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山根ともおというヤツ
天外2ともイースとも絡む、山根ともおという男についてちょっと書きたい。

というのも、ずっと行方不明だったのをFacebookで見つけて──連絡を取るのがまだ少し怖くて、フレンドにはなったのだけどメッセージなどは送っていないのだけど、嬉しくて思わず、書いてしまうことにした。

見つけたのは山田真木で、進藤司がそれを伝えてくれたのにも何か縁のような物を感じる。本当にありがとう。

彼は疑いもない天才、超越的なドット屋+α、今で言うならアートディレクターだったと思う。
また反面、本当に社会人としてはダメなやつで…例えば、彼と初めて会ったときの話は 山根ともおとの出会い に書いたけれど、本当にそこに書いてあるとおりで、全く社会人の常識をわきまえていない…というか、気にしていないというか、まあ困った男だった。

しかも山根は社会人としてはまるで破綻しているムチャクチャなエピソードが山のようにある男だった(その一端はイースの話や、さまざまなところで書いたけど)。
例えば1989年にあったトマトのエピソードなんかもすごい。
イースを作っているとき、山根は並行して何かの仕事を請けていたらしいのだけど、それでトマトが必要になり、慌ててトマトを買ってきた。で、トマトを机の上の作業用ボードに置いて絵を描いた。
そこまではいい。
そして山根はそのまま北海道に来てイースを作って、数週間ぶりに部屋に帰り、ドアを開けると凄まじい何かが腐った匂い。しかも電気料金を払っていなくて電気がつかない
仕方ないからセブンイレブンでろうそくを買ってきて部屋に入ると…作業ボードの上には干からびたトマトのヘタだけがあり、周りにはドス黒い何かが流れた壮絶な跡。作業用ボードはもちろんパー。
山根は窓を開けて、作業ボードを外に投げ捨てた(ずっと壊れたベッドとともにあったらしい)。けれど、部屋からは腐ったトマトの匂いが取れなくて、北海道から帰りたくないといっていた。
この話を聞いたとき、あまりの面白さにのた打ち回って笑いながら ──
「金あんだから、電気ぐらい払えよ」
といったとき、山根が言ったせりふはコレ。
「銀行の野郎、俺が起きてるときに開いてやがらないんですよ、ゴー」
全く話にならないw

とはいっても、当時のゲーム業界は、ゲーム(やマイコン)に夢中になって学校中退したり、会社辞めたりしたヤツらの吹き溜まりみたいな場所で、本当に三度のメシよりゲームを作っているのが好きで、そしてそれしか出来なくて、ゲーム作れて、酒飲めればもう幸せな、どっか壊れちゃってる奴らだらけだった。
床で寝てるヤツは当たり前にいるわ、平気で月に450時間とか働くわ、今から考えれば猛烈なブラック企業って話なんだけど、だーれもそんなこと気にしていなかった。だってゲーム作るのが楽しくてしょうがなくて、人生ソレだったんだから。

だから──
山根の壊れっぷりはレベルの高い部類なのは確かだけど、同じレベルの壊れっぷりは、角川メディアオフィスの編集部、どっかの小さなゲームメーカー、それとも当時九段下にあったBeepの編集部などでいっぱい見てきたので、そう驚くことは…いや、さすがに山根は驚き呆れるレベルだったけど、めちゃめちゃ驚くことはなかった。
ちょっとした、オチャメな笑い話程度のものだ。

そして、人格破綻者だろうと社会不適格者だろうと、山根の仕事は疑いもなく凄かった。
ロマンシアが全部で背景64キャラ(チップ)+アニメ用64キャラで作られていると聞いたときは、マジ腰を抜かした。アニメーション用のチップが絶望的に足りなくて、NPCを背景にしたあげく、首から下が若者とジジイで共用になっていて、頭にジジイをつけるとひげになり、若者をつけるとV字の服の切れ込みになるなんて、そんなムチャクチャ普通は思いつかない。
苦心惨憺して雲作ってたら、それを見た木屋さんから「おー雲出来るじゃん、よーし天上界作るぞ」って言われてぶっ倒れそうになったってエピソードをしゃべりながら「木屋さんはね、グラフィックの事なんざ考えてないんですよ、ゴー!」とわめきちらしていたけれど、そんだけしかキャラないのに雲を入れようとする、そして入れられる方がどうかしてる。

ファルコムの1キャラ(チップ)は、当時のマシンが640x200の縦長のドットだったのに合わせて、16ドットx8ドットで1キャラになっている。
またロマンシアはグラフィック・プログラム・サウンド全部合わせて1ロード、64キロバイトのゲームで、ゲーム中には一度もアクセスがない、というのが一つの売りだったが、もちろんこんなことをすればしわ寄せはそこらじゅうに来るわけで…

ダームの塔で、マップの右に宝箱見えるとか、スクロール位置まで計算し尽くしてマップ作るのなんてどうかしてるし、プログラムは書いてもらったのはともかくとして、イースIIのオープニングのアニメをひとりで作るなんて尋常じゃない。
イース1・2で、進藤たちにマップやキャラのことをずーっと注文しながら、タイトル・オープニング・中間デモ・エンディングのコンテ全部描いて、原画全部描いて、データの半分ぐらいひとりで作って、しかも僕から聞いた圧縮率と転送速度をちゃんと計算してデータ作るなんてフツーじゃ出来ない(ただしギリギリ上限の数字ばっかり使ってるのはふざけんな、だったけどw)。
もちろんPCエンジン版のイースIIIのタイトル・オープニング・エンディングも山根だし(しかもスバラシイ出来だ。どうして1・2であのコンテを描けなかったのか、本当に嫉妬した)、まだブログには書いてないけど、天外2でも山根の案は山のように入っていて山根が骨格を作ったものも沢山ある。
桝田さんは、山根を評して「空白恐怖症だ」とか言ってたけど、まあ山根が埋める空間のスゴサってのはハンパじゃなかった。

本当に、山根は途方もないドット屋で、マップ屋で、アートディレクターで、ともかくアートに関してマルチに出来る男だった。
そして、そのあとも、山根はエメドラ少し手伝ってもらったり、飯君と組んで聖夜物語作ったり、桝田さんと組んでネクストキング作ったり、本当にいろいろやっていたのだけど…PSが発売され、ネクストキングが終わってから、彼が仕事をしているって話をだんだん聞かなくなっていた。

そしてある日…
僕が電撃PS2のプログラムを作るのにてんてこ舞いしているところに電話がかかってきた。
「岩崎さん、なんか仕事ありませんかねー?」
「あー俺、最近ヘルプしかしてないからなあ…で、自分ではプロジェクト持ってるわけじゃないし、ぱっと紹介出来るのはないなあ」
「いやー最近はテクスチャってヤツとポリゴンばっかりで、何か、こうゴーと燃える物がなくて…」
「それはわかるな。なんかドットって感じじゃないよね」
「そうなんすよ、まあわかりました」
「うん、なんかあったら、またー」
以来、山根からの連絡はなく、彼は消え、行方不明になった。

ずっと行方が気になっていたのだけど、携帯も知らなかったし、知り合い(古いのも新しいのも)も結局、誰にも分からなくて、行方不明のままだったのが、ふっとFacebookで見つかったわけだ。
これを見つけたのが山田真木で、山田真木はたまたま僕のブログを読んで、山根がどうなったのか気になって探したら、まさにFacebookに登録したところだった(僕も何度か探していたのだけど見つけられなかった)…なんてちょっと劇的なストーリーがついていたりするのだけど、そんなことはどうでもいい。

山根、いままで、何してたのか知らないけれど、今ってまたドット屋が必要な時代なんだよ。
もちろんゲーム屋やってんなら、そんなことはわかってるだろうけど、もし辞めてるなら戻ってこいよ。
今こそ君のノウハウがまた必要だし、君は君の持ってるノウハウを若い連中に教える義務がある、と僕は思ってるよ。
|| 20:27 | comments (7) | trackback (0) | ||

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コメント
私の山にゃんの強烈な思い出のひとつ。

ある日天外チームのドアを開けたら、山にゃんが丸坊主に。
なんかしくじったの?と聞いたら
「床屋に行っただけだゴー」
??
なんでも、風呂に入ってなくて、流石に頭を洗いたくなって行ったのが、床屋。

何か言う前に、頭をバリカンで刈られ、丸坊主になった頭を水で洗われて返されたそうな。

スゴイヤツだよね。
| 山田真木 | EMAIL | URL | 11/06/17 08:09 | 7j4z5pj6 |
>> Yahiro 様
第一にソーシャル/ブラウザ/携帯のゲームによって「2D絵」によるゲームが見直された、という点が大きいです。
実際のところゲームが3Dになったことで切り捨てられた市場があり、それが大きいという点が見直され、2Dもいいじゃないか! ということになりました。
またマシンの性能が上がっても「一定以上の2Dゲームのファン」が存在することが明白になったので、2Dドット絵が消えてなくなる、とはちょっと考えれない、というのが今のゲームの世界だと思います。

第二に2Dは解像度が上がっても、色数が増えてもどうハイライト入れるかとか、どうアニメーションを切るかといった、基本的なテクニックは変わりません。
また状況によっては256色、ひどいときにはソーシャルゲームなどでは16色すら使うこともあり、いかに少ない色数で見栄えのする絵を作るかといった技術が必要なくなるということは、まずないかな、ということです。

第三に、今はUIに凝らなければならない時代だ、ということです。特にゲームの世界ではscale formに代表される「フラッシュで2DでUIを作るのが当たり前」になりつつある時代です。そしてフラッシュはベクターアニメーションを使うと劇的に速度が低下し、正直、実ゲームでは負荷の点から使い物にならないので、ドット絵による技術が必須です。

つまり94年にPS1が3Dゲーム時代を切り開き、以降2Dは1枚絵を除いて(古臭いと)軽んじられる傾向があったけれど、この数年、見直されたということです。
そして、山根は1/2に関してはおよそ卓越した技術を持った男だったので、彼のノウハウは継承されるべきだろうと思っている、ということですね。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 11/06/16 10:19 | Eeem.i3Y |
はじめまして。趣味で時々ドット絵を打っているのですが、なぜ今頃になってまた当時のドット絵のノウハウが必要とされているのかとても気になります。

当時のデザイナーが持っていて現在のデザイナーが持っていない、あるいは習得し辛い技術。そうしたものがあるのであれば、それが何なのか伺ってみたいです。

私はハードウェアやプログラムの知識は皆無ですから聞いても理解できないかもしれません。ですがこのまま消えて行くだけだと思っていたドット絵の技術が、本当に今再び必要とされているのであればとても嬉しく思います。
| Yahiro | EMAIL | URL | 11/06/15 23:34 | CyrZPyc. |
>>はちはち様
ゲーム作りのノウハウなんて、最終的な部分はほとんど口伝みたいなもんで…人が全部なんですがねえ。

>>まつした様
彼は間違いなくイース2のOpで世界を変えた人間だと思うのですよ。あれがどれだけ衝撃的だったか、今の人には本当にわからないと思います。
マジ、毎日見てたもんなー

>>take様
移行できなかったというより、移行できるんだけど、好きになれない…みたいな感じでしたね。
今はもっと2Dと3Dが入り混じった世界になったのですが、当時は3Dバンザイで、もう2Dの仕事なんてなくなるんじゃね? みたいなノリでしたからね。
| 岩崎 | EMAIL | URL | 11/06/15 11:37 | Eeem.i3Y |
全てのドット職人がすんなり3Dに移行できたのか、という疑問があったのですが、やっぱり無理だったみたいですね。
一つの技術を極めた人なら新しい技術の習得も早かろうと思うんですが、感覚的に受け入れられなかったのでしょうか?
あるいはユーザーの感覚の変化が速すぎて、作り手がついてこられなかったのでは、なんて思ったりします。
いわゆる転換期に業界内で何があったのか、私は全く知らないので想像するだけですが・・・
| take | EMAIL | URL | 11/06/14 23:26 | BeRTUtVE |
山根氏が業界に残した影響はすさまじく、誰もがYS1の美麗マップチップを模し、
YS2の神OPを真似し、リリアという革新的な美少女キャラを越えようとしました。

今は超大作ゲームだけではなく、小さいデータで構築されたゲームも
もてはやされています、どちらでも、また山根氏の仕事を見たいですね。
| まつした | EMAIL | URL | 11/06/12 23:47 | 2azL7FVc |
某動画サイトに、昔のPC番組の日本ファルコムへのザナドゥの取材映像に、
若き日の「山根朝郎」名義の頃の山根氏の姿がありました。
ここで書かれてる仕事人モードの山根氏がああいう感じなんですかね。

>今ってまたドット屋が必要な時代なんだよ
>今こそ君のノウハウがまた必要だし、君は君の持ってるノウハウを若い連中に教える義務がある、と僕は思ってるよ。
ここのくだりは何か泣けます。
近年はロストテクノロジーと簡単に片付け、前の世代の技術やノウハウを
アーカイブや人材も含めて蔑ろにするような傾向があるのが残念ですね。
| はちはち | EMAIL | URL | 11/06/12 16:58 | 7Q0Cf0A. |
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