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誰にとっていいゲーム?
僕の大嫌いな言葉に「いいゲームを作れば売れる」とか「面白いゲームを作れば売れる」って言葉がある。

どうしてこの言葉が大嫌いなのか?
何も考えずに読むと、正しそうに見えるくせに全く間違っていて、しかも有害な言葉だと思っているからだ。
どうして有害だと思うのか?
これは本質的には、作り手に向けて使われる形の言葉だけど、重要な要素がいくつか致命的に抜けているからだ。

まず、なにより最初に抜けてる要素は売れるってのはいったいどれぐらいなのか? だ。
この言葉、どれぐらい売れれば成功なのかについては、何も定義していない。
黒字ならいい? いやあ、違うだろう。こういう書き方をされるときには「ものすごく売れる」のが前提、つまり50万・100万といった単位だ。つまりいいゲームでないから、50万売れないわけだ。
いったいそんだけ売れるゲームが年間何本あると思ってるんだ、と突っ込みたくなるが、さすがに50万は激しいので「いいゲームを作れば、最低20万は売れる」ことにしよう。

しかし、これを定義しても、まだ抜けているとんでもない重要な要素がある。
それは「誰にとっていいゲームなのか?」だ。

ここで誰にとってを「ユーザーに決まってるだろ」と簡単にケリをつけるわけにはいかない。
今は30年前のファミコンがまだ100万台なくて、ユーザーといえば小学校高学年~高校生が80%以上なんて牧歌的な時代じゃない。
ゲームをプレイするユーザーは下は3,4歳あたりから上は60歳以上まで。しかもハードウェアとプレイ環境でボリュームゾーンの年齢・性別も変われば、嗜好も全く違う時代だ。
つまり「誰にとってのいいゲームなのか?」という問いは、恐ろしいほど重要だ。

ここで書いておくが3,4歳が下限なのは疑いもなく本当だ。また、35-45歳女性がボリュームゾーンの市場もある。

とか書くと、抽象的でわかりにくいという人がたいてい現れるので、具体的な話で進めていこう。

「僕にとってのいいゲーム」は、どんなゲームなのか?
古色蒼然たる2Dの、それも横スクロールのグラディウスのようなシューティングゲームだ。僕にとって、30年前と変わらず、シューティングこそゲームの王様だ。
じゃあ、2Dシューティングでも、いいゲームなら20万本、50万本、いやミリオン売れるのか?
冗談言うな。
ファミコン後期からあと、2D型シューティングでミリオンセラーはコンソール・パッケージではただの一本もない。それどころか鳴り物入りで発売され、宣伝された有名なIPのソフト、有力パブリッシャーが力を入れたソフトでも10万本も届かないものがゴロゴロしている。

ところで、アリカの三原氏によると、ミリオンを越えたのはファミコン版ゼビウスのみで、残りはどの大ヒットもミリオンにわずかに届かないということらしい。
この話を三原氏から聞いたとき、スターソルジャーですらミリオン行っていないというのはちょっと信じられなくて調べたところ、スターソルジャーは公式ではミリオンになっていた。
ただ、三原氏のチェックは僕よりシビアだと思うので、公式にはミリオンだけど現実は超えていませんでしたということなのだろうと、僕は思っている。
いずれにしても、高橋名人の全盛期の、ハドソン全盛期の、あのスターソルジャーが100万本前後なのは僕にとって驚きだったのは間違いない。

では、それらはダメなゲームだったのか?
そんなわけない。
つまり2Dシューティングは、よしあしにかかわらず大ヒットはしないのだ。
とか書くと、「それは一般にとっていいゲームじゃない、マニア向けだ」と言い出す人が必ずいるわけだが、その瞬間に次の問いが現れる。
「では一般とはなんだ?」
この問いは、まさにそのゲームをプレイするユーザーを定義すること、すなわちどんなユーザーがいるマーケットにゲームを売るのかって話だ。
言い換えれば、マーケットを考えず、誰にとってのいいゲームなのかも考えずに、いいゲームを作れば20万だの、30万本だの売れるだのなんて話があるわけない。
ゲームを作るうえで、とんでもなく大事な、誰にとってのいいゲームなのか、言い換えるなら「誰がユーザーなのか?」を無視した言葉など話にならない。

そして、例の2Dシューティングはコンソールでは大きく見積もっても10万そこそこのユーザーしかいない市場なのだから、そこで20万本売れることはないのは、まったくもって当たり前だ。
どれだけいいゲームであろうと市場以上のサイズには売れない。これまた全く当たり前の話だ。
そして市場が小さければ、いいゲームであろうと数は売れないことになる。

ここまでで「いいゲームを作れば売れる」がどれだけ話にならず、害のある言葉かわかるというものだが、さらに難しい問題に話は進む。

「いいゲームとやらをいくらかけて作っていいのか?
すなわち予算の問題だ。
いいゲームならウン十万売れるわけではない。では「売れる数の中で、いいゲームを作ることは出来るのか?」というよりシビアな問題が出てくるわけだ。

そして、さっきの続きで、売れないのは百も承知で、僕にとっていいゲームを作りたくて、2Dシューティングを作ったとする。
F2Pはやり方自体が変わるし、ダウンロードも話が複雑化するのでおいとくとして、コンソールスタイルで作るとせいぜい5万ぐらいが上限で、奇跡が起こって10万本の世界だろう。
そこでフルプライスで、まあ安めで5000円と設定して5万本としておこう。

新規IPで2Dシューティングで5万本って「お前ナメてるだろう、一桁減らせよ」といいたくなるが、まあそこはとてもとても甘く見ておこう。

5万本、5000円だから、粗利で2億5000万円。
パブリッシャーとデベロッパーをかねているとして取り分は1億円そこそこだ(機種・契約・さまざまな条件で変わるので、だいたいこのあたりと思っていただきたい)。
会社の仕事なのだから利益は出したい。5%でいいとして500万円…こんな数字出したらスタジオマネージャーが泡吹いて倒れそうだけど、まあしょうがない。
比較的小さなゲームで、エンジン周りは全部そろっていてスクラッチする必要がなかったとして、ゲームデザイナー1、レベルデザイナー1、プログラマ2~3、アーティスト6、サウンド1ぐらいはいないと、シューティングはムリだ。とすると10人ぐらいが最小サイズになり、めんどいので全員税込み30万円の給料として、間接費50%として、1人月60万。1チームの維持に600万円/月かかることになる。
広告宣伝費0としても、開発チームだけの経費を考えても16ヶ月以下でなければ、赤字になってしまう。

実はこの計算は日本で作るとすると、おっそろしくやばい。通常日本では実際の人件費は特に東京では給料の3倍程度で計算したほうがいいので、本当は1チーム1000万と見たほうがいい。複数ラインがあってうまくスタッフを回せれば若干余裕は出るが、1ラインなら、実際は使える開発期間は8ヶ月以下になる。いずれにしても開発期間は全部コミで1年以下でないと話にならないのは確かだ

これでわかると思うが…新規IPで2Dシューティングを今から作って世に放つときの赤字リスクを考えれば「よしあしの問題を超えて2Dシューティングは作れない(許可が出ない)のが当たり前」なのだ。
つまり「仮にいいゲームであろうと、一定以上の市場性がないものは作れない」

ここではダウンロードをあえて外したが、ダウンロードには結構2D/3Dシューティングが見られるのは、シューティングはニッチではあるが、反面(僕のように)とても熱狂的なファンがいるジャンルなので、ゲームそのものを小さくまとめてかつパッケージコストのかからないダウンロードで販売すると、それなりに黒字になりやすい強みがある。
これもまた「どこに、いくらで、どんなゲームを出せば、プレイしてくれるのか?」という市場の問題だ。


まとめれば「いいゲームを出せば売れる」にはさまざまな条件を付加する必要がある。
「何本から成功?」、「誰にとっていいゲーム」、「いくら使っていい?」…つまるところはマーケティングで、少なくとも作り手はそれを意識している必要がある。
そしてこれらを意識せずに、作るなんて問題外だ。

だから「いいゲームを作れば売れる」のような「いいゲームは誰にとってもいいゲーム」という間違った概念を平気で語る、大嘘つきなセリフは大嫌いなのだ。

このマーケティングの考え方を人に言うと「オリジナリティがなくなる」云々の話を言い出す人が必ずいるが、それはマーケティングの考え方を間違っている。
マーケットがないところに「マーケティングから考えれば、ここにはマーケットがあるはずだ」と新しいジャンルのゲームを作り出すことは出来るし、むしろ新しいジャンルであればあるほど、マーケティングをキチンと考えて作るべきなのだ。
あと、これはマーケティングの商品企画の初歩の初歩にもなってない概念レベルの話でしかないのは付記しておく
|| 19:26 | comments (0) | trackback (0) | ||

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