くない。
なのに、わざわざターン制で意味のないシステムを作ることは、馬鹿らしいと思っていた。
だから、桝田さん&広井さんに、考えた新しい戦闘システムを披露したわけなのだけど…
というところで次回に続く。

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4件のコメント

  • AGENT: Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.2; WOW64; Trident/6.0)
    前回コメントに書いちゃってすいませんw
    D&D についてですが……。
    1 通常ターンが 10 分
    1 ラウンド (1 戦闘ターン) が 6 秒か 10 秒かそのくらい
    ただし 1 ラウンドで終わろうが 1000 ラウンドで終わろうが、戦闘における時間経過は 1 通常ターン扱い (つまり遡ることがありうる) という感じだったかと思います。
    この辺りは 1 通常ターンごとに別の判定 (ランダムエンカウンターとの遭遇チェックとか) が入ることを回避する、つまり「戦闘中に別のモンスターの一群と追加遭遇する」辺りを回避しているためだったと思います。
    とはいえ、100 ラウンドもかかる戦闘などは普通ありませんけど。
    簡易的な距離システムは……あったかな? 10/20/30 とか 30/60/90 とかは所持重量に応じた移動可能距離とかで、黒本まででもなかったように思います。
    大規模戦闘回りにはあったかもしれません。

  • AGENT: Mozilla/5.0 (X11; Linux x86_64) AppleWebKit/537.1 (KHTML, like Gecko) Chrome/21.0.1180.89 Safari/537.1
    時間の話で言えば、DQ10の戦闘で面白かったのが
    ターンを貯めることができることですかね。(2回)
    多分「すばやさ」の値で決まる1ターンの時間単位が、キャラクター毎に背後で進行しているのですが、
    特にやることがない場合等、何もしないでいるとターンが貯まっていきます。(音が鳴る)
    僧侶系とか、攻撃にリスクのある武闘家系などは、敵の状態変化(怒りなど)を回避したり
    全体攻撃被弾後にまとめて回復等々、割と戦略的に戦闘を行うことができます。
    ※AI・敵は自発的に貯めたりしないんですけど、何かしらの障害で行動できない場合は
     同様に貯まるようです。

  • AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 5.1; rv:15.0) Gecko/20100101 Firefox/15.0.1
    >> 近藤様
    距離については、記憶でしかなくて、しかもハウスルールだったリスクが十分にあるのだけど、距離線を使った簡易ルールがあったのは確かなんですよ。
    少なくとも、僕はそれを使って遊んだ記憶があるので。
    距離線ってのは雑に書くと、最初に遭遇したときの距離があって、雑には近距離・中距離・遠距離と分かれてて、ってまさにWizardryの隊列ルールのようなものだったんです。
    問題はこのルールがどこから来たものだったのか…なんだけどw
    >> atsu様
    そのルールをなぜ用意したかの理由はゲームデザイン的には理解出来るけれど、ゲームのリソース管理の面はともかく「現実の意味」って角度から見ると、どうにもビミョーなデザインだと思ってたりします。

  • AGENT: Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.2; WOW64; Trident/6.0)
    岩崎さん:
    うーん、D&D ですよね。岩崎さんの時代だと 2.5 版以降とか AD&D とかいうことはないでしょうし。
    通常戦闘でそういった簡易距離処理は、Apple ][ 版 Wiz #5 が出た後とかだったりすると、そこからクロスレンジ/ショートレンジ/ミドルレンジ/ロングレンジの輸入とかはあるかもしれませんが……。
    D&D で普段の戦闘はヘックス……はめんどくさいので、スクウェアタイル (というか方眼紙) 上にミニチュアフィギュア使ってやってました。
    ロードス島戦記のメタルフィギュアにはお世話になりました。

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